三法師をいじめる奴は許さんぞ!
シリーズ三作目です。
秀吉ファンの方ごめんなさい。フィクションです。ただの妄想です。
信忠の八つ当たりです。
もし、これ以上増えるようなら、もしかすると三作含めて連載の形に変えるかもしれません。話が特に繋がってるわけではないんですけど。その時はよろしくお願いします。
庭で棒切れ振り回して素振りもどきをしていると、
「いやぁ~、さすが奇妙丸様。素晴らしい太刀筋ですなぁ!」
大声でおべっかを言うやつが来た。
素晴らしい太刀筋って何だよ。
ぐるぐる振り回してただけだっつの。
お前は《円月殺法》知ってんのか。
まさかお前も転生者か!?
揉み手しながら寄ってくるのは猿!
そう、お前は猿で充分だ!
いや、猿に悪いか。
ええい、お前にゃ名前なんて要らねえ!
お前だけは許さんぞ~。
あんなに仲良くしてたのに。
結局駄目だったけど、お前の憧れの市叔母ちゃんとの仲だって、取り持ってやろうと頑張ってたんだぞ。
それなのに、それなのに。
てめえ、よくも俺の可愛い可愛い三法師を利用してくれたな、こら!
まだ小さいからって、体よく祭り上げてよ。
な~にが、織田に忠誠だよ!
家督だけやりゃ良いってもんじゃねえよ。
織田に忠義ってんなら小さくても三法師だって織田だっての。
田中でも伊藤でも鈴木でもないわ~!
ちゃっかり天下自分のもんにして関白とかなっちゃってよ。
何で三法師がてめえに頭下げなきゃならねえんだよ。
天下も織田のもんだったのによ。
ま、まあ正確に言うと、まだ全部じゃなかったけどさ。
お前は家臣なんだから、他も奪い取って、「ささっ、三法師様のために取ってきましたぞ~。」って三法師に献上してりゃいいんだよ。
戦国時代だから下克上OK!なんて言い訳聞かねえぞ!
俺は今や平成っ子だからな。
だいたいあの意固地な毛利とあんなに早く和議ができたのはおかしいだろうが。
お前だけ、うまいこと明智の使者を捕まえられたのも怪しいしな。
あの危急の中、「中国大返し」できたのなんて、普通あり得ないだろうが。
本当は明智に結託したふりして、急に梯子外したんじゃねえだろうな。
だってあの賢い明智にしてはお粗末すぎだぜ。
そのお粗末なのにやられた俺が言うのもなんだけどさ。
くそ~、俺が生きてさえいれば、三法師が悠々天下人だったのに。
何で自刃なんかしたんだ、あの時の俺よ!
たとえ明智勢だらけの京からだって、今回の俺なら逃げるぞ。
先頭切って逃げるぞ。
五十メートル走クラスで一番だからな。
速いんだよ、俺は。
あの時、なんであんなに意地張っちまったんだよ。
ふぅ~。
「奇妙丸様、一つお手合わせしましょう。」
おおう、望むところだ、猿よ。
将来の三法師の恨み、先払いしてやるわ!
「でや~!」
パン、パン、パン、ドゴッ!
「ああ~、奇妙丸様~、大丈夫ですかぁ!」
ふ、不覚......。
ふ、ふんっ。
全然痛くなんかないんだからね!!