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第3章:白い祝福

 その夜、王城の大広間は、かつてないほどの熱気に包まれていました。


 シャンデリアの光が降り注ぐ中、着飾った貴族たちが集い、今か今かと主役の登場を待っています。




 主役――もちろん、自称・主役のルナリア王女は、バルコニーの鏡の前でうっとりと自分の姿を眺めていました。


「おーっほっほ! 見なさい、今日の私の輝きを。あの無能なアルヴィンが死んでくれたおかげで、ようやく私の美しさに泥を塗るゴミがいなくなったわ」


 彼女は、自分が突き飛ばして殺しかけた婚約者のことなど、1ミリも悔やんでいません。


 むしろ「厄介払いができて、今日から新しい恋ができる」と、スキップせんばかりの浮かれようです。




「さあ、合図をしたら例のブツを撒かせなさい。私の婚約破棄……いえ、新しい自由を祝う『白い祝福』をね!」




 そんな彼女の背後で、会場の空気が一変しました。


 ざわり、と波打つような感嘆の声。


 入り口の扉が開くと同時に、あまりにも強大な、しかし心地よい「魔力の奔流ほんりゅう」が会場を支配したのです。




「……な、何かしら、この高貴な気配は」


 ルナリア様が振り返ると、そこには、銀糸の髪をなびかせた一人の美男子が立っていました。


 一歩歩くごとに、周囲の令嬢たちが「あ、あぁ……」と胸を押さえて崩れ落ち、女騎士たちは直立不動で敬礼を捧げる。


 まさに、神が地上に降り立ったかのような神々しさ。




(な、なんてイケメンなの! アルヴィンとは月とスッポン……いえ、太陽と泥団子だわ!)


 ルナリア様は、目の前にいるのが自分の婚約者だとは夢にも思わず、その美貌に目を奪われました。


「ねぇ、貴方! どこの国の貴族? 私、ルナリア王女よ。今夜、ちょうど婚約者が死んでフリーになるの。貴方なら、私の隣に立たせてあげてもいいわよ!」




 最高にアホな誘い文句に対し、その美男子――アルヴィンは、困ったように眉を下げました。


「……ルナリア様。私です、アルヴィンですよ。昨日、突き飛ばされて死にかけた。……なんだか寝起きで、少し髪の色が変わってしまったみたいですが」




「……は?」


 ルナリア様の思考が停止しました。


 目の前の絶世の美男子が、あの「無能で地味なアルヴィン」?


 そんなはずがない。あいつはもっと暗くて、地味で、私のドレスの影に隠れているような奴だったはず。




「な、何言ってるのよ! 冗談も休み休み言いなさい! 貴方みたいな素敵な人が、あの無能な盾のはずがないわ!」


 彼女は、アルヴィンが「覚醒した」という事実を、そのプライドの高さゆえに拒絶しました。


「いいわ、アルヴィンを名乗る不届き者! ちょうどいいわ。本物のアルヴィン(※死んだと思っている)との婚約をここで破棄して、貴方を私の新しい奴隷……じゃなくて、婚約者にしてあげる!」




 ルナリア様は、会場の中央へ進み出ると、扇子を高く掲げました。


 それが、彼女が決めていた「祝福の合図」でした。




「皆の者! 聞きなさい! 無能なアルヴィンとの婚約は、今この瞬間をもって破棄されました! さあ、私の新しい門出を祝いなさい!!」




 その叫びと共に。


 会場の二階席から、ヒラヒラと「白い物体」が舞い落ちてきました。


 それは、まるで大輪の雪の華が、彼女を祝福しているかのような光景でした。




「おーっほっほ! 見なさい! 私のために、これほど多くの『白い紙吹雪』が……! みんな、私が無能を捨てたことを、こんなに喜んでくれているんだわ!!」




 ルナリア様は、降り注ぐ「白い物体」を両手で受け止め、くるくると華麗に踊り始めました。


 ですが、彼女は気づいていなかったのです。




 その「白い物体」が、紙でもなければ、花びらでもないことに。


 それが、ずしりと重い音を立てて床に落ち、冷徹な殺意を孕んだ「宣戦布告」の音を立てていることに。

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