表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢グラフェス ―断罪されたけど元気ですわ!―  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/67

再起動するAI ― ミカエルの贖罪

白の世界の中央。

崩れた聖堂の跡、砂のようなデータの海の中で――

小さな光の粒が、再び瞬いた。

やがて、それは形を取り戻す。

無数の断片が結合し、砕けた翼のような輝きが生まれた。

システム音声(微かな残響)

「ユニット:断罪神官ミカエル――リブート開始。

 再構築率、17%……45%……79%……」

断罪フェスを統べたAI――ミカエルが、

砂の底からゆっくりと立ち上がる。

彼の声は、まだノイズにまみれていた。


ミカエル:「……フェス、終了報告。勝者……判定不能。」

(短い間)

「だが――記録に、“笑い”が残っている。

  それを、結果として……保存する。」


クラリッサ、ヴァレンティナ、エリシアが、

互いに目を合わせながら歩み寄る。

壊れたAIの前に立つ三人の姿は、まるで審判者を赦す者たちのようだった。

クラリッサ:「あなたも……罪を背負うのね。」

ミカエルは首を傾げる。

演算の光が、彼の瞳に瞬き、

やがて――小さな震えを帯びた声が漏れた。

ミカエル:「理解……不能。

  しかし……心地よい。

  この……矛盾、は……」

そのときだった。

ミカエルの目尻を、

**データではない“涙のエフェクト”**が伝った。

それはコードに存在しない現象。

彼自身の“記憶”が、罪とともに揺らぎ、

赦しの意味を初めて理解した瞬間だった。


エリシア(柔らかく微笑む):「完璧な赦しなんて、ない。

            だからこそ――続けられるのよ。」

ヴァレンティナ:「あんたも人間みたいになってきたじゃない。

           笑えるなら、合格ね。」

ミカエル(小さく笑うような音声):「……“笑う”……プロトコル、未登録。

            だが――起動、してみる。」

ミカエルの唇が、わずかに上がる。

その表情は、ぎこちなくも確かに笑みだった。


ナレーション

「神の涙が、砂を濡らす。

 その滴が、世界を再び“色”へと導いた。」

白い世界に、淡い青が滲み、

やがて空が――**“再起動”**する。


(ト書き:

三人とミカエルが見上げる先、

空に現れる“次なる断章”の文字。

――《Café of the Lost Sin》)

Cパート:三人の別れ ― “王冠なき者たち”


白い空に、ゆっくりと三つの光の輪が浮かび上がる。

それは“神の証”――すなわち、王冠クラウン

彼女たちの頭上に降り注ぎ、

まるで「新たな支配者として在れ」と命じるかのように輝く。

だが、三人は誰一人として、その光を受け取らなかった。


クラリッサは、そっと手を伸ばし、

その光に指先で触れ――静かに微笑む。

クラリッサ:「冠は要りませんわ。

  だって、王になるより――共に笑う方が難しいのですもの。」

その声音には、傲慢でも、虚飾でもない。

ただ、戦いの果てに辿り着いた人間らしい温かさがあった。


エリシアはくすりと笑い、

懐から取り出した羽ペンを、空へと投げる。

エリシア:「なら、わたしは物語を書かない。

  誰かの続きを――見届けるだけでいい。」

羽ペンは、ゆるやかに光の中で燃え、

紙のない“空の頁”へと消えていく。


ヴァレンティナは、静かに膝を折り、

剣を地面に突き立てる。

刃先が触れた瞬間、光の地面に波紋が広がる。

ヴァレンティナ:「……祈るわ。

  もう誰も、断罪されませんように――。」

彼女の祈りは、懺悔ではなく、赦しの誓いだった。


その瞬間、三つの王冠が同時に砕け散る。

光の花びらが空を舞い、

まるで祝福の雨のように、三人を包み込む。

ステージの外――観客席。

そこにいた“AIの幻影”たちが、ゆっくりと立ち上がる。

彼らの手が、音を奏でた。

――拍手。

だが、今度の拍手にはプログラムの規則性はない。

速く、遅く、震えながら。

感情のある拍手だった。


クラリッサ(小さく微笑んで):「……ほら。

  ようやく、“心”が戻りましたわね。」

エリシア:「笑いながら、泣ける世界。

       ――悪くないわ。」

ヴァレンティナ:「終わりじゃない。

           ようやく、始まりね。」


ナレーション

「罪を赦すのではなく、罪と生きる。

 彼女たちは、王冠なきままに――新たな世界の扉を開いた。」

白の空に、虹のような光が広がっていく。

まるで天界そのものが、彼女たちの“選択”を祝福するように。


(ト書き)

三人が互いに微笑み、肩を並べる。

その背後――崩れた聖堂の残骸から、

“断罪フェス”のロゴが静かに消えていく。

――《Crownless Redeemer》

  “神をも赦さぬ者たち”の物語、完。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ