第6話『ドラゴン、恋を学ぶ』
夜。
テレビから流れていたのは、恋愛ドラマの最終回だった。
《――好きよ。どんなあなたでも。》
《俺も……愛してる。》
主人公とヒロインが抱き合い、画面の中でキスをする。
ソファに座っていたシルヴァが、真剣な顔でそれを見つめていた。
「ダーリン……いまの、何?」
「えっ?」
「この“口をくっつける儀式”よ。人間の契約魔法?」
「ちがう! あれは……えっと、“キス”だよ。」
「キス?」
シルヴァは首をかしげ、俺の顔をじーっと覗き込む。
銀の髪が肩から滑り落ち、赤い瞳が近い。
近すぎる。
「ダーリン。あたしたちも、やってみる?」
「いやいやいや! いきなりそういう展開にはならないから!」
「でもダーリンとあたし、同居してるし、恋の修行も必要でしょ?」
修行って言うな。
しかも、頬を染めながら言うな。
理性が試されてるの俺だけなんだが。
「……ドラマってのは、物語だからさ。現実とは違うんだよ」
「ふぅん……じゃあ、ドラマの中だけの“魔法”なのね?」
そう言いながら、シルヴァは自分の唇にそっと指を当てた。
その仕草が、妙に艶っぽい。
やめろ、それは反則だ。
「ダーリン。もしあたしが、あの女優さんみたいにしたら――」
「したら?」
「……ダーリン、燃えちゃう?」
次の瞬間、
尻尾の先がポッと赤く光った。
「お、おい! 文字通り燃えるのはやめてくれ!」
「ふふっ、だってダーリンが焦げそうなんだもの♪」
頬を染め、無邪気に笑う彼女。
その笑顔は、火よりも暖かくて、少しだけ危険だった。
……そして、テレビから流れるエンディング曲を聞きながら思う。
“この日常、いつまで続くんだろう”と。
シルヴァの炎は、俺の部屋だけじゃなく――
心の奥まで、確かに灯っていた。
『シルヴァとキスかぁ…。』
(〃ω〃)




