覚醒 ― “怒り”の意味
轟音とともに粉々になった鐘の残骸が、空へ舞い上がる。
赤い波動が荒れ狂い、アリーナ全体を焼き尽くすように包み込む。
その炎の中で、ヴァレンティナは息を荒げ、拳を握りしめた。
ヴァレンティナ(息を吐きながら):「……これが、私の正義? こんなもの、ただの……破壊じゃない……!」
熱で揺らめく視界の中、ひとつの影が立っていた。
他の幻影たちとは違う。彼女の瞳をまっすぐ見上げる――ひとりの少女。
リア:「……ヴァルおねえちゃん。」
その声を聞いた瞬間、ヴァレンティナの全身から力が抜けた。
赤の光が弱まり、拳套の文様が淡く脈打つ。
ヴァレンティナ:「……リア……なの?」
リア(微笑みながら):「そんな顔、しないで。
怒ってもいいよ。でも……“壊す”ためじゃないでしょ?」
ヴァレンティナの拳が震える。
その一言が、心の奥に刺さる。
ずっと封じてきた想い――守れなかった悔しさ、届かなかった叫び。
ヴァレンティナ:「……そうね。
怒りは……誰かを守るためにある。」
拳套が青白く光を放った。
赤い魔紋がひとつずつ金色に転じ、まるで怒りが“祈り”に変わっていくようだった。
デバイスの奥で電子音が鳴り、機構が展開を始める。
システム音声:「《ガントレット・オブ・レトリビューション》――ガーディアン・モード、起動。」
金属が伸縮し、拳套の形が変化する。
装甲が開花するように展開し、蒼いエネルギーが指先に集束。
まるで、怒りを“護る力”へと再構築するような美しい輝き。
ヴァレンティナ(深く息を吸い込み):「この怒り――守るために使う!」
大地を蹴る。
衝撃波が広がり、アリーナ全体の空気が震える。
ヴァレンティナの拳が空を裂くように振り抜かれ、黄金の閃光が走った。
赤い波動が一瞬で黄金へと転じ、炎のように燃え盛る幻影の群衆を包み込む。
怒号が消え、代わりに――静かな歓声が、まるで祈りのように響いた。
AI実況(震えた声で):「――“怒り”が、浄化されていく……!? これは……守護の拳、だと……!」
崩れゆく幻影の中、リアの笑顔だけが最後まで残り、光の粒となって消えていった。
その光がヴァレンティナの胸元に溶け込むと、アリーナに穏やかな風が吹いた。




