第9話:最終戦前夜 ―贖罪の鐘が鳴る 天界の夜 ― 沈黙の鐘楼
夜の天界は、息を潜めていた。
“断罪フェス”の中心にそびえる天界アリーナ。
その最上層――蒼白い光を放つ鐘楼が、ゆっくりと回転を始めている。
鐘の表面には、これまで断罪された者たちの名前が刻まれ、無数の光点として揺らめいていた。
けれど今夜、その鐘はまだ鳴らない。
明日の決勝――“最終断罪”の時を、静かに待っているのだ。
観客席のAIたちは動かない。
まるで世界がポーズボタンを押されたかのように、
映像も、音も、時間さえも、止まっていた。
ミカエルの声も聞こえない。
あの陽気な実況AIでさえ、今は沈黙している。
ナレーション:
「断罪の夜に、神々さえ口を閉ざす。
これは、贖われぬ者たちが、祈りを忘れる前の夜。」
アリーナを包む青い光は、冷たく、そしてどこか優しい。
敗者たちは、その光の中でそれぞれの想いを抱えながら――
静かに夜を過ごしていた。
観客席の奥では、灯りがぽつりぽつりと点る。
それはまるで、小さな懺悔の炎のように。
誰も言葉を発しない。
ただ、明日への“罪”と“祈り”だけが、空気の中に漂っていた。
天界の空に、一瞬だけ流星が走る。
それはまるで、断罪を終えた魂が還っていく光のようだった。




