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第2章:無自覚な再誕

 翌朝。


 王城の一室で目が覚めた私は、妙な違和感に首を傾げました。


「……あれ。体が、羽が生えたみたいに軽い」




 昨日、確かにデュラハンの大鎌で胸を叩き切られたはず。


 ルナリア様に背中を押され、死の淵へ突き飛ばされた感触も、はっきりと残っています。


 ですが、鏡の前に立った私は、自分の目を疑いました。




「……誰だ、このイケメン」




 鏡の中にいたのは、銀糸のように輝く髪と、深海のような蒼い瞳を持つ、神々しいまでの美男子でした。


 地味で凡庸だったはずの私の顔立ちが、内側から溢れ出す魔力によって、極限まで研ぎ澄まされていたのです。


 生まれつき嵌められていた魔力封印の枷かせは、跡形もなく消え去っていました。




「……あー、なるほど。死にかけて、むくみが取れたのか。人間、極限状態になると美形化するもんなんだなぁ」




 私は、自分の内側で暴れ狂う、一国を焼き尽くすほどの大魔力を「なんか寝起きで血行がいい」くらいに解釈し、のんきに首を鳴らしました。


 無自覚。これぞ「最強」に一番タチの悪いスパイスでございます。




 一方、その頃。


 王城の自室で、ルナリア王女はお気に入りの高級ハーブティーを啜すすっていました。




「ふん、アルヴィンのやつ。結局、魔物の餌になって死んだのかしら。まぁ、私のドレスが汚れずに済んだんだから、盾としての役目は果たしたわね」




 彼女の脳内では、自分の卑劣な行為はすでに「尊い犠牲」へと書き換えられていました。


 落語の強欲な大家(大家)も真っ青の、自分勝手な正当化。


「あんな無能、最初からいらなかったのよ。今日の夜会で、盛大に『死人に口なし』の婚約破棄を宣言してあげるわ。……あ、そうだわ。せっかくだから、みんなに私の勇気ある決断を祝わせましょう!」




 ルナリア様は、侍女たちに命じました。


「今日の夜会、私が合図をしたら、会場の皆に『白い何か』を撒かせるように手配なさい。花びらでも何でもいいわ。私の新しい門出を、真っ白に染め上げるのよ!」




 侍女たちは、青ざめた顔で顔を見合わせました。


 すでに城内では、隣国のイザベラ王女や、近衛騎士団長、宮廷魔導師といった「実力派の女性たち」が、血眼ちまなこになってアルヴィンの行方を探しているという噂が広まっていたからです。




 そう、ルナリア様が命じた「白い何か」の準備。


 それが、彼女のファンではなく、「獲物を狙う狩人たち」の手によって、全く別の意味を持つ「白い物体」へとすり替えられていることなど、彼女は露つゆほども疑っていなかったのでした。




「今夜が楽しみだわ。おーっほっほっほ!」




 王女の高笑いが、静まり返った廊下に虚しく響いていきました。



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