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インタートライバル・リンケージ  作者: 西亥はるま
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日常2



「この先の村が合流地点だ」


レラルドが指差した方角にはエレール村へと続く看板がある。

過去にも見回りはしたことがあるので、仲間たちも知っている村だ。

遠目で見ても簡素さが目に付く村で、低い木製の柵なため家の屋根が見えていたはずだ。

最近獣に襲われたという報告もあったため、警護もかねてエレールでは一泊することになっている。

ここまで大した戦闘はしていないが行く先々の村は住人が避難、もしくはなくなっていたため休めということを考えると自然と顔がほころぶ。いくら兵士といえども亡骸と一緒に夜を迎えるのは避けるべきだろう。


ただし、村が無事ならだが。


しばらく進むと何かが動いているのが目に入る。


目を凝らして見ると、馬のいない馬車の周りに白い狼が数匹囲むようにうろついている。


「馬車が襲われているぞ、救助に向かう!」


レラルドの号令と共に兵士たちは走り出す。


馬車を襲っているのはウェアウルフ。

アーテクトと魔城までを生活圏とする野生の獣たちだ。アーテクト周辺に生息するものはレベルも低く個体数も少ない、エレールの周辺でも本来であればまだ兵士にとって脅威とはならないはずとレラルドは考える。

この考えは間違ってはいない。馬車がアーテクトからエレールに向かっていたからだ。馬車の向きを見る限りエレール周辺で倒しきれなかったウェアウルフがこの場所まで追いかけてきたと考えるのが自然だからだ。通常であれば3匹を同時に相手にするようなことはしないが、アーテクト周辺のウェアウルフであれば苦戦することは無いだろう。


馬車の屋根には人が2人登っており、身を竦めているのが伺える。顔を見ることはできないが1人は大人の男性、もう1人は子供のように見えるが男がかぶさるように隠しているためおそらくという言葉がつく。


馬車の周囲を3匹のウェアウルフが取り囲み時折飛びかかるそぶりを見せる。人が乗る馬車より荷物を運ぶ荷馬車のためその背は高くかろうじて鋭い爪は側面を引っ掻く程度に終わる。しかしながら馬車を引いていた馬はすでに倒れており、息はあるようだが自力で逃げることは出来そうもない。


「ファイアボール」


6人の兵士のうち最後尾にいたデジットがそう唱えると突き出した手の先から火の玉が飛ぶ。

大体の狙いはつけたがウルフに充てるのが目的ではない、まずやるべきは注意を引くだからだ。

勢いよく飛んだ火球はウェアウルフがいた場所に突き刺さると辺りに火をまき散らし消滅する。着弾の前ウェアウルフは飛びのいたためダメージは無い。


レラルドはこの開戦の合図をきっかけにウルフたちがこちらに襲い掛かってくると思っていたのだが、その思惑はすぐに外れたことに気づく。

ウルフたちは遠巻きに距離を保つとこちらを観察するように眺めるにとどまる。

獲物を仕留める直前で邪魔をされたはずにも関わらず激昂する事なく落ち着いたら雰囲気にレラルドは緊張を高める。


「レラルド隊長、追いますか?」


「そうだな、村の方へ行く可能性もある、このまま蹴ちらすぞ!」


素早く距離を詰めると1匹のウェアウルフに斬りつけるが空を切る。


「クソッ、手強いぞ」


続けて2度3度とフェイントを交えながら振るうが当たらない。


もとより俊敏性の高いウェアウルフに攻撃を当てるのは容易では無いが、人間と比べれば知性が低い動物である。しかしフェイントを織り交ぜた攻撃もことごとくかわさてしまう。

なにより不気味なのは攻撃をかわし続けるウェアウルフの後方でこちらをずっと見つめているひと回り大きなウェアウルフだ。ただそこに居るだけでプレッシャーを感じる。


恐らくリーダーであるウェアウルフが戦闘に加わると無事ではすまないのは間違い無い。あせりを感じ始めた頃、不意にウェアウルフリーダーが背を向けて歩き去る。

堂々とした足どりはあきらめたというよりも興味をなくしたようだ。


「追撃を行なうべきか」


ウルフたちの去った先には暗雲立ち込めるピリネア山がある。

追撃を指示しようとしたレラルドの言葉をさえぎって狩人のゾイドが口をはさむ。


「ちょっと待ってくれ。俺たちだけで追うのは反対だ、さっきの一番後ろにいたウルフは俺たちより強い。全滅するのがオチだ、幸い村の方向とは逸れてる村の様子を見にいくのが先だろう」


相手の戦力分析に優れる狩人の発言は場合によっては隊長よりも重い。

狩人のスキルの一つ『観察眼』は他の職業より獲物の情報を多く得ることが出来る、相手の強さを色によって指し示す。

自分より弱い物には青く、同格の物には黄色く、そして格上には赤く発光して警告する。

これだけだと通常の観察と同じに聞こえるが、この場合の自分よりとはレラルド達PTメンバーと比べてということだ。

狩をする上では必須といってもいいスキルだ。


そしてあのウェアウルフリーダーは赤く発光をしていた。

周囲のウェアウルフが青色であることを考えると、ウェアウルフリーダーはとびぬけた強さといえる。

何よりこんな村の近くに自分たち以上の獣が出るということは脅威的だ。村に居るであろう兵士だけでは到底頼りない。

尚更放置は出来ないと考えるが自分達の役割を果たせない可能性のほうが高過ぎるのだ。


「…わかった。では当初の任務を優先させよう。帰還した際に先ほどの獣の件は報告を上げることとする」


レラルドは仲間に指示をだすと被害を受けた確認する、戦闘の隙に馬は首を抉り取られ死んでいるが御者は怪我こそあるものの命に別状は無いようだ。

馬に隠れるよう密着して震えている。


「大丈夫か?」


御者から返事はない、代わりに屋根の上から声がかかる。


「助けていただいてありがとうございました。我々3人のほかに護衛の兵士様が2人おりましたが途中でやられてしまったようです。私たちを逃がすべく闘って下さったのですが…」


子供を抱えた商人が答える。


「もう降りて大丈夫だ、そこの村まで護衛しよう」



村につき村人達が無事に暮らしていることを確認しレラルドは安堵の息を吐く。

アーテクトを出てから立ち寄った村はその殆どがほぼ壊滅状態で、生き残った村人もいたがあの人数では村の復興はままならないため、都市に移り住むか別の村に移住するしか無いことだろう。


命の危険を考えれば都市へ移りたいところだが、元々小さな村に住んでいるもの達が都市税が払えるはずも無い。実際には奴隷となって売られるか壁外にある貧民街に住むかの2択である。


都市に行くには人同士の問題があり、他の村に行くには獣などの問題がある。


「村長、この村は目立った被害は無いようだが付近の獣に変化は無いか?」


ヘラルドは村長の家に招かれ近況を確認している。

家に入るまでに村を歩いた中で表立った被害は無い。強いて言えば村の入り口にある門が壊れかけていたことだろう。


「周囲の狼が活発になったのですが、ちょうど冒険者の方が来ておりましたのでなんとかなっております」


「それは運が良かったな、この村の規模で残っているのはそうそうあるまい」


村長も自覚があったのだろう、苦笑いを浮かべる。


「それで、その冒険者に合わせて欲しいんだが。なに、心配するな、国民を守ってくれたお礼を言いたいだけだ」


ヘラルドが見回りに来ただけであり、現在村に残ってくれているクレハの機嫌を損ねるのは村の危険に繋がるため村長は安堵する。


クレハには村の門に一番近い空き家が貸し出されている。理由はもちろん獣などの襲撃に備えるためである。


「王国兵のヘラルドだ、このたびは村を救ってくれてありがとう」


ヘラルドからみたクレハの印象は普通だ。

幼さの残る顔立ちに女性らしい対格、筋力も特に優れてる様には見えない。


「わたしはたまたま通りがかっただけだから、お礼を言われるほどのことじゃないですよ」


クレハから見たヘラルドの印象はまともそうな兵士というところだ。

高圧的に出ることもなく実際に感謝しているように感じる。


「さきほどこの村にくる途中で大型のウェアウルフの群れに遭遇したが、クレハ殿はどこかで見かけたかな?」


「ウェアウルフなら何度か追い払ってますよ」


なんでもないように答えるクレハ、嘘をついているようには思えない。


「そうか、先ほど見た群れの中にはずば抜けた強さの個体がいたようだった、用心してくれ」


「警告ありがとう。覚えておきます」


それではこれで、と言葉少なにクレハは席を外す。

余計な接触は身元を知られたくないクレハには不要だ。


(冒険者というのは見た目以上の強さを持つというが…)


「ゾイド、どうだ?」


「強さは十分だ、俺たちじゃ手に負えない、それと…」


(モンスターと対峙した時のような気持ち悪さを感じる)


言葉には出さずにかぶりを振る。その様子を見たヘラルドはなんでもないと理解したようだ、特に追求はしない。


「村長、彼女なら大丈夫だろう、我々はまた別の村へ行かねばならん、明日の朝には出発するとしよう」


彼らのパーティーは村長の家に泊まることになり、村での会議をするための部屋があてがわれた。

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