表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢グラフェス ―断罪されたけど元気ですわ!―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/67

【6】再会編 ― 「カフェ・オブ・シンズ」

舞台:《Café of Sins》


 朝の光が、静かにカフェの看板を照らしていた。

 《Café of Sins》――“罪の味を少しだけ甘く”。

 その文字は、風に揺れる花の蔓に包まれて、どこか優しく微笑んでいるようだった。


 店の扉が、チリンと小さく鳴る。

 最初に入ってきたのは、白い外套を羽織ったクラリッサ。

 その手には、紅茶の葉が詰まった古い缶。

クラリッサ:「……ただいま。ええ、ようやく戻ってこられましたわ。」

 彼女はカウンターの奥に入り、やわらかくポットを温める。

 蒸気が立ちのぼり、かすかに花の香りが漂った。


 次に扉が開き、ヴァレンティナが笑顔で顔を出す。

 腰には剣の代わりに、木製のスプーン。

ヴァレンティナ:「やっぱり、ここが一番落ち着くな。

 戦場より、厨房のほうが性に合ってる。」

 彼女はエプロンを首にかけ、焼きたてのパンを並べ始める。

 トーストの香ばしい匂いが、朝の空気と混ざった。


 最後に、少し遅れてエリシアが入ってくる。

 背中には革の鞄。中には、彼女が修復した“書かれなかった物語”のノート。

エリシア:「まったく……二人とも、勝手に開店準備しないでください。」

クラリッサ:「あなたが来る頃には、ちょうど紅茶が淹れ頃なんですもの。」

ヴァレンティナ:「いいじゃないか。三人そろってこその《罪の味》だろ?」

 エリシアはため息をつきながらも、微笑んだ。

 その目は、どこか懐かしさに濡れていた。


 カウンターの隅で、古時計が時を刻み始める。

ミカエル(古時計):「……ログ開始。

 ――“無冠の王たち”、再集結。」

 穏やかな電子音に、店内の自動給仕端末が応じる。

 淡い光を灯しながら、声を響かせる。

AIルーチェ:「おはようございます。

 本日のBGM:《贖罪のカプチーノ》――おすすめは“微笑みのブレンドティー”です。」


 三人は、顔を見合わせて笑う。

ヴァレンティナ:「贖罪のカプチーノ、ね。……どんな味だ?」

クラリッサ:「苦味のあとに、ほんの少しだけ甘さが来るんですの。」

エリシア:「まるで、私たちみたいですね。」

 クラリッサがカップを掲げ、朝日を受けた紅茶の表面が煌めく。

 その反射はまるで――かつて空にあった王冠の光のよう。


 その時、カフェの扉が再び鳴った。

 チリン……。

 光の中に、ひとりの影が立つ。

 幼い少女、あるいは旅の戦士――

 あるいは、かつて断罪された誰かの“記憶”。

クラリッサ:「おはようございます。

 今日のおすすめは、“贖いのタルト”。

 苦味のあとに、きっと笑顔が来ますわ。」

 少女が小さく頷く。

 クラリッサは微笑み、紅茶を注ぐ。

 その湯気が、朝の光にとけて――世界をやさしく包んだ。


ナレーション

「断罪の夜が終わり、贖罪の朝が来る。

 完全な正義も、完璧な赦しもない。

 それでも人は――笑って、生きようとする。」


ラストショット:

カフェの屋根越しに、青空が広がる。

砕けた王冠の欠片が光の粒となって流れ、

その下で、三人の笑い声が響く。

《Café of Sins》

――罪の味は、今日も少しだけ甘い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ