崩壊 ― “処刑”の終焉
轟――。
鐘楼が悲鳴を上げるように傾き、紅蓮の光を散らしながら崩れ落ちた。
鉄と石の破片が雨のように降り注ぎ、闘技場の空が裂けていく。
まるで、長い断罪の儀式そのものが、終わりを告げるかのように。
AI実況(半ば叫び):「だ、だだだ大事件――!!
断罪フェス史上初っ!! 会場っ! 会場が完全崩壊ぁぁああッ!!」
観客席を構成していた幻影の群衆が、風に吹かれる砂のように消えていく。
その中に、怒りも嘲笑ももう存在しなかった。
残ったのは――静寂と、ゆるやかな余韻。
瓦礫の中心に立つのは、ヴァレンティナ。
金色に輝く拳套の光が、淡く夜風に溶けていく。
ヴァレンティナ:「……あんたたちの声、聞こえたよ。」
その声は、もはや怒りではなかった。
決意と、赦しの混じった低い調べ。
拳をゆっくりと下ろすと、砕けた大地の裂け目に、青い光が流れ始めた。
ヴァレンティナ:「でも、私はもう――怯えない。」
風が吹く。
崩れ落ちる瓦礫が静かに散り、そこから小さな光の花が芽吹くように、幻の民衆が姿を変えて舞い上がる。
彼らの表情は、怒りでも嘲りでもない――どこか安堵した、穏やかな微笑。
AI実況(震えた声で):「……怒りを鎮め、断罪の輪を断ち切った……ヴァレンティナ選手、まさかの……完全浄化エンド……!」
BGMが流れる。
――「Crimson Justice Refrain」
切なくも壮麗な旋律が、崩壊した広場を包み込む。
瓦礫の上で風が鳴る。
ヴァレンティナはゆっくりと目を閉じ、手のひらを空へ伸ばした。
そこには、もう“罪”も、“怒り”もなかった。
あるのは――守るための、静かな熱だけだった。




