~世界でただ一つの魔法装身具おつくり致します。~ (8)
「ブタになれ!この下種野郎が!!!!!」
なお、ダーリは言葉遣いも最悪に悪い。そして改善の余地もない。
雷鳴が轟く音のような地響きと、唸り声のような疾風と、夜の闇を溶かし込んだかのような黒い髪の毛がぞぞっと杖の先端から侵入者に向けて解き放たれた。
「いぎっ!?」
「下がってろ!」
「!」
ネイサンは凍り付いたバカな新米魔法使いを左手で突き飛ばすと、右手で腰に佩いていた白銀の剣を抜き構えた。
「っ」
ダーリはとっさに顔半分を杖を持たない片手で覆い、顔を隠すように頭を右斜め下に傾けた。
流星がきらめくような刀身はまばゆく、辺り一面、工房全体を真昼間よりもなお明るく照らし出した。
「あがあああああ、め、めがぁあああああ!」
愚か者が悲鳴を上げる。
「バカ、お前動物的反射神経すらないのか!このボンボン!」
閃光の中にいてもネイサンだけは怯まない。
それもそのはずだ。
「なんだ。ネイサン・バールか」
あっけなく闇が退き、光も鎮まる。
夜か朝かわからぬ空間は凪のように静まり返り、窓から現実の光が差し込んだ。ほんのりと明るく色落ちた工房を見渡して、ネイサンはあちこち飛び放題の卵色の髪の毛を片手でぼりぼり掻いた。
「ひさしぶり。ダーリ・アシャ」
「・・・・・・・・・・・帰れ」
や、と気安く片手を上げた旧知の男に、ダーリは舌打ちのちにもう一度呪いの杖を構えた。
本日の営業はここまでと致します。
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