第11話 「ドラゴン、服を買う!」
休日の朝。
街に出かけようと支度していた直哉の背中から、
元気な声が飛んできた。
「ねぇダーリン! この服、もう焦げてるよ~?」
シルヴァが持ち上げたのは、見事に袖が炭化したシャツ。
どうやら“スープ事件”の後遺症らしい。
「……だから言ったろ、火力調整覚えろって」
「ふふん! じゃあ今日は、服を買いに行こう!」
そうして始まった、“炎のショッピングデート”。
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ショッピングモール。
初めての試着室に、シルヴァは目を輝かせていた。
「ダーリン! このカーテンの奥で変身するんだね!?」
「まぁ、変身……みたいなもんだな」
「なるほどっ! ドラゴンでもできるね!」
──その数分後。
試着室の中から、
「ちょ、これ…狭い!」「んん~っ!?」という声とともに、
ボタンの悲鳴が響いた。
パチンッ! パチンパチンパチンッ!
「シルヴァぁぁ!? 何個外した!?」
「外したんじゃないの! 飛んでったのっ!!」
──鏡越しに見える彼女は、
銀髪を乱しながら、わずかに頬を染めて立っていた。
「ダーリン……この服、ちょっと、胸のあたりが……苦しいの」
「……知ってる。布が泣いてる」
その瞬間、通りかかった女性店員が真っ赤になって逃げていった。
(※このモールでは、以後“竜災警報”が一時発令されたらしい。)
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なんとか無事(?)に買い物を終え、
カフェで一息つく二人。
「でもね、ダーリン」
「ん?」
「服を着ても、ダーリンの前だと……脱ぎたくなっちゃう♡」
「おいこらドラゴン! 公共の場!!」
笑いながら頭を小突く直哉。
シルヴァは楽しそうに尾を揺らしながら、
カップに入ったココアをひと口。
「うん、人間の服って不思議。
あったかくて、優しくて……ちょっと、恋の味がする」
その呟きに、直哉は少しだけ頬を赤らめた。
---囁くように…「綺麗だよシルヴァ…。」




