敗者の観客席 ― “罪人たちの夜話”
天界アリーナの外縁――。
透明なドームの向こうで、星々が静かに瞬いていた。
その下に設けられた観客席には、明日の戦いを見届ける者たちが、ぽつりぽつりと集まっていた。
風は冷たいが、不思議と心地よい。
夜風の音が、まるで“反省のため息”を運んでくるようだ。
リュシーは膝を抱え、空を見上げてぽつりと呟いた。
> 「明日、誰が勝っても……罪は消えないんでしょ?」
彼女の声は、夜空に吸い込まれていく。
嫉妬の断罪を受けた彼女の瞳には、まだわずかに翡翠色の光が宿っていた。
隣で、エリシアが小さく笑った。
白衣の裾を風に揺らしながら、静かに答える。
> 「罪は消えない。でも――定義は変えられるわ。」
> 「“断罪”ってね、本当は再編集なの。
私たちが自分の物語を書き直すチャンスなのよ。」
その言葉に、リュシーは少しだけ目を丸くする。
そして、ふっと笑った。
> 「……それ、あなたが言うと説得力あるわね。脚本家さん。」
そのやり取りを、カウンター越しに見ていたミレーユが微笑む。
彼女は金のティーポットを傾け、静かに湯気を立てながらカップを配った。
> ミレーユ:「苦くても、飲めば温かいわ。」
> 「“断罪ティー”――罪の重さに比例して味が濃くなるの。」
ヴァレンティナはカップを受け取り、香りを嗅いで顔をしかめた。
> ヴァレンティナ:「……これ、私の、焦げてない?」
> ミレーユ:「ええ、あなたの怒りが強すぎるの。少し冷まして飲みなさい。」
その一言に、みんなが小さく笑う。
しかし笑い声の奥には、それぞれの“痛み”が、まだ燻っていた。
やがて、会話は自然と静まり、
風の音だけが響く――。
ヴァレンティナはふと、夜空の彼方を見上げた。
そこには、かつて救えなかった民の幻影が、星のように散っていた。
> ヴァレンティナ(モノローグ):「……あのとき、私は力が足りなかった。
怒りで守ろうとして、壊してしまった。
でも、あの人たちの声は、まだ――私の中で生きてる。」
ティーカップの表面に映る、自分の瞳。
その奥には、まだ消えぬ紅の光が宿っていた。
> ヴァレンティナ:「……だから、もう一度だけ。
“怒り”を、守るために使いたい。」
ミレーユはその言葉に、そっと微笑んで頷いた。
> ミレーユ:「それでいいわ。
怒りも、赦しも、どちらもあなたの罪。
でも――罪って、案外、綺麗なものよ。」
夜風が吹き抜ける。
四人の影が長く伸び、やがて一つに重なる。
そして――鐘楼の上で、ひとつの鐘が“静かに鳴った”。
それは、贖罪を告げる最初の音だった。




