第5話『嫉妬の尻尾、燃ゆる』
昼休み。
俺は職場の休憩スペースで、上司の佐伯さんと世間話をしていた。
少し年上の美人で、気配り上手。
同僚たちの憧れの的だ。
「直哉くん、この前の企画、すごく良かったわよ」
「い、いえ、そんな……。皆さんのサポートがあってこそです」
「ふふっ、そういうところが可愛いのよね」
笑顔が近い。
いや、近い。顔が。
ドキリとした瞬間――
バチンッ!
……背中に、静電気のような衝撃が走った。
「ん? 今なんか……」
「気のせいかしら?」
――嫌な予感。
その予感は、家に帰って確信に変わる。
ドアを開けた瞬間、部屋の空気がほんのり焦げていた。
そしてソファの上で腕を組み、頬をぷくっと膨らませた銀髪の美女。
「ダーリン。昼間、誰と笑ってたの?」
……見てたな、これ。
「え、えっと、上司の佐伯さんと仕事の話を――」
「“可愛い”って言われたでしょ?」
「な、なんでそれを!?」
「尻尾が勝手に反応したのよ!」
シルヴァのしっぽが、ぶんぶんと左右に振れている。
怒りの炎が、ほのかに尻尾の先からちらつく。
「ダーリンはあたしのもの! 人間の女なんかに渡さないんだからっ!」
「待て待て! 燃える! 本棚が燃えるって!」
慌てて水をかける俺。
びしょ濡れの二人。
……まるでコントだ。
しばらくして、シルヴァは静かに呟いた。
「ごめんねダーリン。あたし、ちょっと怖かったの。」
「怖かった?」
「うん……“好き”って気持ち、燃えちゃいそうで。」
その言葉に、思わず胸が熱くなる。
彼女の炎は、嫉妬でも破壊でもなく――
きっと、“恋の温度”なんだろう。
俺はタオルを手に取り、彼女の髪を優しく拭いた。
「大丈夫だよ、シルヴァ。俺は――」
「ダーリン、今“好き”って言いかけた?」
「……まだ言ってねぇ!」
「じゃあ今言って?」
「言わねぇ!!」
尻尾がまた、ぱたぱたと嬉しそうに揺れていた。
『シルヴァ、大好きだよ…。』




