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魔法でよくね?  作者: 富士見の娘
追試奪還戦編
16/54

和解策の提案と強制参加

―第16説 和解策の提案と強制参加―


追試中止の宣告を受けた、言い争いの翌朝、生徒たちはまた、昨日と同じように1つの教室に集合していた。ただ一点、違うのは生徒達が教壇を一様に見つめ、そこに生徒会長の智美が立っていること。


壇上の智美は、落ち着いたようすで、両者の言い分を、適度に相槌を入れながら、真剣な様子で聞いた。


すると、流石と言うべきか、その間は、発言していない方も静かで、一切の口論が起こらないのだ。


そのお陰で、両者の説明は、とてもスムーズに終わった。


両者の主張をしっかりと聞き終えると、智美はゆっくりと間を置いて、口を開く。


「あなたたちは何も間違ったことは言ってないよ。大丈夫。」


言われた生徒たちは、それに納得するように頷いた。どちらの派閥も、それを自分達への言葉と受け取ったからだろう。


智美はなれた様子で、集まった全員を見渡して、続けた。


「でも、こうして言い争うのは良くないし、どっちか、優しい方が折れなくちゃ駄目なのは、皆分かってるよね。 」


その一言で、さっきまで睨み合っていた生徒たちが、途端に下を向き、そのまま黙ってしまった。


それは、会長の言葉の意味を理解しながらも、自分一人が折れたところで、どうにもならない、と全員が思っているからかもしれない。


それを見た智美は、静かに壇上から降りて、二つのグループの中央に立つ。


「そうだよね、それが難しいことくらい、私も分かってる。私だって、皆と同じ立場だったら、きっと出来ないし。」


それから、こう提案した。


「じゃあ、こうしない? 皆でゲームをするの、それで、負けた方が、勝った方のために、優しく折れてあげるの。どうかな? 」


反論する人はだれもいない。

ただ、秀真はそこに、小学生のように、大きな声を出しながら、


「あ、はいはい、しつもーん! 」


と手を上げて、発言した。


「なんのゲームすんの? 据え置き? 携帯? 」


智美はいきなり大声が響いたのにビックリしながらも、秀真の疑問に答える。


「えーと、そういうのじゃなくて、前に生徒会と写真部でやった、宝探しゲームをしようかなって思ってるんだけど。」


「宝探しゲーム? 」


智美の言葉に疑問を持った、役員組の筆頭の女生徒は、すかさず聞いた。


智美は彼女の質問に頷くと、黒板を使って説明を始める。


それを簡単にまとめるとこんな感じ。


《宝探しゲームとは》

実際に宝を探すのではなく、写真で行う、推理ゲームみたいなもの。

まず、ゲームマスターが決められた範囲内で何枚か写真撮影し用意する。

プレーヤーはその写真が撮られた場所を探して、同じような写真を撮る。

写真を全て揃えたら、出発地点に戻り、それが早い方の勝ち。


ルールは3つ

・カメラはチームでいくつ持ってもいいが、最後は必ず1つのカメラに全ての写真を収めること。

・連絡を取り合うのは禁止。

・天気や時間でしか見れないものは禁止。


「後、今回は、ゲームマスターは、二組の内の、参加者以外で、写真は半分ずつ撮ることにしようね。えーと、この説明で大丈夫かな? 」


説明を終えた智美は、女生徒の方を振り返った。聞かれた女生徒は、すぐに頷く。


「はい、分かりました。じゃあ、この二組で、同じ人数ずつのチームを作ればいいんですよね。」


「そうだね。」


智美は、自分の考えが無事に伝わったことに安心したのか、小さく息を吐き、選也に目配せをした。


選也はそれに無言で頷いて、目立たない程度に頭を下げる。


二人がそんな静かなやり取りをする一方で、質問した女生徒は、早速、目線を智美から他の生徒達に移し、


「私たちは6人だから、参加は4人ね。そっちも、4人選んでおいて。後、範囲は市内でいいよね? 」


と言って進行役にまわった。


「おっけー。」


女生徒の言葉には何故か秀真が答える。

そして、更に謎な事に、振り返った秀真は選也の肩を掴んでこう続けた。


「よし、選也、出よう! 」


「はぁ!? 」


これには流石の選也も、露骨に嫌な顔をせずにはいられない。それもそのはず、


「俺、インドア派だし、これには絶対に向いてないって! 」


選也は基本的に休日は家に引きこもっていて、市内と言われても、分からない部分が多いのだ。

しかし、選也の必死の主張にも、秀真は笑顔を崩さない。


「大丈夫大丈夫、俺はバリバリのアウトドア派だから。」


「知ってるよ! でも、俺は違うから! お前だけで出ればいいじゃん! 」


選也は秀真の手を振り払った。

秀真は振り払われた直後、目をしばたかせていたが、すぐにイタズラっぽい笑みを浮かべ直して言う。


「えー、そんな冷たいこと言うなよー。俺、寂しいと死んじゃうよ? 」


「大丈夫だよ、そんなんじゃ、ウサギでも死なないから! 」


選也はすり寄ってくる秀真から顔を背けて、耳を塞いだ。だが、なにかの呪文のように、その声は指の隙間を縫って入り込んでくる。


「選也ー、俺の大親友の選也ー、一緒に出ようよー、なぁ、なぁ。」


選也はたまらず叫んだ。


「あー! もう分かったよ! その代わり、他に出たい奴が居なかったらな! 」


「まじで? いえーい!」


それを聞いた秀真は子供のように跳ねて喜ぶ。選也は、そんな秀真に行動にため息を漏らしつつも、同時にある程度安心もしていた。


(まぁ、今回は赤点組が意地でも出たがるだろうし、俺が出ることにはならないだろ。)


しかし、その10分後。


「じゃあ、参加者は、役員チームが西野、沢村、竹中、多田で、赤点チームが、山崎、池田、蒼生、狭間でいい? 」


(どうしてこうなったーーー!! )


やはりと言うべきか、狭間選也は参加者に決定した。


―つづく―

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