3話 遭遇
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毎日更新頑張って参ります。今回は予約投稿機能を使ってみましたが…何時ぐらいの更新がいいものか悩みますね。
タルトのおかわりを頼むと夕食が食べられなくなるという理由でマリーナに却下されてしまった…。
食べられるもの…大丈夫だもの…と思ったが夕食後にもデザートとして出してもらう事にして我慢した。
「ヒナシアのお花…三女神さまたちにも見てもらいたいの。少しだけなら摘んでもいいかしら?」
「そうですわね。庭師に言って少し花束にしてもらいましょう。きっと三女神様方もお喜びになります」
わたしが生まれてからお父様はお城の敷地内に聖堂を建ててくださったの。
毎日そこでお祈りをして三女神様にいろいろなお話をすることがわたしのお仕事なのですって。
本来あまり世に干渉してはならないとの事で降臨する事はないけれど三女神様のお声はわたしにだけ聞こえるようで、聖堂内でなら三女神様たちにわたしの声が届くし三女神様たちからのお言葉も頂ける。
でもあまり長時間はわたしに対してでもお話出来ないらしく、三女神様たちからのお言葉は少ない。
わたしが一方的に喋っているようなものだがそれでも三女神様たちは喜んでくださるのでいいのだろう。
マリーナも敬虔な信者であり、わたしと一緒に毎日の礼拝をかかさない。
そしてもう一人。
わたしとマリーナの後ろに付き従う一人の青年。
わたしの専属騎士であるガウェイン・フォン・メイデン。
赤銅色の髪に琥珀色の瞳。精悍な顔つきでかなりの美青年だ。
彼は自分の足でいろんなところへ移動が増えたわたしに専属騎士をとお父様にわたしが三歳の時に選ばれそれからずっと仕えてくれている。
元は近衛騎士団所属であり、侯爵家の次男と聞いている。剣の腕前もたいしたものでお父様の信頼厚い有能な騎士だ。
ガウェインもマリーナと同じく敬虔な信者であり、専属騎士になってからこの二年間毎日の礼拝を共にしている。
専属騎士として選ばれる前から聖堂には通っていたらしく、わたしの誕生によって職場に聖堂が出来たことをかなり喜んだらしい。
それまでは毎日城下町の教会に通うのは職務上厳しく、部屋にある簡易祭壇にて毎朝お祈りをしていたというのだからまるで神官のような騎士だと思う。
ガウェインはとても真面目で職務中に無駄口はきかない。
特にいまのような移動中は王宮内と言えども警戒を怠ることはなく、わたしとマリーナが会話していてもその中に入ってくることはない。
わたしが会話をふれば応えてはくれるが自分から会話に入ることはしない。
しかし真面目ではあるが笑顔の似合う絵に描いたような騎士だ。
女性に優しく、騎士の中でもとても人気があると侍女たちの噂で聞いた。
女性人気がとても高いがいまだ結婚はしておらず、わたしの専属騎士である以上あまり昇進という点では今後がないのだが…ガウェイン曰くわたしの専属騎士の座は騎士ならば誰もが憧れる地位で大変名誉なことなので近衛騎士団の団長になるよりも価値がある…らしい。
これはあくまでも敬虔な信者であるガウェインの言うことなので…どこまで本当のことかわからないところだ。
庭に出ると暖かな陽射しがポカポカでなんとも安らぐ…。
お昼寝を庭でしたいと言ったことがあるがそれはとんでもないとマリーナとガウェイン二人から叱られた。
王女という立場的にも護衛視点からもありえないそうだ。
とても気持ちよさそうなので残念…。
「見て!マリーナ!ガウェイン!本当だわ!ヒナシアのお花がとってもきれい!」
ヒナシアは純白の花で、見た目で言うと前世でいうところの百合に似ている。
その美しさから女神の花とも呼ばれていて教会の周りには必ず植えられている花だ。
「ええ、本当に。今年は特に美しく咲いていますね」
「女神の慶事やもしれませんね。喜ばしい事です」
マリーナに続き、今回は名指しで話題をふったのでガウェインも同意を返してくれた。
ヒナシアが美しく咲くのはとても縁起がいい事とされていて豊作を示すとも言われている。
その土地のヒナシアが美しいとそこで収穫される農作物の出来も良いことが多いそうだ。
そこらへんも女神の花と呼ばれる一端となっているのかもしれない。
「庭師はどこかしら?花束を用意してもらったら聖堂にいきま……あら…?」
庭師を探してきょろきょろと周りを見渡していたわたしの目に飛び込んできたのはわたしたちのいる場所と反対側からやってくる女性だった。
高貴そうな黒髪の女性とその侍女だろうか?二人の女性が付き従っている。
わたしのいるこの庭は王城の奥、王族が住まう王宮内。
その為今までお父様・お母様・クロイツお兄様以外には会ったことがない。
疑問に思って首をかしげるとガウェインが前に出てわたしを背中に隠した。
「そこより先にお進みにならぬよう。ここは王宮です立ち入りは禁止されています」
冷たい声…ガウェインがこのような声を出すのははじめてだ。
心細くなりマリーナの袖を掴むと大丈夫だというようにマリーナが手を握り返してくれた。
「無礼者!一介の騎士風情がその口の聞き方はなんです!」
黒髪の女性の後ろに付き従う侍女らしき者のうち一人が目を吊り上げ声を荒げる。
一介の騎士風情…?騎士ではあるがガウェインは侯爵家の人間。
そのガウェインよりも位が高い人…という事なのだろうか?
「無礼なのはそちらでしょう。王族以外の立ち入りは禁止されている王宮に足を踏み入れているのですから。誰の許可を得て王宮に足を踏み入れているのですか」
マリーナまで固い声を出して応戦しだすのでこれは異常事態だとさすがのわたしにもわかる。
わたしの知らぬ王族の誰かなのかと思ったがどうやらそうではないようだ。
「わたくしが王宮にてヒナシアの花がとても美しく咲いたと聞いたのでそれは是非見たいとわがままを言ってしまったのよ。庭で花を見る程度ならば陛下も許してくださると思って…」
それまで沈黙していた黒髪の女性…とても綺麗な…鈴のような声の持ち主だった。
艶やかな黒髪に榛色の瞳。
清楚な美しさを持つ可憐な人。
いったい誰だろう…とガウェインの背中から覗いていると黒髪の女性と目があった。
ぞわり―――
なぜだろう。あの女性は笑顔なのに。わたしを優しく見つめているのに。
肌がぞわぞわと落ち着かない。
「あら…そちらは…。もしや…ルナマリア様?」
ガウェインが背中から顔を覗かせていたわたしを改めて背中に隠した。
マリーナもわたしの手を引き、後ろに下がる。
「そのように警戒なさらずとも…わたくしはなにもいたしませんわ」
困ったような優しい声。
どうしてこんなに二人は警戒しているのだろう。
このざわざわと落ち着かない気持ちになるのはなぜだろう。
「はじめましてルナマリア様。わたくしはアメリア・フォン・ベルトナー」
アメリア…?
アメリアってたしか……
「恐れ多くも陛下の側室として離宮に住まわせて頂いております。第一王子ナイゼル様、第一王女イザベル様の母でございます。どうぞよろしくお願いいたしますね」
白く儚い美しさを持つアリア草のような可憐な人。
彼女はそうにっこりと微笑んだ。
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ご覧いただきありがとうございました。
両親と兄以外の初遭遇は側室アメリア。
アリア草はかすみ草のイメージです。
儚げで可憐な美しい女性アメリア。二人の子を持つとは思えない女性です。
この遭遇がルナマリアにどのような影響をもたらすのか…。