幻影の試練 ― “孤独の審判”
砂嵐が止んだ。
一瞬、世界が静寂に包まれる。
――その沈黙の中で、耳鳴りのような声が響く。
《SYSTEM ALERT:アルゴリズム異常検知。モード変更――“孤独の審判”起動。》
AIの声が冷たく告げた瞬間、
砂上の都市全体が淡く光り、無数の幻影が地から立ち上がる。
それは、過去にこの街を追われた“追放者たち”の記録。
彼らはかつての自分たち――孤独を選び、孤独に敗れた魂。
幻影たち:「罪を見つめよ。誇りを誇るな。」
ヴァレンティナとクラリッサの周囲に、
それぞれの“過去”が形を取り始めた。
◆クラリッサ側 ― “誇りの鎧”
鏡のような砂面に、若い日のクラリッサが映る。
彼女はまだ“孤独”を誇る前の少女。
仲間に手を差し伸べられながらも、首を振って拒んでいる。
幻影のクラリッサ:「あなたの誇りは、他人を遠ざけるための鎧。」
現在のクラリッサ:「……違う。私は……誇りを失いたくなかっただけ。」
剣を握る手が、わずかに震える。
だが幻影は淡々と告げる。
幻影のクラリッサ:「本当は、誰かに認めてほしかったんじゃないの?
“一人で戦うあなた”を。」
クラリッサの心臓が、痛みで締め付けられる。
砂が揺らぎ、彼女の瞳に映る自分が泣いていた。
クラリッサ(小声で):「……そんな顔、するな。」
彼女は目を閉じ、剣を胸に当てた。
白熱の炎が刃に宿るが――それはまだ、悲しみを含んでいた。
◆ヴァレンティナ側 ― “怒りの影”
ヴァレンティナを囲む幻影は、群衆の形をしていた。
嘲笑、罵倒、非難――かつて彼女を処刑台に追い込んだ声の残響。
幻影の群衆:「怒りで世界を殴って、何を救えた?
結局、自分の正しさを証明したかっただけじゃないの?」
ヴァレンティナ:「違う……私は……守りたかっただけ……!」
しかし拳套の光が赤く濁る。
怒りのエネルギーが再び暴走の兆しを見せる。
幻影の群衆:「守る? なら、なぜ拳を振り上げた?
それは“誰かを救う力”ではなく、“誰かを罰する力”だった。」
ヴァレンティナ:「……私は……そんなつもりじゃ……!」
彼女の視界が滲み、砂嵐が再び吹き荒れる。
――その怒りは、もう敵に向けるものではなかった。
自分の心に宿る、“歪んだ正義”への怒り。
二人は背中合わせに立ち尽くしていた。
幻影の群衆がゆっくりと距離を詰める。
砂の中に、重い声が響く。
幻影の声:「誇りを誇るな。怒りを鎮めよ。
孤独を選ぶ者に、救いはない。」
その瞬間、空から一筋の光が差す。
砂上のオアシスが、かすかに揺れた。
――誰かの声が、遠くで聞こえる。
「やめなさい、二人とも……!」
金色の光が降り注ぎ、ミレーユの姿が現れた。
彼女の瞳は柔らかく、けれど強い。
次の瞬間、風が一変する。
砂漠の断罪舞台が、**“共闘の戦場”**へと変わっていく。




