花あかりの町
掲載日:2025/10/28
わたしはパン屋を営んでいる。毎日毎日人だかりができていた。パンの焼けたいい匂いとお客さんの笑顔。それがわたしの生きる糧になっていた。最近はドーナツを作りはじめた。たくさんの人達が買ってくれて助かっている。店じまいにし、外に出ると桜並木がわたしを圧倒した。店は古びており年季が入っていた。そんな店を照らすようにそれはあった。家に帰ろうと路地をたどる。夜の商店街は美しく儚かった。満開の桜並木に夢中になる。桜の木の下でお花見をしているお爺さんがいる。心配そうにわたしは
「あの、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だよ」
とゆっくりとしわがれた声で言う。
「何をしているんですか? もう真っ暗ですけど」
わたしはハラハラしながら尋ねると
「お花見じゃよ。わたしの家には幽霊がいるから一緒に花見をしているんじゃよ」
ボケているのかこの爺さんは……。信じられない。幽霊なんて。だいたい夜にやる時点でどうなんだ。
「わかりました。頑張ってくださいね」
どこか明るい世界に夢中になった。すると、意識が遠くなる。幽霊がわたしに取り憑いてきたのだ。
「これこれ、やめなさい」
お爺さんが祓ってくれた――




