~世界でただ一つの魔法装身具おつくり致します。~ (17)
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客、として認められたもののいったいどうすればいいのか。
ネイサンが戻ってこぬまま、商談用の場所だと案内されたのは明らかにダーリの私室だった。なんでも、今日はこの場所が一番うってつけなのだという説明をされても、エルジャは曖昧にうなずくことしかできなかった。
ふ、と床に視線をやれば、何か書きつけられたまま転がった羊皮紙や、丸められてその場に放置された紙屑だったり、読みかけの本や転がったペン。正体のわからない何かの草や、金貨、真珠の粒、怪しく光るキノコや蝋燭のかけら。
下着―――。
「したっ―――」
目をひんむいてエルジャは思わず声を発した。
エルジャの丁度足元、視界に入るいい位置に白いレースの柔らかそうな下着が落ちている。
「舌? 舌でもかんだか?」
エルジャを部屋に一つしかない椅子に座らせて、ダーリは窓際に置かれていた物置同然の棚のなかを漁りながら声をかけた。探し物をしているのだが、一向に見つからないのだ。
「ない。どこにいった?」
「あ、あ、あ、あのぉ」
こうは見えてもエルジャ。腐っても「おのこ」である。腰に巻いた濃紺の布地の内の、もう一人の自分が危うく首をもたげそうだ。
理性で必死に生死をかけようとするものの、動物的本能に人は抗えない。
泡を食いながら片手で半眼を隠すものの、隙間からやはりまじまじとそれを確認してしまう。
月のように滑らかな光沢を放つ、繊細なレースの「ソレ」がエルジャを呼んでいるようだった。




