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魔法でよくね?  作者: 富士見の娘
魔法との出会い編
6/67

訪れた場所と現地の洗礼

―第6説 訪れた場所と現地の洗礼―


選也は地図と自分の周囲を代わる代わる注意深く見つめる。しかし、そう簡単に状況が把握できれば、迷子になんて端からなってないわけで………。


「くそっ! 」


当然、スマホも圏外だ。


周りには目印となる建物も、人もいない。あるのは、木、土、草、水。


(こんなもん頼りに出来るか!)


目的地どころか、今夜の宿にもたどり着けそうにない選也は、八つ当たりに地図を地面に投げ捨てた。


「山を目印にすればいいとか思ってた過去の俺死ね! 山の見分けが無理ゲーなことくらいちょっと考えれば直ぐ分かるだろうが! あと、頼りにしてた湖も、スゲー狭い気がするし! 湖の周りにあるっていう道も無いし! 」


選也は高速で地図を踏みつけながら、自分で自分にツッコミしまくる。


しかしまあ、こんなことをしてても解決はしないわけで。仕方ないので選也はぐしゃぐしゃになった地図を拾って、適当に山の方を目指すことにした。


が、


「ん? 」


歩き出した途端、何かに足をとられる。


そして、後方から何かの音がした。

瞬間、選也は悟る。


(あ、これヤバイやつや。)


後ろから迫ってきたのは、山にある罠としてお馴染みの「トゲつき丸太」だった。


「吹っ飛ばされるだけで、当たっても無傷………なんてことは無いよな………。」


勿論、ギャグみたいな展開だからってそんなわけはない。丸太は、当たれば重症確実な勢いで選也に迫る。選也はそれに青ざめ、直ぐに走り出した。


すると、また足が何かに引っ掛かる。


「え? 」


そして颯爽と登場、丸太2号。


「な、なんでぇ! 」


更に、ギリギリで丸太をかわして倒れ込んだ選也の手に何かが触れ、今度は上から音がする。


「これって………。」


そして、今度は丸太ではなく斧が降ってきた。


「は、はは………。」


選也は指のすぐ先に落ちた鋭い刃をみて逆に笑いが込み上げるほどに錯乱するが、それで終わるはずもなく、次はとばかりに頭上から大量の矢が降り注ぐ。


「もういやぁ! 」


そんなこんなで、選也はその後も、何か罠に恨まれることでもしたのか? というレベルで幾多の罠にかかりまくり、その中を涙目で全力疾走することになった。


―30分後―


やっと罠の連鎖は途切れる。

選也は、周囲に異変が起こっていないことを入念に確認し、その場に崩れ落ちた。


「もう、ないよな。」


彼が振り返った先には、まだ揺れているトゲつき丸太、地面に刺さった幾つもの斧や矢、剣、さらに土にぽっかりと開いた、底に竹槍が設置されている穴等々がある。


選也は暫く地面に座り込んだまま、ぼんやりとその様子を眺めていたが、やっと気がついたように言葉を発する。


「てっ、よく見たら殺意高すぎだろ! 」


それから、ようやく意識が安定して、息が整ってきた選也は腹立たしげに、こう続けて口走る。


「誰がこんなの仕掛けたんだよ! 危ねーじゃねーか! 会ったら全力で抗議してやる! 」


すると瞬間、背負っていたリュックが炎上した。


「うわっ!あつっ! 」


選也は慌てて鞄を振り回して、火を消す。


そして気がつくと、いつの間にか目の前に、白い髭を生やした大男が立っていた。

大男は選也があっけにとられているうちに、左手に持ったランタンの火に魔方陣を浮かばせ、選也に火炎放射を向ける。


選也は咄嗟に覚えたての防御魔法を展開した。どうやら、電車内で試験勉強よりも真面目に詠唱練習に取り組んだのは正解だったようだ。


「えええ!?なにこれ、なにこれ! まさか管理者の方!? さっきのは冗談です! 抗議とかしませんから! 生意気言って済みませんでした! 」


選也はあまりの状況に言動が意味不明になる。


白髭の男はそんな選也の命乞いには耳を貸さず、それどころか、彼の使う魔法を見て、顔つきを更に険しいものにした。


そして、男の口から漏れる何かの詠唱。


威力を増した灼熱の柱は、選也の防御魔法を木っ端微塵に砕く。


「やばっ。」


選也は炎から逃げるように走り出した。


大男はそれを見ると、火炎放射をやめて、ランタンにもう一度魔方陣を浮かばせ、そこから選也が逃げていく方向とは逆向きに炎を噴射した。噴射された炎は、男の身体を凄まじい早さで選也の方に吹き飛ばす。


「ひっ! 」


選也は防御陣を張ったが、それごと男の巨体に突き飛ばされた。


突き飛ばされた選也は、勢いよく木に激突する。男は短い悲鳴を漏らした選也の首を木に押し付けるように掴むと、初めて口を開いた。


「小僧、お前は《都市の人間》だな、ここをどうやって嗅ぎ付けた。」


選也は自分の首を締める男の手を、両手で掴み返し、もがきながら、


「………なに、言って………? 」


と絶え絶えに言葉を繋ぐ。

男はそれを聞くと失望した様に、


「答える気はないか。」


と言って、手に力を込めた。


―つづく―

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