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9:魔王城で僕と握手

マスターによって空へと浮上した施設の一部の、彼の城。

戦いの最中だったイシュレッドたちは地上に残され、施設の欠けた場所から茫然と上空を眺めていた。


赤「あれ何?城っぽいけど。」

アシスト「僕たちの城であり、地球征服のための戦艦だよ。でも、どうして。僕たちはまだここにいるのに。」

シドウ「まさか、マスターに何かが・・・ピンクとの会合で問題でも起きたのか?」

青「彼女もあの城にいるんですか!?困りましたね。空なんて飛べませんし、戦艦に乗り込むとなると近づくのも簡単ではないでしょうし。」

「僕らが連れていくよ!」



声に振り返ると、そこにいたのはキッド。そして後ろから巨大ロボのハイグレードが姿を現した。

どうやらミコトより先に囚われていたハイグレードを見つけて助け出したらしい。

たしかにハイグレードに乗れば空を飛んでいけるし、いざ戦艦と戦闘することになったら心強いだろう。

だが問題は、隣にいる敵がそれを良しとするかだ。

あいにくだが、シドウもアシストもそう簡単には協力する気になれるはずもなく、戸惑いながらも阻止するための戦闘態勢をとる。

それに合わせてハイグレードやブルーも構えるが、レッドが一人で無防備に前に出た。


赤「ここで争ってる暇はない。アシスト達も、本当は行きたいんでしょ?僕らが一旦降参して仲間になるから、一緒に行こう。」

アシスト「ええ!?ちょっと、自分が何言ってるかわかってるの?君は世界を救うヒーローなんでしょ!?」

赤「ヒーローっていうのは、誰かのために動く人のことだよ。俺がなりたかったのは、そのためならどんなに馬鹿げたことだって、不可能なことでさえやり遂げる。そんなスーパーヒーローだ!」

青「・・・なるほど。わかりました、それなら僕も降参しましょう。どうせ先ほどの戦いでは負けてましたしね。」

シドウ「本当に、いいんだな?すまない。ならば急ごう。マスター達のいるところへ。」




一方、上空の城ではマスターがその身を邪神の汚れた色に染めらせていた。

犬の狛が心配そうに見ている中、ミコトはスライズが消えて残したコアと黒いイシュールを抱きしめる。


ミコト「どうして。・・・どうしてこんなことができるの?」

マスター「なぜかだと?裏切ったからだ。裏切り者は全て我らの敵だ!」

ミコト「でも!仲間だったじゃない!世界征服だって、復讐のためだけだった?施設にいた仲間のためでもあったんじゃないの!?」

マスター「それ、は。」

ミコト「昔とはいえ、世界平和を願ってたあなたができることじゃ無い!自分の思い通りにいかないからって、切り捨てるなんて。それじゃあ、施設にいた人達とやってたことが一緒だよ!」


マスターは困惑した。彼女の言うとおりだったからだ。

全てのキッカケは邪神と出会ってからだが、彼のいう世界征服は「人でない者達を迫害しない世界」を作ることだった。

それなのに自分は何をした?人でない者を、仲間を、排除した。

邪神とマスターの同調していた心が乱れ、その姿も形状を保てなくなっていく。


マスター「いや、違う。我の敵は、裏切った人間共への復讐。そうだ、復讐だ。だから裏切り者は全て敵なんだ。いや、だが私は彼らも救いたくて、それなのに!違う、違う違う違う!」

ミコト「マスター?どうしたの。」

マスター「うるさい黙れ!ワタシは正しい。正しいんだ。間違ってなどいない!惑わされるな!オマエモ裏切るのか?ワレを裏切るというのか!?」

ミコト「あなたは・・・。」

アシスト「ミコト!マスター!」


そこへ、ハイグレードに乗ってアシスト達が現れる。

意識を正常に保てていないマスターは、その対象のみを敵として目にとらえた。

そして、敵味方関係なく、理解せず、容赦のない攻撃を放った。


キッド「うわああああああ!」

マスター「そうだ。裏切り者は許さない。人間は敵。ワレの邪魔をする者は排除してくれる!」

ミコト「待って、落ち着いて!お願いだから、もうやめて!」


再びハイグレードに攻撃しようとしたマスターの前にミコトが立ちふさがると、まばゆい光が放たれた。

それはミコトのイシュールから。そして、他のイシュールもそれに反応して輝く。

何が起きたのか理解できないブルー達の中で、唯一全てを把握したのはキッドだった。


キッド「イシュールの力が、彼女を軸に完全に開放された!」


光り輝くイシュールは持ち主達の変身を解いて手元を離れ、ピンクの元へと集まる。

そして、その姿は一つの剣へと変わった。

ピンクの姿も、真っ白な巫女服のようなものに姿を変える。


ミコト「これ、は。一体、何が起こったの?」

剣『ミコト、聞こえる?ボクだよ、キッドだよ。』

ミコト「キッド!?どうしてそんな姿に。」

剣『前に言ったじゃない。ボクはイシュールそのものでもあるって。今の僕は、封印される前の姿なんだ。』

ミコト「イシュールは元々剣だったってこと?じゃあこの姿はもしかして、その当時の持ち主の服?」

剣「そのとおり。さぁ、ここからが本番だよ!」

マスター?「貴様、復活しおったか。今度こそ邪魔はさせぬ!この男の闇を利用して、ワレは復讐を成し遂げるのだ!」


邪神がかつて自らを封印した宿敵を思い浮かべたのであろう。マスターはすぐにこちらに敵意を向けて来た。

マスターによって繰り広げられる迎撃を、ミコトは驚くほどのスピードや身体能力で避けていく。


ミコト「すごい。こんなに早く体が動いてる。自然と、勝手に反応してる。」

剣『今、ボクと精神を同調させてるからね。ボクの記憶してる戦闘の動きが、ボクの思うとおりにできてるんだよ。』

ミコト「じゃあ、イシュールのおかげで私戦えてるんだ。よーし、一気に攻めてくよ!」


更にスピードをあげて、ミコトは剣で敵の攻撃を切り払って距離を詰めた。

そして、邪神を埋めていた機械の体に剣を突き刺した。


マスター「がっ!?」


機械の体は崩壊し、邪神とマスターの心はついにばらける。

マスターの体は倒れ、形を崩した邪神の石ははじけ飛んだ。


邪神『これで、最後か。壊すなら、さっさと壊せ人間。』

ミコト「・・・ううん。壊さない。話は全部聞いたもの。本当のあなたは邪神なんかじゃない。イシュールと変わらない、ただの特殊な石。悪事に利用されただけ。悪役にされて、怒ってただけ。』

邪神『本当に、甘いな。貴様という女は。かつて、ワレを封印した者達とは大違いだ。』

ミコト「当たり前じゃない。今の世界にあなたを敵視する人は、いないんだよ?」

邪神『!・・・あぁ、そうか。そうだったんだな。』


邪神と呼ばれた者の心はあの頃と同じままだった。きっと同じように扱われると思っていた。

だが違うのだ。もう疎まれていたのは昔の話だったのだ。マスターや、こんな女がいてくれるのだ。今になって、やっと気づいたことだった。

目が覚めたのはマスターも同じで、同調していた邪神の心をなんとなく察していた。

そして、自らの過ちも。

戦いが終わり、彼らの心の闇が消えていくのと同じように戦闘で崩壊した城の一部が崩れ、マスターの周囲の床が落ちる。

変身も解いて、すっかり油断していたミコトは慌てて手を伸ばすが、届かない・・・はずだった。


彼の手を、イシュレッドである正とイシュブルーであった守が掴んでいた。


マスター「お前たち・・・なぜ。」

守「誰であっても、助けられるのに見逃したら罪になりますからね。」

正「もう、守ってば素直じゃないんだから。」

アシスト「マスター大丈夫?」

シドウ「今お救いしたします!」

マスター「あぁ・・・すまない。お前たち。本当に、すまなかった。」


アシストとシドウを見つめながら彼はスライズのことを思い浮かべた。


正「もう悪事はしないんでしょ?ほら、仲直りの握手。」

マスター「まったく・・・君たちには、負けたよ。」


引き上げられてから、正はマスターに手を差し出した。

当然のような態度による行動と満面の笑顔に、思わずマスターも笑みを浮かべながら再びその手を重ね合わせたのだった。


やっと終わったんだよね。分かり合えたんだ、私たち。

だったら、笑顔で前に進まないと!


という訳で 次回、大団円の最終回「全ては愛と平和のために」


皆、ただいま!

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