表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再会  作者: 吉川明人
14/28

現実


 レイネイは獲物を狩る腕を休め、群れを眺めた。

 獲物の数は軽く見積って4000匹。もう少し同族争いや自滅する獲物を増やしてもよかった。今はまだいいが、これだけの数だ。軽いスポーツどころか最後の二匹までにはノルマになりそうだ。

 狩りのルールは『パニックになった獲物は飛び道具を使わず狩る』だが、今回は武器の使用を認めてもよかろう。愛用の超合金製の爪『蒂鏨たいさん』に飽きれば仲間に提案するか。しかし、それまで時間はたっぷりある。

 会場は侵入前に物理的に空間を封鎖してあり、この星の文明レベルでは外から入ることはできない。中から外へ出ることはできるが……それもあり得ない。なぜならすべて狩るから。

 入ることができるのは、このワシが出て行った後だけだ。あるいは死んだ時か。

「……ククク」

 ガルアテのような奴がいればそれもあり得るが、残念だがこの星にそんな奴はいない。

「時々休まないと、明日から筋肉痛になるぞ」

「俺は大丈夫だ、しかしオンデアは歳だから二日は遅れて痛くなる」

 口元の『交聴こうちょう』で仲間に伝えるとケウナエの声が聞こえる。

「なんだと、それはお前のことだろう」

 ジョークを交えながらの、いつもの狩りだった。

「今回は誰が一番数をこなしたかが、勝負になりそうだな」

「だったら一番若い俺様の勝ちだな」

「ぬかせラオノイ。熟練のワシを侮ってもらっては困るぞ」

「だったらレイネイ、勝負の賞品に明日のディナーを追加するかい」

「望むところだ」

 仲間が一斉に大笑いする。

 レイネイの前に怯えた獲物が押し出された。これで272匹。

獲量かくりょう』が一匹始末するごとに数値をきざんでいく。

 体力のあるうちに少し派手にやるか、そのあと休んで回復し、また始めよう。

 怯える獲物に向かって四本の腕でまとめて襲いかかる。数値が上がった。


 いつもの虫ケラのような動きの中に、見慣れない動きをするものを最初に見つけたのはケウナエだった。

 獲量は169を示し、まだ充分体力に余裕はあったものの、そろそろひと休みしようかと考えていた時だ。どの獲物も内側へと向かっている中で、一匹だけが自分に向かって進んでいる。

「……ククッ、ショックで気でも触れたか」

 ケウナエは苦笑した。

 好きにしてやる。群れの外に出たとたん、俺がすぐ楽にしてやろう。レイネイはラオノイにそそのかされ、勢い込んで獲物の数を増やしているが、いつまでも続けられるものではない。

 一時的に数をこなし、早い段階で休憩を取るつもりだろう。

 ケウナエが横目でレイネイを見つつ、獲量の数値が220を数えた時だった。

 気の触れたであろう一匹が群れから飛び出した。今回の獲物の中では、かなり大物と言える体高を持っている。

 レイネイほどではないが、カウガイなみの大きさだ。数ではレイネイにかなわないが、今回の大物賞はいただきだな。

 気が触れているだけあって、獲物はまっすぐこちらに向かって走り寄り、無謀にも立ちふさがる。

「ククク……自分から飛び込んでくるとは」

 ケウナエは血糊に鈍く光る『頴鈎えいこう』を振り上げる。腹を絶ち切っては、大物だったかどうか分からなくなる。口の悪いオンデアなら何匹分かをくっつけたなどと言うだろう。

 だがそれは言わせない。胸部を貫くだけにとどめておけば原形は残る。獲物に向かって頴鈎を突き出したその時、ケウナエの身体が宙を舞った。

 何が起こったのだ!?

 確かに獲物の胸を貫いたと思った。

 しかし切っ先が触れる瞬間獲物は消え、突然腹部に強烈な痛みを感じ自分の身体が宙に飛んでいる。

 大物に気を取られていて、足元のザコのような獲物に気づかなかった。まるでスローモーションを見ているように、景色が流れているのを感じた。

 床にしたたかに身体を打ちつけ、痛みを堪えながらも起き上がろうとした時、何者かにすべての腕と身体を押さえられ、身動き一つできない。わずかに見える相手の身体から、それは先ほどの大物の獲物であることは分かった。

「今すぐやめなさい!」

 ケウナエの前に別の獲物が立ちはだかり、レイネイに向かって叫んでいる。大物とは違いザコの方はずいぶんと小物だ。こんなやつで数を稼ぐとエンギウにさえバカにされる。

 だが、俺はこいつにやられたのか? 

 大物に押さえられ息が苦しい。

 腹部に痺れるような痛みが走る。

 まさか防護服越しの攻撃で痛みを感じるなど。衝撃吸収素材の効果が薄れたのだろうか? これを買った店に持って言って、文句の一つも言ってやろう。

 ケウナエはま自らに起こった現実を理解していなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ