~世界でただ一つの魔法装身具おつくり致します。~ (20)
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人は死ぬ―――。
遅かれ早かれ、それが自然の摂理だ。
生きているものは死ぬ―――。
それもまた、自然の変えることの出来ぬ掟だ。
通り過ぎてしまった命を、ダーリはこれまで幾度となく目の前で見てきた。死と隣り合わせの世界はなにも「この場所」に限定されたことではない。
我々は実はどこだって常に死と隣り合って生きている。
「・・・・・・」
丁寧に指を動かしながら、ダーリは指に絡まる長い糸を引き締めていった。
ひと目ひと目心を込めて、思いを込めて、願いを込めて糸を編んでいく。
複雑な文様が綴り文字のように編み込まれた魔力を込めた魔法装身具である。
指で文様にそっと触れると、砂金のような燐光がきらきらと空中に溶けて消えていく。追加効果にしては現象がうるさすぎるので、ダーリは口の中で言葉をつぶやき指輪に術を込めた。
ダーリの黄金の髪の毛がわずかに舞い上がり、風もないのに前髪がそよいでいる。
幻想的な妖精の羽根色の瞳とおなじ泡のような丸い光の粒がいくつもいくつも彼女の体全体を包み込み、浮かんではまた消えていく。
金糸の光の螺旋がダーリの私室全体に広がり、ほどなくして終息した。
光がすべて消えた時、ダーリの手元のつくりかけの魔法装身具から光は消え、変わって机の上に置かれていたランプの仄かな橙の光が彼女の指先を照らして影を作っていた。
「もう少しだ―――」
文様のくぼみに触れ、編み込みの確認をしながらダーリは呟いた。
リィナの大切な命の続き―――。エルジャ・ネイタムの魔法装身具をダーリは編んでいた。




