第3話 初めての買い物
休日の朝。
ドラゴンの同居人ことシルヴァが、部屋の中で落ち着きなくソワソワしていた。
「ねぇ!ダーリン、ダーリン!」
「……今度は何だよ」
「お外、行きたい!人間の世界、見てみたいの!」
その目は子どものように輝いていた。
……いや、竜の瞳が本気を出すと光を反射するから、ちょっと眩しい。
「いいけど、服ちゃんと着ろよ」
「着てるよ?」
「ボタンが全部ズレてる。」
「……むぅ、ボタンって難しい文化ね。」
なんだかんだで、二人で外出することになった。
行き先は近くのショッピングモール。
目立たないように帽子を被せ、コートで鱗の名残を隠す。
……が、通行人の視線は止まらない。
そりゃそうだ。白銀の髪に紅い瞳、そしてモデル並みのプロポーション。
歩いてるだけで視線をさらう“異世界の美人”だ。
「ダーリン、あの人たち、こっち見てる!」
「気にするな、シルヴァ。君が派手すぎるだけだ。」
「派手ってなぁに?」
「……つまり、可愛いってことだ。」
「じゃあダーリン、見てる人、全員敵ね?」
「いや違う!なんでそうなる!」
彼女の尻尾(※感情が出ると見えるタイプ)が、
コートの中でパタパタと暴れ出す。危険信号だ。
「落ち着け、尻尾が出てる!炎が出たら買い物どころじゃないぞ!」
「わ、わかった!でもダーリン、わたし、誰かに奪われたくない!」
……このドラゴン、恋愛観まで原始的だ。
なんとか落ち着かせつつ、服屋へ入る。
シルヴァは並んだ服を見て目を輝かせた。
「ねぇダーリン!これ可愛い!」
「お、おお……(露出多いな)」
「これも!これも好き!」
「(どれも布が少ないんだよな……)」
気づけば試着室へ消えるシルヴァ。
「ダーリン、見てて!」と声がして、
カーテンが勢いよく開く。
そこに現れたのは、真っ赤なワンピース姿のシルヴァ。
肩が出て、胸元は――まあ、見事な開きっぷりだ。
「どう?似合う?」
「……人間界では、刺激が強すぎるかな。」
「刺激?ダーリン、わたし、刺激的なの?」
「ち、違う!そういう意味じゃ……!」
周囲の店員がくすくす笑っている。
完全に“公開羞恥プレイ”状態だ。
「ダーリン、顔赤い。照れてる?」
「もう帰ろう!買い物はまた今度!」
「え〜っ、楽しいのに!」
渋々モールを出る帰り道。
シルヴァは僕の腕に絡みついてきた。
> 「ねぇ、ダーリン。人間の世界って、すごくドキドキするね。」
「俺は心臓が止まりそうだったよ……」
「ふふっ、ダーリンの“鼓動”、竜でも聞こえるよ。」
そう言って、彼女は僕の胸に耳を当てた。
人ごみの中、無邪気に笑うその横顔は、
まるで――人間の女性そのものだった。
「ダーリン、ねぇダーリン!」
「……なんだよ、今度は」
「次は“夜の街”ってとこに行ってみたい!」
「……やめろ、それはまだ早い!」
そんなやりとりを繰り返しながら、
僕らの“人間修行”は、まだ始まったばかりだった。




