第7話 断罪トーナメント準決勝 ― 虚構の審判 ― 前編 :砂上の幕開け ― 幻影劇場、起動
砂が、舞い上がった。
灼熱の砂漠に広がる断罪アリーナが、まるで意思を持ったかのようにうねり、形を変えていく。
風の音が低くうなり、砂の粒が光に反射して流星のように散った。
やがて――
砂の一粒ひとつぶが幕布へ、光の帯へと変わり、そこは**オペラハウスのような“幻影劇場”**となった。
観客席には無数の幻影が座り、拍手を送っている。
天井からは金色の羽根が舞い降り、宙に浮かびながらゆっくりと旋回していた。
それは、“ルールの羽根”――
この試合の法と秩序を司る存在。
ミカエル(実況AI)の声が、上空スピーカーのように響き渡る。
「ステージ変換完了ッ! 本日の審判テーマは――“虚構”!
現実も演出も、すべては脚本次第!!」
瞬間、ライトが二人を照らした。
片側に立つのは、白衣をまとい、銀の羽ペンを指先に光らせる女――エリシア。
その瞳は冷ややかに笑みを湛え、舞台の中央へと一歩踏み出す。
「断罪とは、観客が納得する“物語”よ。
正義は――演出できる。」
彼女の羽ペンが宙を走るたび、空中に文が現れ、次の瞬間には現実がそれに従う。
まるで彼女が“世界の脚本家”であるかのようだった。
対峙するのは、漆黒のドレスに銀剣を持つクラリッサ。
舞台照明を受けても微動だにせず、鋭い眼差しで相手を見据える。
「……そんな脚本に、私は従わない。」
その声は、氷のように冷たく、そして静かな炎を宿していた。
エリシアが軽く肩をすくめる。
「従う必要はないわ。ただ、“観客が信じた方”が正義になるだけのこと。」
「観客の信仰で真実が決まるのなら、あなたの正義は――砂上の楼閣ですわ。」
クラリッサが剣を抜く。
エリシアのペンが走る。
舞台の幕が上がり、光が二人を包む。
――こうして、“断罪そのもの”をめぐる心理劇が始まった。




