第3話:白亜庭園の鏡 ―嫉妬と虚飾の戦場― 入場 ― “鏡の園”にて
アリーナ転送の光が静かに晴れていくと、そこに現れたのは――
息を呑むほど白く、まぶしい庭園だった。
花壇も噴水も、並木道までもが磨き上げられた鏡面。
空の青が何重にも反射し、上下の境界が消えていく。
まるで世界そのものが、ひとつの巨大な鏡になったかのようだった。
ミカエル(実況):「さあ、第3戦の舞台は《白亜庭園》ッ!
本日のテーマは“嫉妬と虚飾”! 己の姿をどれほど美しく映せるかぁ!?」
声が響くと同時に、鏡の花びらが風に乗って舞う。
そのひとつひとつが光を反射し、観客席(=天界SNS配信カメラ)に虹の粒を飛ばしていく。
リュシーは《白の鏡》を胸に抱きしめ、そっと一歩を踏み出した。
靴音が鏡を打ち、その足元に――もう一人の“リュシー”が映る。
映像の中の彼女は、完璧な姿をしていた。
姿勢も笑顔も、どこか自分より少しだけ洗練されている。
“理想の私”。
いつも胸の奥で比べてしまう、もうひとりのリュシー。
リュシー:「……また、あなたなのね。完璧な“私”。」
鏡の中の“リュシー”は、まるで答えるように微笑んだ。
その笑顔が、現実のリュシーには少しだけ刺さる。
対するマルガレーテは、余裕の笑みを浮かべて黄金のティアラを掲げた。
その宝石が光を放ち、SNS配信カメラのレンズに反射してキラリと輝く。
マルガレーテ:「映える準備、できてる? フォロワーの皆様♡」
すかさず、観客(=天界インフルエンサーたち)のコメントが流れ始める。
『#今日の断罪フェス #推しはティアラ様✨』
『#白背景でも光を持ってくマルガレーテ無双』
リュシーが思わず目を細めた。
――彼女は、どこまでも“見せる”ことが上手い。
舞台に立つだけで、視線と“いいね”を奪っていく。
白い風が庭園を吹き抜けた。
鏡面の花びらが一斉に舞い上がり、光の渦を描く。
その中心で、リュシーとマルガレーテ――
二人の姿が、反射光に包まれて向かい合う。
ミカエル(実況):「さて! 本戦開幕ッ! 嫉妬と虚飾の鏡合わせ、見逃すなよ天界民ッ!!」
鏡の庭園が、まるで観客のスマホ画面のように無数の光を映し出す。
“美”と“羨望”が交錯するバトルショーが、今、幕を開けた――。




