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5:恋せよ悪役

キッド「えっと、彼は黒野比呂。能力は石で、僕らの新しい仲間だよ。これからよろしくね。」


黒いコートを来た無表情の青年がお辞儀をする。彼こそが私達の新しい仲間、黒のイシュレンジャーらしい。


彼との初対面の後、私の家で改めてキッドに紹介してもらうことになった。

なんでも彼が正式に仲間になったのは私達と彼が出逢う直前のことだったらしい。それなら、今まで紹介すらされてなかったのも当然だろう。


守「それにしても、イシュールを見つけた時点で連絡ぐらいしてくれてもよかったのでは?」

キッド「それが、前にも言ったとおり力を封じられちゃったせいで場所とかわかんなかったから・・・彼に拾われてからも上手くコンタクト取れなかったんだよ。」

正「だけどコンタクトが取れるようになって、おまけに仲間になってくれることになったってことか。」

守「ミコトのために、だそうですけどね。」


守の言葉に、苦笑いする。そう、彼は私達に言ったのだ。私を守るために来たのだと。

私を守った時のことだったからという可能性も無くはないのだけど、彼は特には否定をしなかった。


黒野「紹介は済んだ。用事もあるし、僕はそろそろ行く。」

ミコト「え?あっあの、黒野くん。」

黒野「ごめん。悪いけど、急いでるから。またね、ミコト。」


戸惑う周りの空気も気にせず彼は出て行ってしまった。

この集会での話の根源である人物がいなくなってしまったのでは、もう話すことがない。


ミコト「まだ、私達の方の紹介はしてなかったんだけどなぁ。相当、忙しかったのかな。」

キッド「かもね。一応仲間になった時に皆のことは軽く説明しておいたから大丈夫だと思うよ。」

正「ちょっと関わりにくそうだけど、悪い奴じゃないみたいだしキッドが決めたんならきっと仲良くやれるよな。ブラックってそういうもんだし!」


そう言って笑う正。だけど守は相変わらず、どこか納得していないような顔をしていた。


時と場所は変わって、敵のアジトでは。


シドウ「最後のイシュールまでもが奴らの手に渡ってしまったとは。一体何者なんだ。」

アシスト「要注意人物ではあるよね。向こうの人数増えちゃったし、これからどうする?マスター。」


白衣を着て、仮面をつけた男に視線が向けられる。彼こそが、彼らのマスターである。


マスター「問題無い。奴の力は我と同じく、まだ完全には復活できていない。作戦を続行せよ。」

シドウ「一番の邪魔物であるイシュールの回収、もといイシュレンジャーの撃退ですね。了解いたしました。」


マスターが奥へと戻って行くのを見届け、シドウは決意を新たに手にした剣を握りしめた。そして、紙を取り出す。


シドウ「わが宿敵、イシュピンクよ。次こそは目にものを見せてくれよう。」

アシスト「何それラブレター?ピンクに目をつけたのボクが先なんだから、惚れちゃ駄目だよ?」

シドウ「誰が惚れたりなぞするものか!アシスト、奴らは敵であることを自覚しろ。貴様は貴様でやるべきことをやっていればいい。」

アシスト「はーい。もう、素直じゃないなシドウはー。とにかく、ピンクは倒してもいいけど生かしておいてよね。」



数日後、ミコト達は公園に集まっていた。

というのもミコトが巨大ロボに名前をつけたいと思っていることをキッドの通信で伝えたところ大喜びされ、どうせなら皆で考えようということになったからである。

そうして現在、巨大ロボとも通信しながら皆で名前を考えていた。


正「そうだ!ハイグレードなんてどうかな!?ハイグレード!」

キッド「うん、今度のはすごく気に入ってくれたみたい!その名前にするって。」


巨大ロボの様子はわからないが、おおはしゃぎするほど気に入ってくれたらしい。

あまりはしゃぎすぎると見えなくても目立つと注意しておき、キッドは通信を切った。


守「しかし、名前を決めるというのもなかなか難しいものですね。正はどうやってあの名前を思い付いたんですか?」

正「あの名前?ほら、あいつの色って主に銀っつーか灰色だったじゃん。だから、灰色とグレーを合わせてみて、なんんか型にはまったから、ハイグレード。」

キッド「そ、そっちの意味から思い付いたんだ。覚えやすいのは良いけど・・・由来は秘密にしとこうか。」


名前も決まって一段落し、お昼はどうしようかという話題に入ったところだった。黒い水たまりのようなものが現われる。

スライズとわかり身構える正達の目の前で、スライズはいつもの姿を現す。と、私に手紙を差し出してきた。


守「迂闊に近寄ってはいけませんミコト!危険です。」

ミコト「危険って。まさかこの手紙に触れたとたん爆発みたいな?」

正「嫌だなそんな子供のイタズラオモチャみたいな罠。大丈夫だよ、スライズってミコトには懐いてるみたいだし。」


あーだこーだと揉めていると、スライズは手紙を地面に置いて姿を消してしまった。残された手紙を呆然と見つめる。

こうしていても仕方が無いと、正が恐る恐る手にとって手紙を開けた。


正「何だろ、あの怪人からのラブレターとか?えー、拝啓。イシュレンジャー所属イシュピンク殿。貴様に一対一の決闘を申し込む。期日までにこの場所にて待つ。いつでもかかって来るがいい。魔獣シドウ。」

守「ご丁寧な挑戦状ですね・・・。しかもこの期日、一週間ほど余裕がありますね。」

キッド「相手の用事のこと考えてるのかな。やっぱり真面目なんだなぁ。」

ミコト「これってあの時の魔獣さんから?どうしよ、私に決闘なんて。っていうかなんでだろ。ふっとばしちゃったから?」

守「僕らにメリットはありませんし無視をしたいところですが、もし行かなければ町を襲うなんて可能性もありますからねぇ。」

ミコト「あの紳士さんがそんなことしそうにはないけど...放っておくのも問題だもんね。」


そういう話に落ち着き、ちょうど今日は予定もないということで私達はすぐに挑戦状に書かれていた決闘予定地に向かった。

場所はなんと海辺。普通の人はまず立ち入れないであろう危険な岩場に阻まれながらも、ある程度戦えるであろう広さ

の、岩に囲まれた場所があった。


赤「イシュレンジャー参上!お前が俺達を呼んだ魔獣のシドウだな?呼ばれたからわざわざ来てやったぜ!」

シドウ「よく来たなイシュレンジャー。と言いたいところだが、ワタシが呼んだのはイシュピンクのみだったはずだが。どういうつもりだ?」

青「ピンクは戦いません。一対一の勝負をお望みなら、僕が相手をしましょう。」

ピンク「え!?大丈夫なのブルー?アシストって子も強くなってたし、きっとあのシドウって魔獣も前より強いよ!」

青「ならあなたが決闘しますか?嫌なんでしょう?いずれは戦うことになるんです。ここで決着がつくなら面倒がなくていい。」

赤「それなら、ブルーの代わりに俺がっ。」


前に出ようとしたレッドの目先に、離れていたはずのシドウの剣先がくる。

それを、ブルーはアイスソードで冷静に防いでいた。突然の事に、息をのむ。


シドウ「ほう、反応できるか試してみたがなかなかやるな。いいだろう、まずは貴様から相手をしてもらう。」

青「それはいいんですが、あなたは勝てばイシュールを手にいれるとして、こちらのメリットは?」

シドウ「残念だが、ワタシが思い付くのは一つのみ。貴様らの邪魔な幹部の一員が消えるということだけ。そう、このワタシの命だ!」

ピンク「そんな。お願い待って!」


止める声も聞かずに襲い掛かるシドウと剣で戦うブルー。

氷で作った剣だから耐久度が心配だけれど、形状維持にも力を使っているそうなのでたぶん大丈夫だ。

しかしブルーはシドウの力と動きや剣技の速さに圧倒される。

レッドが駆けつけようとするもののスライズ達に阻まれてしまい、皆で逃げようにも逃げられなくなる。

そして何度目かの攻撃を受けたところでイシュールの力が弱まってしまったのか、ついにブルーの変身がとけてしまった!


守「ぐ・・・まさか、ここまで強いなんて。ですが、僕はまだ諦めませんよ!」

シドウ「ほう。イシュールの加護が無くとも戦うつもりか。素晴らしいが早く決着をつけさせてくれ。ワタシの理性が消える前に。」

ピンク「やめて!そもそもあなたが決闘を申しこんだのは私でしょ!?」

赤「駄目だピンク!今そんなこと言っても!」

シドウ「外野は黙っていれば良い!」


戦いの最中に気が高ぶったのか、シドウが野生の目をしているのが隙間から見えた。

危険を感じて叫んだものの逆効果だったらしく、シドウはこちらに剣をふるおうとする。

アイスソードも出せず体の負担から動けない守の代わりにその剣をとめたのは、ゴテゴテとした鎌を手にしたイシュブラックこと黒野だった。


シドウ「何者!?いや、そうか。貴様がアシストの言っていた新たなイシュレンジャーだな?まさか、スライズの大群を抜けてくるとはな。」


一体彼は何をしたのか。先ほどまで私達を妨げていたスライズのほとんどが、いっせいに消え失せていた。

邪魔者がいなくなったことで、レッドと一緒に守のとこへと駆け寄る。

ブラックは私達を守りつつ、おそらく己の力で作ったのであろう石の鎌をシドウへと構えなおした。


黒「僕はイシュブラック。暴れるのは勝手だけど、ピンクを傷つけるのは許さない。」

シドウ「青の次は黒か。そこまでワタシとピンクと戦わせないつもりか。一体何故!?」

赤「女性を守るのは、男として当然だ!」


そこで、変な間が空いた。

シドウが言葉を無くして固まり、その異変に気づいた私達は彼の様子をうかがう。


シドウ「女性、だと?」

キッド「えっ。まさか、ピンクのこと男だと思ってた!?」

シドウ「これは、今まで手荒なマネをして真に申し訳なかった!!」


本当に今までずっと男だと思われていたらしい。全力で土下座をされてしまった。

色ピンクだし声とか口調でわかっていて欲しかったが、どうやら人外である彼が判別するのは難しかったらしい。

女性が戦闘に参加しているとは思わなかった、等と言われながら何度も謝られた。

よく考えてみれば彼の紳士的な性格からして、女子供に手は出さない主義だとこちらも気づくべきだったのかもしれない。


ピンク「えっと、本当、気にしないでください。種族違うんだし間違えることもありますよ。」

シドウ「イシュピンク・・・アナタは、強いだけでなく心も優しいのか!」


感動のあまりに手をギュッとつかまれる。と、何を思い出したのかシドウは真っ赤になりながらその手を慌てて離した。


シドウ「わ、ワタシは。アシストとは違う。人間に、それも敵に、想いなど寄せぬのだあああああああ!!」


叫びながらシドウは走り去り、私達は取り残された。なんだったのだろう、あれは。

何より呆然と立ち尽くす私に、守がすごく心配して「いいか!?男は皆狼なんだぞ!」と言ったのが印象に残ることになった。

守、彼は狼だけど紳士です。


男だと勘違いされていたのは、さすがに想定外。でも世の中って想定外なことが起きるものよね。

お化けが出ても問題は・・・私たちがお化け?


次回、いわゆる肝試しの第6話「人でなし戦隊」


ん?少し震えてるような


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