表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

第7話『炎と風呂と、湯気の事件』



「ダーリン! “お風呂”ってやつ、やってみたい!」


帰宅して早々、シルヴァが元気よく宣言した。

その瞳は期待と好奇心でギラギラしている。

嫌な予感しかしない。


「お風呂は“火”を使うけど、燃やすんじゃなくて――」

「お湯を沸かすのよね? 任せてダーリン、火なら得意よ!」


そう言って彼女は、指先に青白い炎をともす。

……まさかと思った瞬間、


ボンッ!


浴室のドアの向こうから、まるで竜の息吹のような爆音。

次の瞬間、湯気が廊下まで流れ出す。


「シルヴァ! 何してんだ!」

「わぁっ、見てダーリン! お湯、すっごい熱いの!」

「だから加減しろって言っただろ!」


慌てて水を足して温度を下げる俺。

しかしその背後から、タオルを抱えたシルヴァがひょこっと顔を出した。


「ダーリンも一緒に入るんでしょ?」

「入らねぇよ!」

「なんで? 一緒の方が楽しいじゃない♡」


にやりと笑うその顔がずるい。

肩から滑り落ちたタオルを、彼女は気づかないふりで直そうとする。

……いや、絶対気づいてる。


「ほらダーリン、湯加減見て?」

「いや、その格好で言うな!」

「んふふっ、顔真っ赤~♪ 人間ってお湯よりすぐ熱くなるのね」


完全に遊ばれてる。

でもその笑い声が、なぜか心地いい。


シルヴァは湯船につかり、気持ちよさそうに目を細めた。

「ねぇダーリン、あたし……こういう時間、好き。」

「こういう時間?」

「一緒に笑って、同じ湯気の中にいる時間。」


彼女の赤い瞳が、湯気の向こうでやさしく光る。

ドラゴンなのに、どこか人間らしくて。

俺はただ、頷くことしかできなかった。


「ダーリン?」

「……なんだよ。」

「次は“シャンプー”っての、やってみたいの♪」

「やめろ、それは泡の惨劇になる!」

「えぇ~! 泡パーティーしよっ♡」


その夜、浴室からは――

笑い声と、何かが弾ける音がずっと響いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ