【3】エリシア編 ― 「書かれなかった物語」
舞台:空に浮かぶ廃図書館《アルカディア書庫》
静寂。
風が吹けば、崩れた書架の残骸がかすかに鳴る。
その中心で、白衣の少女――エリシアは、埃をかぶった机の前に座っていた。
机の上には、断罪戦の記録。
罪と名のついた戦いの記録は、焼け焦げ、涙の跡に滲んでいる。
エリシアは黙ってそれを拾い上げ、指で触れた。
紙の裂け目に、金色のインクを流し込むように、修復を始める。
AIの残響(残留データの声):「……罪の記録を、消すのですか?」
エリシアは微笑む。
「いいえ。物語に変えるの。」
AI:「罪を物語に?」
エリシア:「だって、誰かが読んで、笑ってくれるなら……それはもう“赦し”だから。」
やがて、彼女は破れた聖典の表紙を取り外し、
代わりに柔らかな革の表紙を縫い合わせる。
タイトルは――『未完の物語』。
最後のページに、エリシアは静かに書き込む。
“そして彼女たちは、罪を笑いに変えた。”
インクが乾く頃、空の図書館に小さな風が吹いた。
エリシアは羽ペンを立ち上がって見つめ、
そっと指を離す。
羽ペンはふわりと宙に浮かび、
光の軌跡を描きながら、《Café of Sins》の方角へと飛んでいった。
エリシア:「……行って。続きを書くのは、あの子たちの番だから。」
(彼女の背後で、崩れた書庫が静かに光を灯し、
空の上に、一瞬だけ“虹色の文字列”が浮かぶ――)
「罪ではなく、選択として。」
エリシアは微笑み、
新しい物語の始まりを見上げた。




