表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/28

第16話『ドラゴン、恋を語る夜』



夜。

静まり返った部屋の窓辺で、シルヴァは月を見上げていた。

デートの余韻がまだ胸の奥に残っていて、胸の鼓動がゆっくりと続いている。


「……ダーリン、起きてる?」


寝室の灯りの下で、直哉は湯呑みを手にしていた。

「うん。眠れなくてな」

「シルヴァも。同じ……」


彼女はそっと彼の隣に腰を下ろす。

銀の髪が月光を受けて、ふわりと光を放った。



---


「ねぇダーリン、ひとつ聞いてもいい?」

「ん?」

「“恋”って、なんなの?」


唐突な問い。

けれど、その声は真剣そのものだった。

直哉は少し考え、言葉を選ぶようにゆっくり答えた。


「……恋は、誰かを想う気持ち、かな。

 相手のことを考えると、笑顔になったり、不安になったり……

 でも、会いたくてたまらなくなるんだ」


シルヴァはしばらく黙っていた。

そして小さく頷く。


「ドラゴンの恋はね、“魂を分ける契約”なの。

 命を半分、相手にあげるんだよ」


直哉は思わず息をのむ。

「命を……?」

「うん。ドラゴンは長生きだけど、恋をすると寿命が短くなる。

 でも、それでも“この命でいい”って思える相手に出会うの」


静かな言葉。

それは人間の比ではない、真っ直ぐすぎる愛の形だった。


「ダーリンは?」

シルヴァが顔を寄せる。

「人間の恋は、どうなの?」


直哉は少し笑って、目を伏せた。

「人間の恋は……不器用だよ。

 相手を信じたいけど怖くて、でも一緒にいたい。

 傷ついても、離れられないんだ」


シルヴァの赤い瞳がゆっくりと細められる。

「それって……痛いね」

「そうだな。でも、それが“あたたかい”んだ」



---


沈黙。

二人の間を夜風が通り抜ける。


シルヴァがそっと直哉の肩に頭を乗せた。

「ねぇダーリン……今日ね、街で手をつないだ時、すごくドキドキしたの」

「うん」

「そのドキドキ、今もまだ続いてる。

 これって、恋? それとも……もっと別のもの?」


直哉は答えられず、ただ隣に座っていた。

言葉の代わりに、彼女の手をそっと握る。


「……たぶん、それでいいんじゃないかな」

「そっか」


赤い瞳が、少しだけ潤む。

「ダーリンの手、あったかいね」

「お前の手もな」


やがて、シルヴァの尾が静かに直哉の腕に絡みつく。

まるで「離れたくない」と言うように。


月明かりが、二人を優しく照らしていた。



---



その夜、彼女は夢を見た。

――炎の中で、誰かの手を握っていた夢を。

そこにいたのは、確かに“ダーリン”だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ