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再会  作者: 吉川明人
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気持ち


 順崇は気配を消して出口を阻む二体に向かって近づいていたが、人の群れに阻まれてなかなか進むことができず、もどかしさを感じていた。手間取っている間にも、次々と犠牲者が出ている。

 やがて怪物は武器を使い始め、さらに多くの命が奪われていく。

 彼はいっそうあせった。しかし人々が怪物から逃げ始めたことにより近寄りやすくなった。

 一体が逃げ出した人々を追って行く。残りの一体……彼はそこで信じられないことに遭遇した。怪物が人々を追っている者に向けて武器を使ったのだ。

 仲間ではないのか? 

 怪物はあたりを見回し、再び武器を構える。その武器の先にいるのは……。


「……ククク……カウガイ、ずいぶんと苦戦しているようじゃないか。自慢の靫弩はどうした? 弱い獲物ばかり狩って腕が錆びついたか?」

 いつもタイシエを金と武器を頼る奴とバカにしていたカウガイと、獲物の一匹が闘っている。

 ラオノイとレイネイの姿は見えないが、やられたのか……まあ構わん、ゆっくり探そう。

「せっかくだから助けてやるぞ。誤って獲物と間違うかもしれんがな……」

 カウガイと獲物の姿が重なるのを、わざと勿体をつけて待つ時間さえ、心地よかった。

「じゃあな」

 指を軽くひねれば終りだ。

 照準に映る獲物に別れを告げた時、腕が弾かれ軋轢は標的を逃し、轟音を響かせ床が大きくへこむ。

「なんだ!?」

 反射的に軋轢を構え直したが、影は消え、腕がボキッと嫌な音をたてて折られた。筋ごと断たれたらしく、指は痺れて動かせない。

 とっさのことにぼう然とするタイシエの正面に巨大な影が現れる。

 一片の無駄も無いしなやかな動き。巨体であるからこそ生みだせる攻撃に反撃さえできない。

 自分に何が起きたのか理解できないまま倒れたタイシエだがその顔にはエンギウが最期に見せた表情と同じものが浮かんでいた。


 ……怪物が倒されたことを知った人々は、再び出口に向かって殺到する。まるで、引いては寄せる波のように。そのたびに多くの犠牲が払われることになる死の満ち引き……。

 しかし今度は希望があった。出口を阻む怪物がいなくなったのだ。

 人々が先を争って逃げ出して行く中、順崇と渓華はならんで立ち止り、ある一点を見つめている。

 その視線の先にいるのだ。

 最後の怪物が。

 二階席に座ったまま、逃げ出して行く人々に手出しもすることなく怪物もジッと二人を見つめていた。

 やがて、最後の一人が逃げたことを確認すると、ゆっくりと立ち上がる。

 二人には分かっていた。最後の一体がこれまで倒したどの怪物よりもはるかに強いことを。

 怪物が軽く跳ねたと同時に、二人の後ろにいた。

「ククク……ようやくジャマな奴らは消えた」

 二人にも分かる言葉でレイネイが話す。

「いったいなんのために、こんなことをするんですか!」渓華が大声で怪物に問いかける。

「なんのため、だと? 決まっている。愉しむため……キサマたちは獲物としてワシを愉しませてくれるではないか」

「愉しむですって!? それだけでこんなこと、許されることじゃありません!」

「ククク……許されないだと? この星にくるまでに、キサマたちの性質や習慣を調べたが、キサマたちのやっていることとどこが違うというのだ? 釣りは? ハンティングはどうだ? 

 キサマたちニンゲンは、自分より下位に属するという理由で、これまで多くの種族を絶滅させているではないか。それは許されることなのか?」

 レイネイの言葉に渓華は何も言えなくなった。

「許す許さぬなど最初から存在しない。食物連鎖の最上位に立った知的生命体は、その瞬間から他の生物を脅かし、自分たちにとってのみ有利な状況を作りだそうとするのだ。

 結果、一方的な理論でたくさんの生物種が死滅することとなる。キサマたちのやってきた歴史と同じではないか。

 目を背けていようがいまいが、そこにキサマが存在しているだけで多くの生命体を脅かしている。やっていることはワシと同じだ」

 渓華は奥歯を噛みしめ、拳を握りしめていた。これほどの大虐殺を行った相手に、ひと言も言い返すことができない自分自身が悔しかった。

「それにキサマたちの力、この星での同じ種族の者たちに比べあまりにも強すぎる。生物種として必要がないほどにな。隠していてもキサマたちのことは分かるぞ。

 自分の力が高まれば高まるほど、より強い相手と闘いたくなる気持ち。そしていずれ脆弱なものを忌み嫌い、力のない者を嘲ることになるだろう。このワシのようにな」

「そんなことありません!! 強さは……この強さは自分を鍛えるためのもので、弱いものを守るための力です!!」

「ならば聞こう。自分と互角以上に闘える者に勝った時、キサマはどんな気持ちだった? ワシはカウガイを倒した時のキサマの表情を見逃さなかったぞ」

 渓華は言葉に詰まる。確かにあの時、彼女は勝利したことの充実感に充たされていた。たった一体でこれほどの虐殺を行うことができる相手に勝つことができたことに……。

 レイネイの指摘に順崇はどう思ったか……渓華は目だけ動かして彼を見たが、いつも通り表情一つ変えず、サツにもなんの変化も見られない。


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