~世界でただ一つの魔法装身具おつくり致します。~ (21)
死を悼むのは、かけがえのない二度と還らぬ「個」とという特殊性を惜しむからだ。
惜しむゆえに悲しいからだ。
悲しいと思うのは置き去りにされたと思うから。
二度と会えないから寂しいのだ。
「さびしいよ。リィナ」
黒髪と閃光のようにあでやかな赤い瞳をした、かつての親友であり、今もなお忘れえぬ恩人であるリィナ・ネイタムの影を追いかけるようにダーリは虚空に視線を彷徨わせた。
死したものを蘇らせることはできない。
蘇らせることは呪いだ。呪いは冒涜であり、生と死の均衡を崩してしまう。
どのような命にも定められた寿命があり、その寿命の迸る生き方が「生」そのものなのだ。
「生」があるからこそ「死」もまたあり、「死」というサイクルが循環しているからこそ世界は続いていく。
そのおかげ逢いまみえる新しい命、存在との出会いがある。
だからこそ「世界でたった1つ」の贈り物に出逢うことができるのだ。
「できた・・・」
ダーリは暗がりで仄かに蛍火のように浮かび上がる幻影を見た。
薄い水色の燐光が暗闇を優しく照らしている。
複雑な文様のブレスレットに編まれたそれは、どこにいても持ち主を「惑わぬ」ように救ってくれる希望の光だ。
夜鉱石をあしらった呪いの力を中和し、少しずつほどいていく力をもった世界でたった一つ。
「エルジャの腕輪だ」
宵闇よりなお濃く、漆黒よりは明るく。
持ち主の行く先の道しるべとなるように。
ダーリは完成したばかりの腕輪をそっと机の上に置いた。




