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第17話『ドラゴン、夢を見る』



夜。

窓の外には満ちかけた月。

その淡い光が、静かな部屋の中に流れ込んでいた。


「ダーリン、ねぇ……今日は、寝る前に少し話をしよう?」

シルヴァはベッドの端に腰かけ、まるで“人間の恋人”のような口調でそう言った。

けれど、彼女の金色の瞳の奥には、どこか遠くを見るような影があった。


「どうした? なんだか元気ないな」

「……夢を見たの。変なの。知らない場所で、知らない誰かと――でも、胸が痛くなる夢だったの」


ダーリンは少し考えて、冗談めかして笑う。

「恋するドラゴンにも、夢ってあるんだな」

「あるわよっ。ちゃんと寝てる時に見るやつ! ……けど、あの夢だけは違ったの。まるで、記憶みたいにリアルで――」


彼女は少し俯きながら、言葉を選ぶように続ける。

「ねぇダーリン。私……昔、誰かに“愛してる”って言ったこと、あるのかな?」


部屋の空気がふっと変わった。

いつものように軽口で返そうとしたダーリンの言葉が、喉の奥で止まる。


「夢の中で、私は“誰か”に翼をあげてたの。その人のために、空を飛べなくなってもいいって思ってた――」

「……それは、すごくドラゴンらしくないな」

「そうなの。だから怖いの。もしあの夢が、記憶だったら……私、今の“私”じゃなくなる気がする」


その言葉には、いつものおちゃらけた調子がなかった。

静かな夜気の中、シルヴァの横顔だけが月に照らされて淡く輝いている。


ダーリンはそっと隣に座り、彼女の頭を軽く撫でた。

「大丈夫。たとえどんな記憶が戻っても、今の“お前”はここにいる」

「……ダーリン」

「それにさ――翼がなくても、歩いて隣にいればいいだろ」


その一言に、シルヴァの頬がほんのり赤く染まった。

彼女はくすぐったそうに笑いながら、目を閉じる。


「じゃあ……もう少し、夢を見ててもいい?」

「ああ。いい夢をな」


そして、シルヴァは再び眠りにつく。

その夢の中で――

彼女は“誰か”の背中を追いかけていた。

けれど、今度の夢の中で見た“その人の横顔”は、どこかダーリンに似ていた。




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