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花粉症高校生シリーズ

花粉症高校生の憂鬱(春)

作者: 蒼峰峻哉

花粉症があまりにも酷い為、この苦しみを皆さんに知ってもらう為に半ば自暴自棄になりながら執筆しました。

正直今までの作品と比べても、かなりの自己満小説となってしまっているのであまり期待はしないでください。

ただ、花粉症の方には楽しんでいただけるかも?

 春。草花が芽吹き、動物達もその暖かな陽気に誘われ目を覚ます。全ての生物に穏やかな陽射しは平等に降り注がれる。

 また春は新たな出会いの季節だ。今まで過ごしてきた学び舎を離れ、新たな学校での新生活に心踊らせる者。新社会人として社会に旅立って行く者。進級し、少しずつ迫る卒業に寂しさを感じる者。彼らには様々な出会いが待っているだろう。

 嗚呼、春は何と素晴らしい季節なのだろう――――とか言うと思ったか?

 春が最高の季節? いいやそんな事はない。俺にとっての春は地獄の季節、最低の季節だ。

 それもこれも、あの物質が原因だ。主に春や秋に飛び立ち出すあの物質……。


 花粉だ。


 重度の花粉症患者の俺にとっては、この時期はまさに地獄と化す。今回はそんな俺の一日を記録してみた。これを読んでくれれば、花粉症でない人達にもきっと俺達花粉症患者の苦痛が伝わるはずだ。また、同じ様に花粉症に悩まされる人達には何度も頷ける場面があると思う。悩まされているのは自分だけではないのだと言う事を知り、これから花粉と戦っていく為の勇気を与える事が出来たらと思う。




 朝。基本的に寝覚めの良い俺なのだが、今日は――いや、この時期は違った。

「最悪だ……」

 目を開く事が出来ないのだ。まだ眠いからとかそんな理由ではない。発生した目やにのせいで上瞼(うえまぶた)下瞼(したまぶた)がくっついてしまい目が開かないのだ。

 全く開かないので、思い切って無理やり開けようとすると。

「痛ててててっ!!」

 ダメだこれ! 睫毛(まつげ)が抜ける!

「顔洗ってこよう……」

 結局俺は両目が塞がれたままの状態で洗面所まで歩く事となったのだった。




「うわっ、キツそー」

 教室に入った俺への第一声はそれだった。

 そうっすね。もう帰りたいです。

「薬は飲んでないの?」

「効かないんだよね……。これが……」

「……お気の毒に」

 クラスメイトからの哀れみの目を浴びながら、俺は席に着いた。

 俺は花粉症が酷過ぎて毎年薬が効かない。正確には効いてはいるのだが、症状が抑えきれていないというのが現状だ。オマケに微量の花粉にも敏感に反応してしまうタチなもので、マスクや花粉グラスを常備していたとしても結局はそれなりの症状が出てしまう。

 はぁ……。(うつ)だ……。

 とにかく何のやる気も起きない。

 何度ガスマスクの購入を検討した事か。挙げ句の果てには宇宙服も良いのではと思ってしまうほど余裕がない。そのつど友人達からは何とも言えない微妙な顔をされたが、そんな事はどうでも良い。

 さて、もうすぐホームルームが始まる。俺は静かにマイティッシュ(箱)を鞄から取り出し机の上に置いたのであった。




 昼休み前の最後の授業が始まった。最悪な事に授業は外での体育だった。

 別に俺は運動が嫌いな訳ではない。むしろ好きな方だ。体格にも恵まれていて、ラグビー部からの勧誘なんかも良くある。ならば何故最悪なのか。

 そんな事は決まっている。花粉が原因だ。

 ただ運動するだけならまだ何とかなる。ある程度ならマスクをつけた状態でも動けるだけの体力もある。だが今日の体育はサッカー。こんなに走り回るスポーツをマスクつけた状態で行うなど正気の沙汰(さた)ではない。

 更に外での授業と言う事もあり、室内よりももちろん花粉の量は多い。オマケに今日はかなりの強風が吹き荒れている。花粉の量も段違いだろう。

 そんな中でマスクを外す事になるなんて……。――言葉も出ない。

「やりたくないなぁ……」

 そんな俺を尻目に試合開始のホイッスルが鳴り響いた。




 死ぬかもしれない。

 それが試合を終えた後の俺の率直な感想だった。

 目の腫れと違和感、涙で両目は潰され、鼻詰まりで呼吸も上手くは出来ない。

「……ちくしょう」

 春一番なんじゃないかと思える強風の中、両目を(つむ)った状態で仁王立ちする俺の事をクラスメイト達が世紀末(せいきまつ)覇者(はしゃ)と呼んでいたのに気付くのはもう数分後の話だ。




 この後の俺は花粉症の症状が収まる事がなかった以外には、これと言って語る事もないまま学校生活を終えた。

 何か挙げるとすれば学校にいる間、俺は両目が使えなかった為に友人に手を引いてもらったりしていた事くらいだ。友人からは介護が必要だなと言われてしまった。

「花粉症患者の為の介護施設とか出来ないかな……」

 タオルで交互に目を抑えながら歩く帰り道で、俺はぽつりと呟いた。




「沖縄に住もう!!」

 家に無事帰宅する事が出来た俺は、ティッシュを一箱使い切ると同時に叫ぶ。

 今しがた沖縄にはスギやヒノキなどの花粉がほとんど飛んでいない事を、俺は知ってしまったのだ。

 だが沖縄に住むのには色々と問題もあるし、第一俺はまだ高校生。今後の事を考えると、恐らく沖縄に住む事はないのだろうと考えた。

 ならば春と秋の間だけでも沖縄で過ごせないだろうか。そうなると必要なのは別荘……。

「どっちにしろ難しいかぁ……」

 俺の苦悩は続くようだ……。




 長かった一日が終わる。何も変わらず花粉に悩まされる一日であった。

 そろそろ寝たいのだが、明日の朝の事を考えると憂鬱(ゆううつ)な気持ちになる。どうしたものか……。

「でも寝ない訳にはいかないし……。仕方ない、か……」

 意を決して布団に潜り込み瞳を閉じる。

 俺は思った。こういう日に限って、やたら寝つきが良いものだと――――。





 いかがだっただろうか? きっとこれを読んでくれた花粉症患者のみんなも、思わずあるあると言ってしまうところもあったのではないかと思う。

 他にも花粉症あるあるは沢山あると思う。

 例えば、勉強とかしていて下を向いていると鼻水が垂れてきたり、気が付くと虚空(こくう)を見つめていたり、鼻をかみつつ次の紙に手を伸ばしていたりと……。

 つまりはこんなの、俺達の苦しみの一端でしかないという事だ。

 最後に、ここまで読んでくれたみんなに感謝の言葉を。ありがとう。

 そして花粉症と縁のないみんなへ。これを読んで少しは俺達の苦しみが伝わってくれていれば幸いだ。近年は花粉の量が増加している事もあり、今まで花粉症でなかった人までもが花粉症になってしまうという事も起きているらしい。本当にお気をつけて。

 今現在花粉症に悩まされている同士のみんなへ。強く生きるんだ。気持ちで負けたらもう立ち上がる事は出来ない。一年中花粉は飛んでいるとはいえ、特に酷いのは春と秋の二、三ヶ月の間だけ。その間を乗り切ってやれば俺達の勝ち。いいか、ここまで花粉症と戦ってきたみんななら絶対に出来る事だ。一緒に頑張ろう。





 さて、俺もそろそろペンを置いてティッシュを取ろうと思う。ここまで読んでくれて本当にありがとう。

 約半年後、またみんなと会う事になるかもしれない。その時はまた、俺の話に付き合ってくれ。

 それではまたいつか――――。




ここまで読んでいただきありがとうございました。そしてお疲れ様です。

久しぶりの短編でしたがいかがだったでしょうか?

ある日あまりにも花粉症が酷くて苦難していた時に、「いっそこれを小説のネタにしよう。そう考えればこの状況もラッキーだ」と半ば強引に前向き思考を展開して書き始めたのが今作です。

改めて見ると適当と言うか、投げやりに書いていると言うか……。

酷い出来になってしまったかもしれません(笑)

ですがきっと、花粉症を抱えている方々には頷いていただける内容だったのではないかと思います。

お話しの最後でも触れましたが、最近は今まで何ともなかった人が急に花粉症になってしまう事も本当に増えていますので、何ともないよと言う方もお気をつけて。

言わずもがな花粉症持ちの方々もお気をつけて。外出時も家に居る時もしっかりと対策を取っておきましょう。


それではこの辺りでペンを置きたいと思います。

実際にはキーボード打ちですけどね(笑)

また連載、もしくは次の短編でお会いしましょう。



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― 新着の感想 ―
[一言] 失礼ながら笑ってしまいました。 私の身内とか友人にも花粉症の人はいますが、ここまでひどくは無いので、花粉症の中でも相当酷いのでしょうね… 花粉に強い体質な自分を大事にしようと思いました。…
2013/04/09 19:57 退会済み
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