【6】再会編 ― 「カフェ・オブ・シンズ」
舞台:《Café of Sins》
朝の光が、静かにカフェの看板を照らしていた。
《Café of Sins》――“罪の味を少しだけ甘く”。
その文字は、風に揺れる花の蔓に包まれて、どこか優しく微笑んでいるようだった。
店の扉が、チリンと小さく鳴る。
最初に入ってきたのは、白い外套を羽織ったクラリッサ。
その手には、紅茶の葉が詰まった古い缶。
クラリッサ:「……ただいま。ええ、ようやく戻ってこられましたわ。」
彼女はカウンターの奥に入り、やわらかくポットを温める。
蒸気が立ちのぼり、かすかに花の香りが漂った。
次に扉が開き、ヴァレンティナが笑顔で顔を出す。
腰には剣の代わりに、木製のスプーン。
ヴァレンティナ:「やっぱり、ここが一番落ち着くな。
戦場より、厨房のほうが性に合ってる。」
彼女はエプロンを首にかけ、焼きたてのパンを並べ始める。
トーストの香ばしい匂いが、朝の空気と混ざった。
最後に、少し遅れてエリシアが入ってくる。
背中には革の鞄。中には、彼女が修復した“書かれなかった物語”のノート。
エリシア:「まったく……二人とも、勝手に開店準備しないでください。」
クラリッサ:「あなたが来る頃には、ちょうど紅茶が淹れ頃なんですもの。」
ヴァレンティナ:「いいじゃないか。三人そろってこその《罪の味》だろ?」
エリシアはため息をつきながらも、微笑んだ。
その目は、どこか懐かしさに濡れていた。
カウンターの隅で、古時計が時を刻み始める。
ミカエル(古時計):「……ログ開始。
――“無冠の王たち”、再集結。」
穏やかな電子音に、店内の自動給仕端末が応じる。
淡い光を灯しながら、声を響かせる。
AIルーチェ:「おはようございます。
本日のBGM:《贖罪のカプチーノ》――おすすめは“微笑みのブレンドティー”です。」
三人は、顔を見合わせて笑う。
ヴァレンティナ:「贖罪のカプチーノ、ね。……どんな味だ?」
クラリッサ:「苦味のあとに、ほんの少しだけ甘さが来るんですの。」
エリシア:「まるで、私たちみたいですね。」
クラリッサがカップを掲げ、朝日を受けた紅茶の表面が煌めく。
その反射はまるで――かつて空にあった王冠の光のよう。
その時、カフェの扉が再び鳴った。
チリン……。
光の中に、ひとりの影が立つ。
幼い少女、あるいは旅の戦士――
あるいは、かつて断罪された誰かの“記憶”。
クラリッサ:「おはようございます。
今日のおすすめは、“贖いのタルト”。
苦味のあとに、きっと笑顔が来ますわ。」
少女が小さく頷く。
クラリッサは微笑み、紅茶を注ぐ。
その湯気が、朝の光にとけて――世界をやさしく包んだ。
ナレーション
「断罪の夜が終わり、贖罪の朝が来る。
完全な正義も、完璧な赦しもない。
それでも人は――笑って、生きようとする。」
ラストショット:
カフェの屋根越しに、青空が広がる。
砕けた王冠の欠片が光の粒となって流れ、
その下で、三人の笑い声が響く。
《Café of Sins》
――罪の味は、今日も少しだけ甘い。




