第21話『ドラゴン、未来を描く』
朝の光が差し込む。
昨夜の雨の名残が窓辺にきらめき、まるで世界が少しだけ洗われたようだった。
シルヴァはダイニングテーブルに肘をつきながら、ノートをじっと見つめている。
その表紙には、彼女が最近覚えたばかりの日本語でこう書かれていた。
『未来ノ設計図』
「ダーリン、ねぇ見て!」
彼女が得意げにノートを広げる。
そこには――
ドラゴンの巣みたいな家(屋根に角付き)、
ベランダから生える謎の木、
そして中央に描かれた“ふたりの笑顔”。
「……すげぇスケールの家だな」
「だって、“空飛ぶおうち”って憧れるでしょ?」
「いや、普通は飛ばねぇよ」
シルヴァの“未来設計図”は、まさにファンタジー全開。
でもその中には、小さな文字でこんな言葉が書かれていた。
> “ダーリンと、ずっと笑っていたい”
直哉は、その一文を見て少し胸が熱くなった。
「……お前さ、本気で未来を考えてんだな」
「もちろん! だって、愛を選んだんだもん」
「うん。でも、“ドラゴンとしての使命”ってやつもあるんだろ?」
シルヴァは少しだけ、笑みを和らげた。
「うん。ドラゴン族には、“世界の火を守る”って役目があるの」
「私がここにいる間も、あの火は弱くなってる。だから――いずれ戻らなきゃいけない」
「……そう、か」
沈黙。
だけど、その沈黙はどこか穏やかだった。
「でもねダーリン」
「ん?」
「私、もう怖くないの。だって、“帰る場所”ができたから」
シルヴァはそっとダーリンの手を握る。
「世界を守るドラゴンでも、あなたの隣にいる“ひとりの女の子”でもいい。
未来を選ぶのは、私だから」
その言葉に、直哉は思わず笑った。
「……お前、最初のころに比べてだいぶ成長したな」
「ふふん♪ だって、ダーリン教育のおかげだもん」
そう言って得意げに胸を張るシルヴァ。
その拍子に、例の“布の悲鳴”が再びリビングにこだまする。
「お、おい! ボタンが――!」
「えっ!? ちょ、また!?」
二人の慌てた声に、朝の日差しがやわらかく笑っていた。
そしてその笑いの裏で――
シルヴァの背中の紋章が、ほのかに金色の光を放つ。
それは、彼女が“ドラゴンとしての使命”と“人間としての愛”を
両方抱いて生きるという、新たな選択の証だった。




