「自己紹介タイム ― 罪のオープニング」
まばゆい光に包まれた天界アリーナ中央。
六つの光の台座が円環状に並び、その中央に──司会進行役・断罪神官ミカエルが立っていた。
頭上のスクリーンには、煌びやかなホログラム文字が浮かぶ。
《#自己紹介タイム》《#罪のオープニング》《#地獄より眩しい天界ショー》
観客席には、あらゆる存在が詰めかけていた。
光の羽を揺らす天使、鎖を引きずる幽霊、かつての貴族霊、そして「配信で観てる前世の亡霊たち」。
みんなテンションが高すぎる。
「推しの令嬢、来たぁぁ!!」
「#断罪フェスは文化」「#罪を語る美学」
ステージの上で、ミカエルがラッパ型マイクをくるくると回す。
神官服に見える衣装は、よく見ればアイドルMCのように煌びやか。
背後では天界ドローンが浮遊し、六人の“罪の波動”をスキャンしながら、対応するBGMをミックス再生していた。
「──Ladies and Gentle–Angels!!」
ミカエルの声が天界スピーカーを通じて響き渡る。
「ここからは自己紹介タイム!
自らの罪を、己の美学でプレゼンしてもらいましょう〜〜!!」
光のステージが一段せり上がる。
それぞれの台座に、六人の令嬢が立ち並ぶ。
背中に罪の象徴のオーラがゆらめいた。
金、紫、青白、銀、金粉、赤黒──。
ミカエル:「では早速! トップバッターはこの方ッ!!」
彼のラッパマイクが、華やかに回転しながらクラリッサの前で止まった。
観客の歓声が爆発する。
BGM:「Glory of Arrogance」
天界は今日も、地獄より騒がしい。
そして──断罪ショーが、幕を開けた。
1. 傲慢 ― クラリッサ・ロート
(光:金色。ファンファーレとバロック調ストリングスが重なる)
天界アリーナに、荘厳でありながら華やかな旋律が響く。
まるで王宮の舞踏会が空中に再現されたかのよう。
ミカエルがラッパマイクを掲げ、金の羽を広げて叫んだ。
「まずは! 美と誇りの権化、傲慢の女王――クラリッサ・ロート!!」
照明が一点集中。
金糸のドレスが反射し、会場がまばゆく輝く。
クラリッサは優雅に裾をつまみ、扇子をパチンと鳴らして一歩前へ。
「王太子を振りましたが、それが何かしら?」
「むしろ見る目のなかった彼が悪いのでは?」
その笑みは、完璧な角度で作られた“勝者の笑顔”。
一瞬の沈黙──そして観客が爆発した。
「うぉぉ〜!!」「出たー!!」「傲慢ポイント+10!!」
ホログラムコメントが次々と流れる。
『#正論で殴る令嬢』
『#ロート家の風格』
『#反省しない優雅さ100点』
ミカエルは全力でマイクを振り上げた。
「開幕から清々しいまでの傲慢っぷり〜〜!!
皆さま、これが“断罪の金色スタンダード”です!!」
クラリッサは軽く一礼し、観客席にウィンク。
その一瞬で、天界のカメラが三百六十度からフラッシュを放つ。
まさに──“断罪の女王、堂々の入場”。
2. 色欲 ― ミレーユ・ラファイエット
(光:紫。艶やかなジャズとハープのリズムが重なり、空気が一気に香り立つ)
次の瞬間、天界アリーナの照明が淡い紫に染まり、
薔薇の花びらが風とともに舞い落ちる。
香水のような甘い香りが漂い、観客がざわめいた。
ミカエルが片手でマイクをくるくると回し、
微笑を浮かべながら紹介を始める。
「続いては――愛に生き、恋に堕ちる。
色欲の貴婦人、ミレーユ・ラファイエット!!」
照明が一点、ミレーユを照らす。
彼女はしなやかに腰をひねり、ワイングラスを掲げる。
液面が光を受け、ゆらりと波打った。
「罪? ええ、恋をしたことですわ♡」
その声は、囁きにも似た甘さ。
一瞬で会場の空気を支配する。
男性天使席が一斉に爆発。
「ぎゃぁぁぁーー!!!」
「尊いッ!!」
「告白された気がする!!」
ホログラムコメントが滝のように流れる。
『#恋が罪になる女』
『#今世紀最高の色欲』
『#ワインで落とす系貴婦人』
ミカエルは呆れたように額を押さえながらも、笑顔を隠せない。
「愛で断罪を超える気満々ですねぇ〜!!」
ミレーユは軽くグラスを傾け、
紫の光に溶けるように微笑んだ。
「罪の味も、悪くありませんのよ……♡」
観客が再び悲鳴のような歓声を上げ、
アリーナ全体が“陶酔の紫”に包まれた。
3. 憤怒 ― ヴァレンティナ・ドミトリエヴナ
(光:青白。マーチと低音ドラムの響きが、空気をぴんと張りつめさせる)
天界アリーナの照明がすっと落ち、
代わりに冷たい稲妻のような光がヴァレンティナの背後で閃いた。
風が静かに唸り、観客たちのざわめきが凍りつく。
ミカエルがラッパ型マイクを掲げ、
まるで戦場の宣告のように高らかに叫ぶ。
「お次は――怒りの女神、戦場の咆哮!
ヴァレンティナ・ドミトリエヴナ!!」
青白い光が走り、彼女のシルエットを浮かび上がらせる。
ヴァレンティナはゆっくりと腕を組み、
凛とした瞳で前を見据えた。
静かに、しかし確かに空気を震わせる声で言う。
「罪とは怒り。
だが――怒るのは、弱き者の特権だ。」
その一言で、観客席がざわめいた。
口を開きかけた者も、思わず息を飲む。
「おおぉ……」
「深い……」
「でも怖い!!」
ミカエルが思わず半歩下がり、
マイクを抱えながらツッコミ気味に笑う。
「う〜〜ん、文学的!!
天界の哲学部きたぁぁーー!!」
コメントホログラムが一斉に流れ出す。
『#怒る女は美しい』
『#論文タイトルみたい』
『#聖女モード入った』
ヴァレンティナはそれらを見上げるでもなく、
ただ静かに吐息を洩らした。
「……怒りとは、まだ終わらぬ祈り。
それを、ここで終わらせましょう。」
青白い稲妻が再び閃き、
観客席の天使たちが思わず拍手を送る。
アリーナの空気が、まるで雷鳴の前のように震えた。
4. 嫉妬 ― リュシー・フェルネ
(光:銀。ピアノソロが淡く流れ、どこか懐かしい少女の囁きボイスが響く)
アリーナの照明がゆっくりと淡い銀色に変わり、
音も、観客の息遣いも、すべてが柔らかくなる。
ミカエルがマイクを胸に抱え、微笑みながら紹介する。
「続いては――繊細なる嫉妬の精。
リュシー・フェルネ!」
観客の視線が一斉にステージへ向く。
そこには、小さな花のような少女が立っていた。
リュシーは両手を胸の前で組み、
もじもじと一歩前に出る。
視線を伏せたまま、かすかな声で言葉を紡ぐ。
「……嫉妬しました。たくさん。
でも、それって――人間っぽくない?」
その瞬間、アリーナ全体がしんと静まり返る。
誰もが、彼女の声の余韻に飲み込まれた。
……そして次の瞬間、
堰を切ったように歓声が上がった。
「かわいいっっっ!!!」
「尊い〜〜!!!」
「天界が浄化された!!」
ホログラムコメントが滝のように流れる。
『#尊い嫉妬』
『#人間味の天使』
『#推せる罪』
ミカエルがマイクを高々と掲げ、
半ば感極まったように叫ぶ。
「きたぁー! 純度100%の告白!!
これはもはや――清らかな嫉妬!!」
リュシーは頬を赤らめ、
手をぶんぶんと振って否定する。
「ち、違いますっ! 清らかなんかじゃ……!」
しかし、その必死さすら愛おしく映り、
観客はさらに盛り上がる。
「清らか〜!!」
「かわいすぎて罪!!」
「断罪どころか天界が恋した!」
ピアノの音が静かに消えていく。
リュシーはそっと微笑んで一礼。
「……嫉妬も、ちゃんと愛になるんだね。」
柔らかな銀の光が、
まるで彼女の涙を包むように揺れていた。
5. 虚飾 ― マルガレーテ・フォン・グランツ
(光:金粉が舞い、ポップソングに混じって“ピコーン♪”とSNS通知音がリズミカルに鳴る)
アリーナの中央、ステージ上空にホログラムの「#虚飾 #映え命」が煌めく。
観客の顔にも金のエフェクトが反射し、まるでライブ会場のような熱狂だ。
ミカエルが眩しそうに片手で額をかざし、
満面の笑みでマイク(ラッパ型)を掲げる。
「さぁ来たーっ!! 炎上上等ッ!
虚飾の貴族インフルエンサー!
マルガレーテ・フォン・グランツ!!」
金のスポットライトが一直線に走る。
ステージ中央に現れたのは、きらびやかなドレスに身を包んだマルガレーテ。
彼女は片足を軽く前に出し、完璧な角度でポーズを決めた。
ぱしん、と扇子を閉じ――
次の瞬間、スマホ型の魔導端末を掲げる。
「断罪されることすら演出ですのよ。
視聴率が命、フォロワーが正義!」
観客席が一気に爆発。
ライトスティック(聖光仕様)が一斉に振られ、金色の波が広がる。
「出たぁぁーー!!!」
「現代社会の亡霊ぃぃ!!」
「その開き直りが眩しすぎる!!」
ホログラムコメントが滝のように流れる。
『#断罪マーケティング』
『#グランツ商法』
『#フォロワーは裏切らない』
『#燃やしてナンボ』
ミカエルはテンション最高潮。
まるでアイドルのライブMCのように声を張り上げる。
「炎上の女神きたぁーー!!
いいぞ燃えろ燃えろ燃えろーっ!!」
マルガレーテはウィンクしながら指ハートを作り、
ゆるやかに金粉を纏ってターン。
「あら、燃えるなら――
もっと綺麗に、見せて差し上げますわ♡」
再び“ピコーン♪ピコーン♪”と通知音が鳴り、
画面上のフォロワー数が秒単位で増加していく。
観客:「通知止まらん!!」「もう断罪どころかバズってる!!」
ミカエル:「この虚飾、もはや芸術!!
フォロワーの力で天界トレンド一位突破ぁ!!」
マルガレーテは余裕の笑みを浮かべ、
最後に軽くお辞儀して呟いた。
「真実? それより――“見せ方”が大事ですわ。」
金粉がきらきらと舞い、
天界アリーナがまるでSNSの光に包まれたかのように輝いていた。
6. 知識 ― エリシア・ヴェルクナー
(光:赤黒のグリッドが走る。電子音が低く鳴り、ページがめくれる音が重なる)
天界アリーナの空間が、一瞬でデータの海へと変わる。
無数の書物と魔導演算式がホログラムとなって舞い上がり、
中央に立つ彼女――エリシア・ヴェルクナーを照らす。
ミカエルは少し背筋を伸ばし、
まるで神聖な研究発表会の司会者のようなトーンで紹介した。
「最後を飾るは、理と秩序の申し子。
知識の断罪者――エリシア・ヴェルクナー!!」
拍手は控えめ。
代わりに、空中を飛ぶ“データの羽根”が静かに光を散らす。
エリシアは白衣風のドレスを整え、
指でメガネを軽く押し上げると、無機質な声で言葉を紡いだ。
「罪とは情報。
整理すれば清らか。
再定義すれば――赦し。」
短い。だが、異様な静寂が走る。
天界の観客たちは数秒、言葉を失い――
やがて、ぽつぽつと拍手が広がっていく。
「……難しい! でも賢そう!!」
「理屈が勝ってる!!」
「IQ高すぎて断罪されたい!!」
コメント欄には一気にタグが溢れる。
『#哲学系ヒロイン』
『#情報倫理の聖女』
『#知識こそ救済』
『#この人だけ別アニメ』
ミカエルはマイクを両手で抱えながら、
目をぱちぱちと瞬かせた。
「う〜〜ん! 頭が良すぎて、司会の理解を超えましたぁぁ!!
でも……なんかカッコいいのでOKですぅ!!」
観客の笑いと拍手が入り混じる中、
エリシアはわずかに口角を上げた。
「“わからない”――それもまた、学びの第一歩です。」
その瞬間、彼女の背後に浮かぶ本の群れが一斉に開き、
ページの光がアリーナ全体を包み込む。
ステージ上の六人が光の円環に並び、
#罪のオープニング のロゴが再び輝いた。
ミカエル:「以上ッ!! 六罪ヒロイン、全員出揃いましたぁぁーー!!
拍手っ、そして反省っ!!」
観客:「うぉぉぉぉぉ!!!」「反省はしないけど拍手はする!!」
電子音がフェードアウトし、
アリーナの照明がゆるやかに落ちていく。
――そして次の瞬間、
巨大ルーレットが再び回り始めた。
締めトーク ―「Six Sins Parade」
(BGM:軽快なブラスと電子ビートが混じる“Six Sins Parade”。
ライトが六人の足元でゆるやかに回転し、アリーナが金色に染まる。)
ミカエル:「さぁ〜〜、これで全員の“罪状自己PR”が終わりましたぁ!
いやぁ、どの罪も個性豊かで、反省のかけらもなくて最高ですねぇ〜!!」
観客:「フゥーーー!!」
(天界ドローンがぐるぐると旋回しながら、ホログラムコメントを投影。)
『#反省ゼロで草』『#罪がキラキラしてる』『#今年の断罪メンバー強すぎ』
クラリッサは扇子をパチンと鳴らし、ため息をついた。
クラリッサ:「……なんだか、学園の自己紹介より地獄ですわね。」
ミレーユはグラスを軽く傾けて微笑む。
ミレーユ:「いえ、天界ですよ。地獄より眩しいだけで。」
リュシーは袖口をいじりながら、かすかに呟く。
リュシー:「……でも、みんな楽しそう。」
ヴァレンティナは腕を組み、冷静にアリーナを見渡した。
ヴァレンティナ:「断罪とは、結局、見世物だ。」
マルガレーテはスマホ型魔導端末でセルフィーを撮りながら笑う。
マルガレーテ:「それをわかってて立ってるあたり、プロ意識高いですわね?」
エリシアがため息混じりにデータパッドを閉じる。
エリシア:「分析結果:全員、反省の気配ゼロ。」
ミカエルは全員を見渡し、満面の笑みで天へ指を突き上げた。
ミカエル:「最高〜〜! それでこそ断罪フェス!!」
観客:「フゥーーー!!」
光の紙吹雪が舞い上がり、
六人の“罪”がそれぞれの光で輝く。
ナレーション:「罪を誇り、笑いに変える――
これが、《断罪グラフェス》。
神々の反省会、ここに開幕。」
BGMが高らかに鳴り響き、
タイトルロゴ《Six Sins Parade》が画面を埋め尽くす。




