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インタートライバル・リンケージ  作者: 西亥はるま
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魔王の城

「クレハ殿、機会があればまた会いたいものだ」


そう言うとグラヒムはクレハに握手を求める。


クレハはオーガとの戦闘で十分な成果を得て、ペルもまたアーテクトで必要な情報を集めることができたため、魔城に戻ることになったのだ。


とはいえ、オーガに昨日襲われ村に滞在する兵士の人数が4人に減ってしまったので、ペルが村に残ることになった。


「クレハ様、お気をつけて」


道中の獣に気をつけろということではない。ペルが心配しているのは城に着いてから行われる事についてである。


「あなたもね、できるだけ戦わないように」


クレハもペルに笑顔を向け言葉をかける。

もちろん村周辺のモンスターの心配ではない。

村に一人で残って 人間に悟られないように生活ができるかということだ。


「大丈夫です。何かあればメルオールが助けになる事でしょう」


ペルを村娘のメルオールが助けるというのは想像するのが難しい。話の見えない会話にグラヒムは首をひねるがペルとクレハはお互いの考えを理解し微笑む。


(ペルをメルオールと一緒にエランテに行かせたのは正解だったわね、彼女はペルのことをある程度信用してくれてるということかしら)


「それでは、グラヒムさん、また何処かで」


-----


魔王の城はエレールの北東に位置する。

城の周辺は草原となっているのだが城自体は岩壁をくりぬくようにできており、城の入口も岩壁に作られているため見上げると異様な圧迫感がある。


主要な部屋の数は54部屋あり、そのうちの53部屋にはそれぞれ守護者がおり入り口から54番目の部屋が魔王の鎮座する玉座の間となっている。

場内には装飾は少なく質素な作りとなっている。


クレハは足早に部屋を通り抜けていく、各部屋の主たちは玉座の間に集まっているため部屋に残っているのは使い魔か通常のモンスター達だ。


彼らは一様にクレハを見ると一礼を行う。クレハは、魔王の客人であるため、もてなす対象なのだ。

中には人間を忌み嫌うものも残ってはいるが、部屋の主人や城の主の意向に逆らうものは一人もいない。

力の序列こそがこの城での唯一のルールだからだ。


部屋数こそ多いがほとんど一本道であるため迷いなく進んでいく、数少ない脇道も玉座に向かう通路以外の扉は占められているため迷うことはない。

ほどなくしてクレハは玉座の間の扉の前にたどり着く。


玉座の間への扉の両脇には魔族の石像がたっている。

黒曜の石の体を持つ彼らはドッペルゲンガーと同じく魔法により自我の芽生えた魔法生物である。


「「お待ちしておりました」」


そう言うと2体の大きなガーゴイルは左右の扉をそれぞれ押し開ける。


玉座の間は今までの部屋と比べると少し城らしい作りになっている。

入り口から玉座へと続く赤いカーペットに漆黒の玉座

そして玉座の上には鈍い光を放つ魔石が浮遊している。


クレハが絨毯にそって割れた列を進む。

顔見知りとはいえ、人間以外の視線を受けわずかに汗がにじむ。恐怖ではない。やはりクレハにとっては視線を集めるという行為はなじめないことなのだ。


玉座の前につくと緊張をほぐすため聞こえないように息を吐く。


「ただ今戻りました」


「ご苦労であった、何か変わったことはあるか?」


「予定には影響ないと思いますが、エレールの村にペルを残してきました」


 クレハはエレールの村でオーガに襲われたことと、都市から離れたあの村にはオーガから身を守るほどの戦力がないこと、そして村人たちが貴族たちからの徴収により貧しく生きていることを伝える。


「魔王様に一つ提案がございます。あの村については今後役に立つ見込みがありますので、保護するのがよろしいかと思います」


魔王はすぐには答えない。クレハが何を考えているのかを思案しているのだろう。魔族は決して知能が低いわけではないのだが、他の種族の価値を低く見てしまう傾向があるため、やはり人間の思考を真似するということは難しいことなのだ。しばらく考えた後結局クレハに確認する。


「もちろんそれは我々にとって利益につながることなのだろうな」


「はい、もちろんでございます。力を蓄える上での時間稼ぎになります」


い ずれ人間たちと敵対することがあるかもしれないのだが、今人間たちに襲われた場合自力で切り抜けるのは難しい。しかしながら、冒険者であるプレイヤーたちの多くは普通の人間だ。根っからの兵士でもなければ戦士でもない。

モンスターを倒すのと人間を殺すことを一緒には考えられないだろう。


「分かった。ではクレハの思うように手配してくれ、必要な物や人手は都度守護者たちに相談せよ」


「ありがとうございます。では取り急ぎ村の北東にゴーレムを2対派遣したいと思います」


魔族を送ってもいいのだが、村に異変があった際には村に立ち入る必要がある。その際、魔族が村に立ち入れば間違いなく救援とは思わないだろう。

クレハが行くのが最善なのだが、今城を離れることはできないため、ゴーレムをあてがう。多少強引ではあるが、クレハに指示されて魔族が村を守りに来るより、クレハに指示されてゴーレムが村を守りに来る方がいく分理解がえられそうだからだ。


とはいえ魔法生物であるゴーレムを村に残すということはクレハが使役者ということになり、かなり魔法に優れた人物であると受け取られ無駄な注目を集めてしまう。村に入らずに済めばその方がいいのだ。


 村の件はその辺で切り上げ、これから始まることの打ち合わせに入る。


「さて、早速ですが魔王様、転生するための人員はお決まりでしょうか?」


 クレハとペルが城を離れている間に魔王に提案していたのは魔王討伐のメンバーを決めることだ。

 一度殺すところまでは問題ないはずなのだが、転生がうまくいくとは限らない。

単純に魔王の次に強いものを順番に選べばいいようにも思えるが、討伐に選んだ守護者が敗れ、転生に失敗した場合さらに状況が悪化するため、序列だけでは選べない。


「クレハの言った通り序列10番以降から5名選んだ。ナイトデーモンとデュラハン、アダマントスに、カプリコーンとグレーターデーモンだ」


 名前を呼ばれた5名が一歩進み出る。


 クレハがこれまでに話したことがあるのは

第一の部屋の守護者 ナイトデーモンと第五の部屋の守護者 グレーターリッチの2名だ。

 アダマントスは身体が大きく、目立つため知ってはいたのだが、魔法生物であるからだろうか、無口であるため会話をしたことはない。

 デュラハンはナイトデーモンより大柄な魔族だ。魔族だと思うのはもちろん黒く光る体を持っているからだ。これは金属ではない。

魔族は魔力に優れているのだが魔族の男は魔族の女と比べると精霊術が得意ではない。それは別にできないということではないのだ、彼らは精霊術を使いこなす能力よりも自身の優れた身体能力をさらに高めるために常に身体に魔力をまとっているからだ。

 ナイトデーモンやアークデーモンの黒き外装は筋肉に魔力が融合した鎧であるといえる。魔力が強くなるほどにその力は高まるため、単純だがナイトデーモンよりはるかに大きな体格を持つデュラハンははるかに高い魔力を持つこととなる。

 そしてカプリコーンはヤギをベースに持つ獣人だ。

もともと獣人は力に優れているのだがカプリコーンは生粋の魔術師である。

グレーターリッチが幻覚や、精神異常を得意とするのに対して、精霊術を得意とする。

 力も優れているため彼の持つ杖には明らかに敵を切り殺すための刃がつけられている、この戦杖斧を操る魔術師はその幅広い能力から一人小隊の異名を持つ。


 クレハとしては一人は回復魔法が使える守護者がほしかったのだがどうも回復魔法を使えるものはいないらしい。そもそも回復魔法自体、神聖術の中でも人間が作り出した魔法ということのようだ。

 亜人の中でも使うものはいるがごくわずかな種族のさらに限られた個体だけだ。

 亜人たちは人間よりも優れた自然治癒欲を持つが故であろう。


「回復魔法の件は別で手を打たなければならなさそうですね」


 守護者たちも優れた自然治癒力を持つため今まで回復など不要だったのだろうが今後城を離れることを考えると回復方法は必須になる。基本的に最初の街であるエランテから離れれば離れるほど生息する生物や亜人は強力になるのだ、世界規模で見るとこの城などエランテから目と鼻の先である。ある程度城を離れれば守護者たちが弱者となることを想像するのは難しくない。


 選ばれた守護者たちには魔王から直接自分の能力について説明があったようだが、クレハもそろったので改めて説明がなされる。

 本来であれば自分の実力を他人に教えるなど百害あって一利なしなのだが、今回はそうも言っていられない。転生が失敗に終わった場合魔王と闘うことになるだろう。その際必ず勝たなければならないのだ。


 魔王の話を聞く限り、力、スピード、魔力どれをとっても魔王は守護者たちの誰よりも強い。しかし、どれも圧倒的な差というほどでも無いようだった。力とスピードに関しては戦士2名とクレハがいるため人数の差でこちらに分があるし、魔王でもアダマントスの体を切り裂く事は容易ではないということだ。

そして精霊魔法も魔力の差が著しくあれば無効化されてしまうが、カプリコーンの魔力なら魔王とて無傷では済まないようだ。


 さすがに状態異常を引き起こす様な魔法に関しては完全な耐性を持っている様なので、グレーターリッチにはクレハたちの強化支援を担当することとなった。


 ついに魔王討伐が開始されることとなる。

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