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第4章:決闘の手袋と、女たちの宣戦布告


「おーっほっほ! 見なさい、この白く舞い踊る祝福の雨を! 全国民が私の新しい恋を応援しているわ!」




 ルナリア様は、天から降る「白い物体」を浴びて、まるで舞台女優のようにクルクルと踊り続けていました。


 ですが、おかしい。


 足元に落ちた「紙吹雪」が、妙に重苦しい音を立てるのです。




 ――バサッ、ズシン。パシッ。




 紙にしては重く、花びらにしては硬い音が、静まり返った会場に響き渡ります。


 ルナリア様は、自分のドレスの裾に引っかかった「それ」を、不思議そうに摘み上げました。




「……あら? これ、紙じゃないわ。革……? それに、この刺繍……どこかの騎士団の紋章かしら」


 彼女が手にしたのは、真っ白な絹製の手袋。


 それも、指の付け根に「決闘を申し込む」という隠語が刺繍された、近衛騎士団長の私物でした。




「……ねぇ、アルヴィン。これ、落とし物かしら? 皆さん、こんなところで手袋を脱ぐなんて、マナーがなっていないわね」


 ルナリア様は、隣に立つ絶世の美男子(※覚醒したアルヴィン)に、首を傾げて同意を求めました。




 ですが、アルヴィンはそれどころではありませんでした。


 彼の足元には、すでにもう、数十枚、数百枚という「手袋」が山積みになっていたからです。




「……いえ、ルナリア様。これ、たぶん落とし物じゃありません」


 アルヴィンは、無自覚に溢れ出す強大な魔力で、無意識に飛んできた手袋を一つ、空中でキャッチしました。


「これ、全部……私に向けられた『決闘の申し込み(ラント・グローブ)』ですよ」




「……はぁ? 決闘? 誰が、誰に?」




 ルナリア様が呆然と呟いた瞬間。


 二階のバルコニーから、そして会場の隅々から、鋼のような冷徹な声が響き渡りました。




「決まっていますわ。その男――アルヴィン様を、貴女のような『ゴミ捨て場』から救い出すための決闘です」




 真っ先に現れたのは、隣国の第一王女、イザベラ様でした。


 彼女は、ルナリア様が投げ捨てたはずのアルヴィンの「枷かせ」の破片を、宝物のように指先で弄びながら、冷酷な笑みを浮かべて階段を下りてきます。




「アルヴィン様。貴女が彼を突き飛ばしたあの瞬間、彼との契約は失効しました。……さあ、次は誰が彼を所有するか、正当な『実力行使』で決めさせていただきましょう」




 イザベラ様の言葉を合図に、会場にいた有力な女性たちが次々と名乗りを上げました。


「騎士団長として、最強の剣を持つ私が彼を守るわ!」


「宮廷魔導師である私が、彼の魔力を管理すべきよ!」




 ルナリア様の足元に降っていたのは、祝福の雨などではありませんでした。


 それは、彼女が「無能」だと思って捨てたアルヴィンという名の『国宝』を、力ずくで奪い合おうとする女たちの、血生臭い宣戦布告の嵐だったのです。




「な、何よこれ……!? 私が捨てたのよ! 捨てる権利は私にあっても、拾う権利はあんたたちにはないわよ!」


 ルナリア様がヒステリックに叫びますが、女たちの視線は、すでに彼女を「風景の一部」としてしか見ていません。




 一方、当のアルヴィンは、山のような手袋を見て、どうしていいのか困っていた。




 最強の魔力に目覚めながら、思考回路だけは変わらないまま。


 この温度差こそが、ルナリア様をさらなる絶望へと叩き落とす、最強の毒薬となるのでした。

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