クラリッサの逆転演出 ― 証明の矛盾
舞台の中央。
ルールが絶えず書き換えられ、現実が揺らぐその中で――
クラリッサは静かに剣を鞘に納めた。
クラリッサ:「……理屈で裁くなら、理屈で抗ってみせます。」
彼女の足元に、幾何学的な紋章が光を放つ。
砂の粒が宙に舞い、鏡面の光を生む。
――発動、《観測幻灯》。
オペラ劇場の空間全体が、白銀のスクリーンと化した。
先ほどの戦闘記録――エリシアの筆がルールを書き換える瞬間――
その一筆一筆が、まるで法廷証拠のように再生される。
クラリッサ:「あなたが書いた“ルール”の記録。
どれも、確かに観測されています。
……そして、あなた自身が“真実を操作”している証ですわ。」
観客席がざわめいた。
幻影の観客たちが立ち上がり、裁判官のように手を上げる。
――“断罪の法廷”が、観客投票という形で再構築されていく。
観客の声:「あれは矛盾している!」「彼女が嘘をついている!」
「断罪せよ! 断罪せよ!」
エリシアの微笑が、わずかに揺らいだ。
だが、すぐにまた筆をくるりと回す。
エリシア:「ふふ……面白いわね。
でも、その“証拠”とやらも――演出の一部じゃないかしら?」
ペン先が空に踊り、ルールが書き換えられる。
『映像再生は“幻灯演出”として扱う。
その真偽は観客の信仰に依存する。』
瞬間、スクリーンの映像が揺らいだ。
真実が波のように歪み、エリシアの笑顔が二重に映る。
エリシア:「あなたの幻灯が“真実”だという保証は、どこにあるの?」
クラリッサの目が見開かれる。
鏡面がひび割れ、再生された証拠映像が霧散していく。
クラリッサ:「……そんな、馬鹿な。」
エリシア:「“証拠”も“記録”も、“信じる側”が決めるの。
それが、物語。
そして断罪とは――誰が正しいかではなく、誰が信じられるか。」
観客の投票ゲージが激しく点滅し、二人の周囲に光の柱が立つ。
真実も虚構も入り混じり、舞台全体がぐにゃりと歪んだ。
クラリッサは息を詰まらせながらも、視線を上げる。
崩れゆく光の中で、彼女は小さく呟いた。
クラリッサ:「……ならば、私は“信じたいもの”のために戦う。
嘘に塗れた正義でも……その中に、誰かの祈りがある限り。」
彼女の剣が再び光を取り戻し、砂の鏡が砕け散る。
舞台の照明が激しく点滅――
断罪の法廷は、理屈の終わらない迷宮と化した。
――“論理の断罪”は、永遠に終わらない。
それでも、クラリッサはその中心で立ち続ける。




