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2 残酷な運命

「私の前で神の名を出す以上、悪ふざけではないんでしょうね?」


 身構えたままのイアイラは、アリスに視線を据えて訊ねた。

 アリスは小さく頷いて、テネース、マリーカ、イアイラの順に視線を送った。


「あの丘でわたしと話してからテネースの様子がおかしかったのには気付いていたと思うけど、あの時ある程度のことを話していたの」


 そう前置きをしてから、アリスはマリーカとイアイラの質問を手で制し、テネースに話したことを繰り返した。


 神は永遠不変の存在ではなく、代替わりをしていること。今まで悪魔と呼んでいた存在が実は神の力の欠片だということ。アリスも神の力の一部だということ。

 そして、テネースは神殺しであり、次の世代の神となるべき存在だということ。


 アリスが話す間、マリーカもイアイラも一言も発することはなかった。ただ、信じられないとばかりに目を見開いている。

 テネースはテネースで、改めて自分を取り巻く状況を再認識させられ、覚悟を決められないふがいなさと、今すぐ決断を迫られる恐怖に襲われていた。


「一応、理解はしてもらえたかしら」


 一通りの説明を終えたアリスが一同を見渡すが、反応はない。だが、アリスは重ねて問うことはせず、口を閉ざした。その視線は自然とテネースへと向かう。


 テネースはアリスの眼差しを感じつつも、堂々と受け止めることもできず顔を伏せた。


 神殺しとして新しい神になるつもりはないと、そう思ってはいるが、それを告げる勇気が持てなかった。連綿と続いてきた神の力の継承を断つことで何が起こるのか、そしてどう対処すればいいのかということがまるでわからないことと、アリスの期待を裏切るのではという不安が、テネースの口を重くしていた。


「……それで、言葉による説明だけで全部信じろと言うの?」


 三人の中で最初に口を開いたのはイアイラだった。顔は蒼白で眉間にしわも寄っているが、しっかりとアリスを見据えている。今も右手は鞭へと伸びており、何かあればすぐに対応できるよう身体を適度に緊張させてもいた。


「地上からここまであなたたちを運んだ光と、わたしたちが扉や窓を使わずにこの部屋に入ってきたことは証明にならないかしら? それと、わたしの存在そのものが」


 アリスの言う通り、人を宙に浮かせる光など人の世に知られてはいないし、瞬間移動を行える人間というのも実在は確認されていない。そして何より、成人男性の肘から先程度の身長しかなく、自由に空を飛び回れる人間など存在しない。


 イアイラは無言だった。アリスの言葉を受け入れも拒否もしない。


「それと、聖職者のあなたなら、神の気配に多少なりとも覚えがあるんじゃない?」


 言葉を重ねたアリスは、視線をイアイラから傍らの女性へと向けた。

 イアイラも視線をそちらに移す。


 突然注目を浴びたにもかかわらず、女性はまったく表情を変えなかった。アリスとともにこの部屋に来てからずっと浮かべているのは無表情だ。そして、その視線はテネースにだけ向けられている。

 アリスが諸々の説明をしている間も、今も、一言も口を開いていない。まるでしゃべる機能をすべてアリスに譲り渡したかのように。


「神殺しだとか神様だとか、いきなり過ぎてうまく理解できないけど、もしテネースが新しい神様になったらどうなるの?」


 説明を聞き終えてから初めて、マリーカが口を開いた。テネースの肩から手をどかし、アリスと正対する。その翠色の瞳には不安が色濃く浮かんでいる。


「……ここで、神としての寿命を迎えるまでこの世界のために尽くしていくことになるわ」


 アリスが答えるまでに、長い間があった。だが、いったん口を開いたアリスは、しっかりとマリーカを見つめる。


「それって、今あたしの横にいるテネースがいなくなっちゃうってことよね」


 語気を強めたマリーカに、アリスは頷き返す。


 テネースは、今のやりとりに、身をこわばらせた。


 神となれば人間としての自分はなくなる。考えてみれば当たり前のことだ。

 その事実に、テネースは本能的な拒絶を抱いた。

 出会ってまだ二年だがマリーカとギュアースと永遠に別れねばならないのは辛いし、三百年という長い時間を孤独に過ごすことへの恐怖は強い。


 恐れは、ますますテネースの舌を凍らせ、顔をうつむける。


「何よそれ。なんでテネースなのよ」

「神の力ともっとも親和性の高かったのがテネースだったから」

「ただの偶然ってこと!? そんな偶然のせいで、テネースは親に疎まれて教会に売られて、あなたに言われるまま悪魔を倒し続けてきたの!? その結果が、世界の犠牲として神様になれってひどすぎる!!」


 声の限りに叫んだマリーカは、上下に肩を揺らしながらアリスを睨みつけた。本気になった時のギュアースを彷彿とさせる鋭い目には、涙が浮かんでいた。


 マリーカの叫びは、テネースに喜びと絶望を同時に与えた。


 僕のことで本気で怒ってくれる人がいる。そう思わせてくれたことは素直に嬉しい。

 だが、テネースが神殺しとなったのは偶然だというその言葉は、アリスがテネースの許へと来てくれたのが偶然に過ぎないと、そう告げている。運命的なものを期待していたわけではないけれど、アリスの意図が絡む要素すらもなかったという事実は、テネースの胸を抉った。


「ありがとう、マリーカ」

「な、なんでお礼なのよっ!? そんなことはないって否定するか、それができないなら、テネースに謝るべきでしょ!」


 先ほどよりもさらに大きな声でマリーカが怒鳴る。その弾みで、目の端にたまっていた涙がつ、とこぼれ落ちた。


「そんなにもテネースのことを気にかけてくれるあなたに、まずお礼が言いたかったの。この二年間、何度も感謝を伝えたかったけど、会話をすることができなかったから」


 言ってアリスは、顔いっぱいに笑みを浮かべ、ゆっくりと頭を垂れた。


「今はあたしのことなんてどうでもいいのっ。テネースを、テネースを地上に帰してあげてよ。ずっと辛い思いをしてきたんだから、今までの分を取り戻す権利がテネースにはあるはずよ。もし新しい神様になる人間が絶対に必要ならあたしがなってもいい、だから、テネースは帰してあげて!」


 テネースは呆然とマリーカを見た。なぜマリーカはここまで言ってくれるのだろう。

 声に出して、マリーカにお礼を言って、しかしその提案は断らなければいけない。そう思うのだが、小さく喉が鳴るだけで声にまで成長しない。


「そういうことを言うのは年長者の私の役目でしょう。あなただってテネース君と同じようにこれからに希望しかない年なんだし」


 鞭から手を離したイアイラが、マリーカの肩を優しく叩く。


「でも、ちょっとだけ見直したわ。テネース君のためにそこまで言うなんてね」

「だって、だってこのままじゃテネースが、テネースがかわいそうでっ」


 振り返ったマリーカは、涙を隠そうとしなかった。小さくしゃくり上げながら、長身のイアイラを見上げる。


「本当に、変わってあげられればいいんだけど。そういうわけにはいかないんでしょう?」

「ええ」

「もし神様が寿命を迎えられても次の神様が決まっていなかったら、この世界はどうなるのかしら」

「わからないわ。今までそういう状況になったことがないから」


 右手でマリーカの頭を撫でながら問うイアイラに、アリスが首を振る。


「意味があるかもわからないことのためにテネース君を犠牲にする。そういうことよね」

「神の大事な役割に、この大地に生きるすべての生き物たちの希望を聞き、その最大公約数に祝福を与えるというものがあるわ。もしこの祝福がなくなったら世界がどうなるか、わたしには想像もできない。あなたはどう?」

「神様の一部であるあなたでもわからいことが、一介の人間のわたしにわかるはずがないでしょう」

「ごめんなさい。意地の悪い質問だったわね。イアイラ、わたしはあなたにも感謝してるのよ。テネースのことを無理矢理連れて行ったりしないでくれて、ありがとう」


 マリーカにしたように、言葉と態度で謝意を示すアリスに、イアイラは肩をすくめた。


「あなたのためにしたことじゃないわ。私にできる範囲でテネース君の望みを叶えてあげたかっただけよ。ネイオスにはまた異端審問官として、聖職者としての自覚が足りないとかなんとか説教されるんでしょうけど。でも、皮肉よね、そんな私が今こうして神様の前に立っているんだから」


 そう言ってアリスの隣りの女性を見るイアイラの顔には、宗教的恍惚のようなものは一切見られない。それどころか、長年崇拝してきた神を前にしているとは思えない冷めた目をしている。


「アリステラ、あなたは神殺しとして先代の神様を手にかけた時、悩んだのかしら?」


 静かに口にされた質問に、アリスは遠い目をして虚空を見つめた。


「そうね。当時のわたしにも、テネースにとってのわたしみたいな存在がいたわ。彼女がいろいろ気を遣ってくれて多少は楽になっていたけど、一人世界のために存在し続けた神様を吸収して、自分が新しい神になるなんて、って悩んだし怖かったわ。ただ、わたしはテネースに比べると堕ちたる神を倒して回る旅をした期間が長かったから、堕ちたる神のせいでどれだけの被害が出ているかを見る機会も多かった。それが決意を固めるのを一押ししてくれたんでしょうね」


 アリスの答えに、テネースは息をのんだ。神殺しなんて嫌だ、神になんてなりたくないという思いが強すぎて、それ以外のことに対する考えがおろそかになっていた。


 今まで堕ちたる神を倒してきたのは、テネースが神の力を受け入れられるように耐性をつけるためだとアリスは言っていた。そして、新しい神が誕生した時にまだ堕ちたる神が地上に残っていたとしたら、それらは新しい神によって吸収されるとも。それは裏を返せば新しい神が誕生しない限り堕ちたる神が地上に残るということであり、それらすべてを吸収しない限り人に害をなし続けるということでもある。


 テネースは堕ちたる神が正確にどれくらいの数いるのか知らないが、今まで吸収してきたのがすべてではないことは間違いない。

 この世界に生きる人々のためにも、覚悟を決めるべきではないのだろうか。


 テネースはゆっくりと顔を上げていく。


 イアイラがテネースを見て片目を閉じ、小さく微笑んだ。


「……テネース」


 そんなテネースの内心を察したのか、マリーカが小さく名を呼んだ。


 まだいろいろな迷いはある。それでも、テネースはまっすぐアリスに視線を向けた。


 アリスも、真剣な表情でテネースを見ている。その言葉を、幾分不安そうに待っているように見えた。


「あ……」


 実の親よりも遥かに見慣れた美しい顔。その顔を見た途端、喉まで出かかっていた言葉が霧散してしまった。


 音が消えた。誰も声を発さず、身動きもしない。じっとテネースの言葉を待つ。


「もし、もし僕が神殺しとしての役目を果たして新しい神になったら、アリスはどうなるの?」


 澄んだ青空のようなアリスの瞳を見ていたら、最初に考えていたのとはまったく違った言葉が口から転がり出ていた。驚き、慌てて口を閉じるが、いったん音になった言葉は消えはしない。


 一瞬目を丸くしたアリスだったが、すぐに穏やかな微笑を浮かべた。


「わたしはあくまでも当代の神の一部だから、あなたが新しい神になった時側にいてはあげられないわ。でも、わたしの存在が完全に消えるわけじゃない。テネースの中で、ずっと一緒にいるわ」

「嫌だ。嫌だよっ!!」テネースが叫ぶ。十五年間生きてきて一番の大きな声で「アリスが消えちゃうってわかってるのに、神様を吸収するなんてできるはずないじゃないか!!」


 マリーカが悔しそうに、切なそうに唇を噛み締め、イアイラが唇を尖らせて肩をすくめる。アリスはわがままな弟を見る姉のような、あるいは駄々をこねる子供を見る母親のような、優しい苦笑を返す。


「テネース、確かにこうやって話をすることはできなくなるわ。でも、離ればなれになるわけじゃない。むしろ、今まで以上にずっと側にいられるの」


 アリスの言葉にテネースは、嫌々をするように首を振る。


「アリスは、アリスはそれで平気なの。こうして話せなくなっても大丈夫なの?」


 転がり出た言葉は、ひどく弱々しい。だが、アリスの顔から笑みを消すには十分だった。


 再び、部屋を沈黙が支配する。


 問うたテネースも、問われたアリスも黙り込んでしまう。マリーカとイアイラは口を挟むこともできず成り行きを見守っているし、神はやはり何も言わずにテネースを見ている。


「……平気よ。何度も言うけれど、離ればなれになるわけじゃないから」


 口を開いては閉じ、閉じては開くということを何度となく繰り返してから、ようやくアリスが言葉を紡いだ。しかし、声は小さく震えており、テネースから顔を背けるようにうつむいている。


「僕は、僕は嫌だ。たとえアリスとずっと一緒にいられるようになったとしても、こうして言葉を交わせなくなったら嫌だ。だから、僕は神になんてならない!」


 神の力の一部としてアリスと一緒にいる。それがどんな状態なのか想像も及ばないが、自分が望むような関係ではないだろう。テネースはまっすぐアリスを見つめ、視線をそらそうとしない。


 アリスは何かをこらえるようにきつく唇を噛み締めた。


「テネース、聞いて――」


 顔を上げたアリスの言葉を遮るように、今まで身じろぎ一つしなかった神が一歩前に出た。


 アリスも含めた全員の驚きの視線が神に集まる。


「あなたが新しい神とならなければ、いずれわたしは寿命で死ぬ。当然、わたしの一部であるあなたたちがアリスと呼ぶ存在も」


 アリスに瓜二つの神の口から出る声は、アリスのそれとまったく同じだった。ただし、優しさの滲み出ているアリスの声とは違い、感情らしい感情がまるでこもっていない、ひどく無機質なものだったが。


「そ、それは……」

「あなたが神殺しとしての役目を拒否した結果、世界が終わるかもしれない。そうならなかったとしても、神が消えることでどのような影響が出るかわからない。わたしが寿命を迎えた後、堕ちたる神がどうなるかもわからない」


 テネースが言葉に詰まっていることなどまるで気にせず、神は話し続ける。


「そ、そんな言い方ないじゃない! そもそも勝手にテネースに神殺しなんてことを押しつけておいて!!」


 何も言えなくなってしまったテネースに代わってマリーカが怒鳴った。本気で腹を立てているらしく、頬は赤く染まっている。


「それでもあなたは神殺しとしての役目を拒否するの、テネース」


 だが、神はマリーカを一瞥すらせず、表情も声も淡々とテネースに問いかける。


「無視しないでよ!」


 マリーカがさらに声を荒げるが、やはり神は視線すら向けない。


「何か、何か方法はないんですか。あなたが死ぬことなく、アリスがアリスでいられる方法が」

「そんな方法があるのなら、神殺しがこの世に生まれることはなかった」


 すがるように問うテネースにも、神は眉ひとつ動かさずに答えた。


「ただ、口で言っても納得はしないだろうから、三日だけ待つわ。ここには歴代の神が書き留めたものや出所のはっきりしないものも含め、かなりの書物がある。期限付きではあるけれど自身が納得できるまで探すといい」


 告げる神は相変わらず無表情で、声からも感情は窺えない。だから、テネースは一瞬何を言われたのか理解できなかった。


 だが、じわじわと言葉が染み込んでくるのと比例して、テネースの顔に生気が戻ってくる。


「あ、ありがとうございます!」


 何が解決したわけでもない。結論が先送りされただけのことだ。けれど、誰にも相談できず、自分自身を納得させるための情報を調べることもできなかった今までを考えれば、大きな転換だった。


「ただし、三日経って代案になるようなものを何も見つけられず、それでも神殺しとしての役目を拒否するというのなら、その時はあなたの意思に反していようとも新たな神になってもらう」

「ちょっと見直したのに、何よその条件!」

「強制できるはずなのに猶予をくれるだけでもありがたいって思うしかないわね」


 なだめるイアイラを振り返ったマリーカは、神を見る時以上に険しい顔で異端審問官を睨みつけた。


「何よその態度。イアイラはテネースが無理矢理神様にされちゃってもいいの!?」

「テネース君を崇拝して一生を終える。それはそれで魅力的かもしれないわね」

「はあ!? な、何言ってるかわかってる?」

「聖職者としての私にはそういう考えもあるってことよ。でも、一私人の私としては、テネース君が手の届かない存在になるなんてごめんだけれどね。だから、テネース君が神殺しとしての役目を果たさなくてもいいように、この世界にも影響が出ないような方法を全力で探すつもりよ。あなたはさっきみたいに神様相手に噛みついて三日間過ごす?」

「そんなわけないでしょ! あたしだってテネースのこと手伝うわよ」


 人の悪い笑みを浮かべるイアイラに、マリーカは唇を尖らせ答える。


「二人とも、ありがとう」


 そんな二人に、テネースは心の底から感謝を告げた。もしこの二人がいなければ、そしてギュアースがいなければ、テネースの今はない。マリーカとイアイラがいなければ、とっくに諦めてしまっていたかもしれない。


「べ、別にお礼を言われるようなことじゃ」

「お礼はきちんと目的の情報を見つけることができてから、ね。まだ安心はできないんだから」

「わたしも手伝うわ」

「アリス?」


 テネースがぽかんとアリスを見つめる。マリーカも同じような表情をしている。イアイラだけが、探るような眼差しを向けた。


「信じてもらえるかどうかわからないけど、わたしだってテネースが望まないことを強制するのは嫌なのよ。だから、テネースが望む未来が得られる可能性のためにできることをしたいの」


 アリスは、微笑みではなく凛然とした表情でテネースを見つめている。


「うん。もちろん信じるよ。でも、いいの?」


 テネースはちらりと神を見た。アリスがテネースを手伝うと言ったにもかかわらず表情に変化はないし口を開こうともしない。


「あたしも、今さらアリスがテネースの邪魔をするなんてとても思えないし」

「ありがとう、マリーカ」


 マリーカが照れたように微笑めば、アリスがほっとしたように笑い返す。


「私は信用まではできないけど、期限が切られてる以上人手は多い方がいいものね。ところで、自由に歩き回っていいとは言われたけどどうやってこの部屋から出ればいいのかしら」


 イアイラの言葉に神が反応した。テネースたちの背後を指さしたのだ。


 振り返ったテネースたちは呆然と言葉を失った。


 視線の先、壁のほぼ中央に両開きの大きな扉があった。アリスたちが姿を現す前に何もないのを確認していた場所だ。


「……いない?」


 驚愕を顔に張り付かせたまま神を振り返ったテネースは、ついさっきまでいたはずのアリスに瓜二つの神の姿がないことに、さらなる驚きに襲われた。


「言うべきことは言ったから神の仕事に戻るって」

「神様の仕事、か」

「さあ、テネース君。進むべき扉もできたんだし、のんびりしてられないわよ」


 状況に適応したイアイラが扉を指さす。

「あ、はい。行こうアリス」

「ええ」


 神と神殺しの関係を終わらせる方法、あるいは終わらせても大丈夫だと示すことのできる証拠を絶対に見つけ出す。


 強い決意とともにテネースは扉へと一歩を踏み出した。

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