第5話:追放の砂漠都市 ―孤独の誇り― 砂上の断罪会場(開幕) ― 孤独の誇り
乾いた風が、空を裂くように吹き抜けた。
金色の砂が舞い上がり、視界を奪う。
その中に、古びた鐘楼の影――崩れかけたオアシス神殿が姿を現す。
AI実況・ミカエル:「本日の断罪ステージは《追放の砂漠都市》ッ!!
砂嵐に潜む幻影民が裁きを見届ける――孤独と誇りの闘技場だッ!!」
声は、熱狂とともに電波のように空間を震わせた。
だが、そこにいる観客たちは“生きて”いない。
無数の影。
――それは、かつてこの都市を追われた者たちの、記録の残響だった。
彼らはかつて罪を背負い、罰され、忘れられた者たち。
今はAIの演算によって“観客”として蘇り、
断罪フェスという見世物の中で、他人の罪を裁く幻影と化していた。
砂の中から、二つの影が浮かび上がる。
一人は真紅のガントレットを装備した拳闘士――ヴァレンティナ。
もう一人は白銀の剣を背に立つ、孤高の剣士――クラリッサ。
ヴァレンティナ:「……ここが、“追放者の都”。」
クラリッサ:「誇りを捨てられなかった者たちの、墓場でもある。」
ヴァレンティナが拳を鳴らす。
クラリッサが砂を踏む。
二人の間の空気が、熱を帯びた。
幻影の民たちがざわめき始める。
「また罪人が来た」「孤独を誇る者を、見せてやれ」「誰も信じない者こそ、美しい」
その声は砂嵐に混じり、幻聴のように彼女たちの鼓膜を刺す。
ミカエル:「おおっと、観客席もヒートアップ!!
幻影民のデータ反応が通常の3倍だぁ! このステージ……荒れるぞぉ!!」
砂嵐が激化し、重力の軸が歪む。
ヴァレンティナは足を踏みしめ、拳套を構えた。
その瞳には、赤い閃光。
怒りの奥に、かつて見た“孤独な背中”がちらつく。
ヴァレンティナ:「……クラリッサ。あんたの目、まるで“あのときの私”みたいね。」
クラリッサ:「違う。私は、誰のためにも戦わない。」
二人の間に、砂が走る。
オアシス神殿の鐘が、遠くで鳴った。
それが、戦いの始まりを告げる合図だった。
ミカエル:「断罪フェス第5戦――“孤独と誇り”の幕が、今! 上がるッ!!」
砂塵の中、拳と剣が、静かに軌道を描く――。




