20 変革自在
マリエールは共同通信社のテレビ放送で星全員に向かって呼び掛ける。今から変革自在を掛ける外周の星へ出来るだけ早く移住するようにと。
20 変革自在
マリエールは、外周の惑星の上空にいる。アンドロイドがカメラや集音マイクを操作して、インターネットに配信され、共同通信社によりテレビ放送される。
「この映像を見ている皆さん、私はマリエールと言います。今からこの星に変革自在の魔法を掛けて人間の居住の可能な星にします。様子ご覧下さい。今は赤茶け、どんな生物も確認出来ません。大気も無く暑さ寒さの差が大きいです。しかしこの星はあなた方の星と同じ大きさ、自転周期を持ちます。変革自在で人間の居住可能な星になり人間が正しく管理すれば未来永劫変わる事無く居住の場であり続けます。この星の次はあなた方の星の変革自在が待っています。出来るだけ早くこの星に移住して下さい。
では皆さん変革自在をご覧下さい。」
マリエールは自分が何時も使う言葉で変革自在と唱えた。見ている人々の言葉で唱えると効果ないのか判らない。しかし、大勢の前で失敗するわけにはいかないので慎重に行動した。
赤茶けた星が光に包まれた。美しい姿だ。天文ファンにはその瞬間全天で最も明るく美しい星が突然現れた事に驚愕した。
この星の見え方は距離より変わるが、最近は2等星の輝きだ。それが全天最高の輝きを見せたのに驚く人々は多い。夜空を見上げると急に明るく輝き出す星の存在は異様だ。遠く離れた星の明るさを変えられる存在など神以外に考えられないと考える人間は少なくない。とは言えその輝きは10分程度の事だ。輝きが消えた後に美しい海と緑豊かな大地が広がるのを見てテレビの前の人々が驚いた。カメラは大地に近づき木々や草原、動物達を映したり、海上、海中の生物の豊かさを映したりした。最後にマリエールのメッセージだ。
「皆さん変革自在を堪能して頂けたでしょうか。人々のいない星には福音を与える変革自在も人々の居るところで行われたら、絶望しか生みません。私も人殺しはしたくありません。国々に要請します。速やかな国民の移住を実施して下さい。程なく期限を決めます。期限が来れば、問答無用で変革自在を行ないます。」
この驚くべき放送は繰り返し放映された。担当者はせつかれてアンドロイドに第３回の打ち合わせを要請した。国連としては少しでも情報が欲しい。担当者は中々アンドロイドに連絡が付かない。付いても口を濁らすだけだ。漸くして第３回の打ち合わせが決まった所、今回はマリエールが参加するそうだ。
相手が２人で大物の登場と聞き国連側も女性大物職員を投入して来た。国連の国際紛争解決担当の参事だ。担当より少し年上の貫禄のあるカリスマだ。アンドロイドより50cmは大柄で体重は倍はある。押しの強さで話しが進むならいい選択かも知れないが人選ミスかも知れないと思う。もちろん参事が横柄な性格ではないし人格者だということは良く知っている。しかしマリエールやアンドロイドが何を持って判断するか確認出来ない以上、外見も考慮すべきだと思うのだが、国連は２人に威圧を掛けるつもりか。
第３回の打ち合わせにはマリエールも出席するらしい。それ故国連の体格のいい、女性参事も参加する。
