天界アリーナへようこそ!
まばゆい光の中──。
六人の悪役令嬢たちは、それぞれの“断罪の瞬間”から、まるで糸を引くように天へと吸い上げられていった。
涙も、悔しさも、地上の記憶も、まるごと光に飲みこまれていく。
そして――次に目を開けた時。
そこは、見たこともないほど白く、きらめく世界だった。
床は透き通るような雲でできており、踏むたびにふわりと揺れる。
見渡せば、空に浮かぶ巨大な円形アリーナ。
外周には無数の観客席が連なり、そこには天使、幽霊、そしてかつての貴族たちがずらりと並んでいた。
どの顔も、どこか懐かしく、どこか不気味に笑っている。
観客たちは光の羽をふるわせながら、ざわめいた。
「──あれが“ロート家の令嬢”か」
「いや、こっちは“学園を燃やした子”よ!」
「今年の断罪フェス、キャストが豪華ね!」
まるで、地上の噂話がそのまま天界まで届いているかのようだった。
見上げると、頭上に巨大なホログラム文字が浮かんでいる。
> 《断罪グランドフェスティバル202X 開幕》
その瞬間、荘厳なファンファーレが鳴り響いた。
だが、なぜかロック調。
トランペットの高音とギターリフが入り混じり、まるで“天界の音楽祭”のようなノリの軽さだ。
──断罪。
本来ならば、恐怖と涙と赦しの儀式であるはずなのに。
この空間には、拍手と笑いと、ショーアップされた“エンタメ”の匂いしかしなかった。
六人は、それぞれ顔を見合わせた。
クラリッサは、扇子をゆっくりと開き、ため息をついた。
ミレーユは、ワイングラスをくるりと回して微笑む。
ヴァレンティナは、無言で拳を握り、空気を睨んだ。
──そして、天のアナウンスが響き渡る。
> 「さぁ〜〜! 集まったわね、罪深きレディたち!」
声の主は、白金の羽を背負い、眩い光の柱の中から降り立った。
神官服……のはずが、どこかアイドル衣装っぽい。胸元にはラメ、腰には金のチェーン、顔にはサングラス。
彼こそが、“天界の断罪神官”ミカエル。
──だが、そのテンションは完全にバラエティMCだった。
> 「ようこそ、《断罪グラフェス》へ!」
> 「勝てば名誉回復、負けても笑いを取れ!」
> 「そしてなにより──美しく反省せよ!!」
観客席が爆発するような拍手に包まれる。
光の紙吹雪が舞い、天使ドローンが浮遊カメラを構える。
クラリッサは思わず眉をひそめた。
「反省……? それ、ドレスコードにありますの?」
ミレーユが頬杖をつき、退屈そうに笑う。
「笑いを取れって……ここ、地獄のバラエティですの?」
ヴァレンティナは無言のまま腕を組み、鋭い声で問う。
「戦う理由が、わからん。」
ミカエルはサングラスを指で押し上げ、にやりと笑った。
> 「理由など不要! 感情こそ、神の燃料だ!」
──その瞬間、アリーナ全体が歓声と拍手に包まれた。
「うぉぉぉ!」「説得力ゼロの神だ!」
「いいぞー! もっとやれー!!」
空中に漂うドローンが、ホログラムでコメントを映し出す。
『#断罪フェス開幕』『#今年の傲慢かわいい』『#憤怒ガチ勢』
あまりにもカオスで、もはや神聖さのかけらもない。
──だが、それでも。
どこか心の奥で、彼女たちは確かに感じていた。
“この舞台で、何かが始まる。”




