表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/26

~世界でただ一つの魔法装身具おつくり致します。~ (5)

+*+*+*+*+*+


言い忘れたことであるので、付け加えねばならない。


偏屈変人無口かつ、コミュニケーションに著しい障害を持つ魔法装身具職人のダーリには、一度でも取引したものならば耳にしたことがある「ある噂」が真実として存在している。


それは―――。


+*+*+*+*+*



この日、ダーリは通りの反対側の庭に面する小窓から自分の布団を外に流しかけ、適当にそこいらにある箒でバシバシ叩いていた。


今日は仕事が休みの日、にしている。


最近は変な客が来ず、創りたい装身具に集中できるので気分がいい。


「ふん~、ふ、ふ~ん」


鼻歌交じりにバシバシと布団を叩き、叩きすぎて。


「あ、綿が出た」


中からぽやっとした白い塊がでろりと零れ落ちる。


最後の町の最後の砦でダーリが工房を開いてから、実に1年と半年が経とうとしている。商売の方も徐々に軌道に乗り始め、今ではナキウサギの皮で作った分厚い顧客手帳10冊分の顧客がダーリの商品を気が向いたときに買いに来る。


なお、ダーリは商品の遠地配送は一切行っていない。実際に店舗に来て、実際に手に取り、実際にその人物に気に入り、道具の方も持ち主を気に入らない限り絶対にどんなに壊れても装身具を売らないようにしているのだ。


「ふ。う~ん」


綿を適当に布団の中に詰め込みながら、真っ青ですけるように美しい空を見上げた。


金の太陽がダーリの丁度頭上にある。そろそろお昼だ。


明るく照らす光がダーリの金色の髪の毛をさらにより一層輝かせた。長いまつ毛の下でぼんやりと眠たげにしていた明るい緑色の瞳がきらめく。


ほっそりとした顎の輪郭に金糸のような髪の毛が絡まり、ダーリはうっとおし気に手でつかんでまとめあげた。


「くくるもの・・・くくるもの」


甘い吐息と共に耳に心地よいしっとりとした声音が空気を震わせる。


ダーリは周囲を見渡し、軽く肩繭眉を上げる。


「あ」


床に落ちていた皮紐を見つけたのだ。


節くれだらけの暗色の濃い床板の上にゴミ同然に落ちていた、言わずもがな「ゴミの紐」をダーリはきゃしゃな指先でそっと摘み上げ、軽く付着した埃を吹いて吹き飛ばすと。


「これでいっか」


問題なし。


非常にあっさりとした様相で金の髪の束を適当にくくり上げた。


最高の魔法装身具職人とも称されるダーリの日常的側面は、「テキトー」であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ