第10話 「ダーリン、風邪をひく」
朝。
いつもより少し静かな部屋。
布団の中で、直哉はぐったりと寝込んでいた。
「……さみぃ……喉痛ぇ……」
昨日の小雨の中でシルヴァを探し回ったせいだろう。
完全に風邪をひいた。
そんな彼の枕元に、銀髪の影がしゃがみこんでいる。
「ダーリン、大丈夫? 人間ってすぐ壊れるんだね」
「壊れてねぇよ……ちょっと熱あるだけだ」
「じゃあ、直すね!」
──嫌な予感。
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数分後。
台所では、ドラゴンの看病第一弾が始まっていた。
「えーっと……人間は、スープを飲むと治るって言ってたよね!」
「……おい、それ、どうやって温める気だ?」
「もちろん、“竜炎”で♡」
──ボウッッ!
数秒後、鍋は跡形もなく蒸発した。
床は軽く焦げ、空気はポトフ風味の炭の香り。
「……ダーリン、焦げ味って、流行り?」
「お前、流行りを燃やすな……!」
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第二弾、「冷やす」作戦。
「熱を下げるには、冷たいものでしょ?」
そう言って、氷袋代わりに
なぜか冷凍庫ごと引っ張り出してくるシルヴァ。
「ダーリン、この箱、涼しいね!」
「……頼むから中に入るな! お前が凍る!」
「えへへ、ちょっとだけ♡」
――案の定、数分後、
部屋には“くしゃみするドラゴン”がいた。(笑)
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夕方。
直哉がうつらうつらしていると、
シルヴァがそっと隣に寝転がった。
「ダーリン……まだ熱い?」
「ちょっとな……」
「じゃあ、あたしの熱、分けてあげるね」
そう言って、彼女は直哉の手を取る。
掌からじんわりとした温もりが伝わり、
その体温が、不思議と心地よく感じられた。
「……なんか、治りそうだ」
「でしょ? だって、あたしの炎は“愛の炎”だから♡」
頬を染めて笑うその顔に、
直哉は少しだけ赤面しながら、つぶやいた。
「……燃えすぎんなよ」
「うん♡ ダーリン限定でね」




