プロローグ
あなたがたが幸せになりますように。
そして、あなたのことを忘れられないだれかのことは、どうか忘れてください。
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(『アンデルセンーある語り手の生涯』より)
How many words do I need to express my love for you?
一五歳の夏、誰そ彼時。私たちが出会った場所で、私たちは俯いて泣きじゃくって
いた。
「夏が、っ……ずっと終わらなければよかったのに!」
普段は静かでうるさいのが嫌いな夕交は、涙で濁った、でも私の大好きな声で叫ん
でいる。
「夕希と、ずっと!過ごせればよかったのに‼︎」
私も、ずっと一緒にいたかった。
でも、もう一緒にいれなかった。
珍しく泣いてる夕交を、いつもみたいに揶揄うこともできない。
「俺は、夕希がいないとだめなんだよ……」
その言葉が聞けて私は幸せだ。
私だってそうなんだよ。
夕交が一緒にいないと、私は私じゃない。
「夕希」って、夕交が呼んでくれるから、それはわたしの名前なのに。
私たちには時間がなかった。あと少ししか、私はここに居られない。
それを嘲笑うように生暖かい風が私たちの目の前を走り抜けていく。
あぁ、夏がもっと長ければよかったのに。
私がもっと早くきていればよかったのに。
神様、あなたが存在するのなら。お願いします。最後に、言わせてください。
これまであなたなんてこれっぽっちも信じてなんかいなかった。けど、今だけは。
「夕交‼︎また、またくるからっ……絶対、ぜったいにまた会おう‼︎」
夕交のことが、世界でいちばん、だいすきだよ。愛してる。この気持ちは変わらない。
まだ、言えてないことが山ほどあるのに。
溢れ出した涙が頬を伝っていく。
まだ、ここにいたい。こんなに強く願ったのは初めてだった。
それでも、無情に時間は流れていく。
別れの時が来る。私の意思なんて関係はない。時間というものはは残酷だった。
夕焼けのコンクリートに映った私たちの影。
君のものだけが、伸びていく。
カラスたちがバカみたいにうるさく鳴いている。
ごめんね、ごめん。あなたを置いていく私をどうか許さないで。必ず、会いにくるから。
だから、待ってて。
【あなたへの愛を伝えるには、いったい幾つの言葉が必要でしょうか。】
引用なんかしちゃったりして。
小説家気分だぜ