2 王家の夕餉
マリエールは謹慎をさせられている。勝手に交渉したのがいけないらしい。半年も交渉していたのだから言ってくれたらいいのに。
2 王家の夕餉
マリエールは王城に閉じ込められてはいるが、その道のトップの学者や外務省の職員が今までとは違う視点でいろいろ説明してくれるから楽しい。マリエールは元々勉強が好きだ。実に興味深い。このまま監禁されてもいいくらいだ。メイドが、
「国王陛下より、今日の王家の夕餉に出席するようにと連絡がありました。」
マリエールは黙って頷いた。嫌だと言ってもせん無い事だし、メイドを困らせるだけだ。ただ今日の手入れが嫌だなと思うだけだ。さしたる感慨はない。自分のしてきた事は常識外れだろう。でもその常識があっても自分が別の選択が取れた自信はない。戦争は避けたいし、海洋開発は必要だ。お仕置きなら甘んじて受けよう。悔いはない。
入念な手入れは暫くなかった事で辟易する。慣れている筈なのにこんな事無駄だと思うマリエールがいる。記憶だけ存在の筈なのに妙な所で顔を出す。戦争は絶対に嫌だと思ったのもそんな存在がいるからかも知れない。
時間になった。別に両親兄弟姉妹との食事だ。特に今日は国王と第1王妃とその子ども達だけだ。気心も知れている。自分が謹慎中で無ければ問題ないが、これでは尋問会議のようではないか。気が重い。
会場に付いた。皆揃っている。遅れて来るように言われたからだ。マリエールは、皆に言った。少なくとも皆に心配させたのは事実だから、
「みんなごめんなさい。迷惑掛けたし、心配掛けたね。」
第1王子は立ち上がってマリエールに声を掛ける。
「マリエールは迷惑など掛けてない。兄弟姉妹で話し合った。マリエールの行動は戦争を回避するものだ。我々にも力があれば同じように行動する。マリエールに否があるならば我々も同罪だ。父上我々も罰っしてください。」
マリエールの涙腺が緩む。私だけの罪なのに兄弟姉妹が同じ気持ちだと言ってくれる。マリエールは、
「ありがとう。同じ気持ちでいてくれて。嬉しいわ。」
素直に気持ちを伝える。国王が、
「ハリス第1王子、今回のマリエールの行動は間違っていない。従ってこれは罰でない。純粋に国の利益と国民の利益に違いある事を知らせるための講義だ。例えば国民は戦争を望まない。しかし、国は国益のために戦争をしなくてならない場合があるだろう。そんな時マリエールが今回と同じ事をしようとすればハリスお前がマリエールを止めよ。」
国王もハリス第1王子も真剣だ。
「判りました。この身に代えても。」
マリエールは兄弟殺しはしないと思った。
「ハリス兄様、しっかり理由聞かせてくれるなら、止めるよ。」
後は何時もの王家の夕餉になった。今日も出ているが海産物が美味いと言う話しになった。それからマリエールの学業はこれからは、通常通りに戻す事になった。
「マリエール、国益と国民の利益が一致しない場合ある事は、判った筈だ。通常は一致するが、時と場合によっては一致しない場合がある。王女は国民に寄り添う存在だ。しかし、そなたには力がある。お互いに相反する存在に成りたくないものだな。」
別にマリエールは革命家ではない。
「その時に理由を聞かせて下さい。私は革命家ではありません。」
ちゃんと止めてよ。
別にマリエールは謹慎させられたわけではないらしい。国益と国民の利益が一致しない場合がある事を教えるためだったらしい。