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悪役令嬢グラフェス ―断罪されたけど元気ですわ!―  作者: 南蛇井


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夜明け ― “無冠の贖罪者たち”

 夜が明けた。

 空はまだ白み始めたばかりで、雲の切れ間から、淡い光がこぼれている。

 《Café of Sins》の看板が、風に揺れながら小さく鳴った。

 店の前に、三つの影が立っている。

 ひとりはまだ幼い少女。ひとりは旅の途中らしい青年。もうひとりは、傷跡の残る老戦士。

 どこか懐かしい――断罪フェスで姿を見せた“かつての罪人たち”の記憶が、淡い幻影となって形を取っている。


 カウンターの奥で、クラリッサがそっとドアを開ける。

 朝の冷たい空気が、カフェの中に流れ込む。

クラリッサ:「おはようございます。……ようこそ、《Café of Sins》へ。」

 微笑みながら、白いエプロンの裾を整える。

 その横でヴァレンティナがパンケーキの生地を流し込み、エリシアはすでにカウンターの上に三つのカップを並べていた。


クラリッサ:「今日のおすすめは、“苦味のあとに甘さが来る”特製タルトですわ。

 罪を思い出すには、ちょうどいい味ですの。」

 少女が小さくうなずき、青年が微笑み、老戦士は帽子を取って軽く会釈する。

 どの顔にも、懺悔ではなく、静かな“受容”が宿っていた。

ヴァレンティナ:「……いい朝だ。焼きたては正義、ってやつだな。」

エリシア:「正義じゃなくて、糖分ですけどね。」

 三人の笑い声が、朝の空気の中に溶けていく。


 外では、昨日まで残っていた“王冠の残光”が完全に消えつつあった。

 代わりに、柔らかな陽光が世界を満たしていく。

 断罪も赦しもない。ただ、生きるための小さな灯りだけがそこにある。


 クラリッサはふと、カウンター越しに微笑んだ。

クラリッサ:「冠はもういりませんわ。

 だって――このカフェに来る皆さまが、“無冠の王”ですもの。」

 窓の外、朝日が差し込み、コーヒーの表面が金色に輝いた。

 まるで、その光自体が新しい“王冠”であるかのように。


ナレーション(締め)

「断罪の終わりは、贖罪の始まり。

贖罪の果てには、ただ一つ――“生きる”という選択だけが残る。

無冠の贖罪者たちは、今日も笑う。

罪の香りと、朝の光の中で。」


エンドカード

《Final Scene:The Café Opens Again》

「罪の味は、今日も少しだけ甘い。」

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