断罪神官ミカエル(MC)
その瞬間、アリーナの中央に、天を貫くような光の柱が落ちた。
まぶしさに目を細めた六人の悪役令嬢たちの前で、光の中から“男”がゆっくりと降りてくる。
彼の背には、白金に輝く大きな翼。
髪は陽光のように金色で、表情は神々しい……はずなのに。
その目元には、なぜかミラーレンズのサングラス。
ローブは神官服をベースにしているものの、袖口にはスパンコールが縫い込まれ、裾から覗くのはきらめくステージブーツ。
──完全に「神官アイドル」である。
ミカエルは天使のラッパを模したマイクを構え、軽快なBGMに乗せて高らかに叫んだ。
> 「さぁ〜〜! 集まったわね、罪深きレディたち!」
アリーナ全体が一瞬でざわめく。
天使も幽霊も前世貴族も、目を輝かせてステージを見つめた。
> 「ようこそ、《断罪グラフェス》へ!」
> 「勝てば名誉回復、負けても笑いを取れ!」
> 「そしてなにより、美しく反省せよ!!」
その“断罪宣言”に、天界アリーナがどよめく。
観客席から一斉に歓声が上がった。
「フゥーーーーーーッ!!!」
「反省かっこいいー!!!」
「断罪神官ミカエル様ーーーッ!!!」
光の紙吹雪が、花びらのように舞い降りる。
ステージライトが雲の床に反射し、まるで天界全体がフェス会場のようだった。
クラリッサは眉をひそめ、冷ややかに扇子を閉じる。
「……あの方、本当に神官ですの?」
ミレーユはワインを回しながらくすりと笑った。
「ふふっ、こういう茶番、嫌いじゃありませんわ。」
ミカエルはサングラスを外し、カメラドローンにウィンクを送る。
> 「レディたちよ、ようこそ。
ここは“断罪”と“再演”が交差する天界ステージ。
神も悪も、観客の歓声の前では平等だ!」
その言葉に合わせて、アリーナ上空にホログラムが走る。
《#断罪フェス開幕》《#神官アイドルミカエル》《#天界ライブ開催中》
──荘厳なのに、軽い。
神聖なのに、ノリがいい。
まさに「天界らしい」混沌の開幕であった。
ステージ上、六人の悪役令嬢たちは光の床に並んでいた。
天界アリーナを埋め尽くす観客たちが、次なる一言を待っている。
最初に口を開いたのは、当然この人だった。
クラリッサ・ロート。
金髪を揺らし、扇子をパチンと開く。
表情は涼やか、声は完璧に響くトーンで。
> 「反省……? それ、ドレスコードにありますの?」
観客席の一部から、くすくすと笑いが漏れた。
「出た!“傲慢令嬢”の皮肉!」
「衣装の話題にすり替えるの草!」
ミレーユ・ラファールが続く。
鎖につながれたままなのに、まるでサロンの主役のように優雅だ。
手にしたワイングラスを掲げ、あくびをかみ殺しながら。
> 「笑いを取れって……ここ、地獄のバラエティですの?」
観客「うわ、センスある地獄ボケ!」
天使たち「バラエティに地獄混ぜないでくださーい!」
ヴァレンティナ・コルネリアは腕を組み、ため息をつく。
雷光を孕んだ瞳が、ステージ上を射抜く。
> 「戦う理由が、わからん。」
静かな一言に、場の空気がピリッと引き締まった──が。
ミカエルが、間髪入れずにドヤ顔でマイクを構える。
サングラス越しの視線が、まぶしく(そしてちょっとウザい)。
> 「理由など不要!」
> 「感情こそ、神の燃料だ!!」
観客席「うぉぉぉぉぉぉ!!!」
幽霊「説得力ゼロの神だーーー!!!」
天使「ノリだけで押し切るタイプだ!!!」
雲の床が震えるほどの歓声。
まるでライブ会場のような熱狂。
六人の令嬢たちは、互いに視線を交わした。
クラリッサ:「……この神、ちょっとうるさいですわね。」
ミレーユ:「でも、照明の当て方は悪くないですわ。」
ヴァレンティナ:「……混沌、ここに極まれり。」
──そして、“断罪フェス”の開幕宣言が、ようやく現実味を帯びてきた。
天界の空を、無数の小さな光球──ドローン天使たちが飛び回る。
ふわり、ふわりとホバリングしながら、六人の令嬢をあらゆる角度から撮影中。
空中スクリーンに映し出された映像には、瞬く間にホログラムコメントが流れ始めた。
『#断罪フェス開幕』
『#今年の傲慢かわいい』
『#憤怒ガチ勢』
『#色欲様の処刑シーンどこ』
観客席の天使たちがスマホ代わりの光輪をタップしては、歓声を上げる。
まるで異世界SNSの嵐だった。
MCミカエルは、テンション最高潮。
サングラスを押し上げ、指をパチンと鳴らす。
すると、六人の足元が淡く光を放つ。
それぞれの罪を象徴する紋章が、円形に浮かび上がる。
傲慢:金。
色欲:紫。
憤怒:青白。
嫉妬:銀。
虚飾:金粉。
知識:赤黒。
光が交錯し、天井のホログラムに巨大なルーレットが出現。
魔法陣のように回転しながら、無数のステージ名が映し出されていく。
「婚約破棄劇場」
「嫉妬花園」
「断罪ステージA」
「処刑台サバイバル」
「炎上学園リターンズ」
「虚飾ホールショーダウン」
回転速度が上がるにつれ、音楽もフェス調に。
観客が一斉に立ち上がる。
クラリッサが、扇子で口元を隠して小さくため息をついた。
> 「……婚約破棄劇場? またアレをやるんですの?」
ミカエルがマイクを構え、白い羽を広げて宣言する。
> 「再演こそ、反省の第一歩!!」
観客「フゥーーーーッ!!!」
光の紙吹雪が再び舞う。
リュシーが髪をかき上げながら、カメラ目線でぼやく。
> 「……この番組、視聴率のために私たち断罪されてません?」
ミカエルは即座に笑顔で返した。
歯がキラリと光る。
> 「気のせいだよ☆」
観客「いや気のせいじゃない!!!」
ドローン天使《#ブラック職場天界説》を表示。
クラリッサ:「天界、思ってたより俗っぽいですわね……」
ミレーユ:「地獄よりもパーティー感ありますわ♡」
エリシア:「ああ、データ上では“狂気”の分類です。」
ミカエルが再び両手を掲げた。
ルーレットの光が一段と強まり、雷鳴のようなサウンドがアリーナを包む。
> 「さぁ――第一試合!
ステージ抽選、スタートォォォ!!」
ルーレットが一気に加速。
光が走り、文字が乱反射し、観客が息を呑む。
そして――ぴたりと止まった。
映し出されたステージ名は――
> 《婚約破棄劇場・リプレイステージ》
クラリッサ:「……やっぱり、来ましたわね。」
ミレーユ:「これ、主役ですわね。頑張って♡」
クラリッサ:「“頑張って♡”のトーンが怖いですわ。」
観客「#婚約破棄再演 #傲慢女王降臨 #フェス神回確定」
ステージの床が開き、クラリッサの足元が淡く光り始める。
次の瞬間、彼女の体が光に包まれ――舞踏会のホールへ転送されていった。




