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好奇心の旅人  作者: 彼方
11/25

虹の七色魔石②


 他の七色魔石の味も気になる。探索再開だ。

 今回の七色魔石採掘は金稼ぎが目的じゃない。どれだけ綺麗でも僕は石にあまり興味が無い。気になるのは味くらいなもので、今回の採掘も味見するために来ている。まあ、同じ色の七色魔石は食べないから、見つけたら入口の男に渡して換金してもらおう。金はいくらあっても困らないし。


 おっ、青の七色魔石発見。

 ハンマーとタガネで丁寧に掘り出す。2度目ともなれば慣れてくるもので、1度目よりも僅かに早く掘り出せた。この調子なら次はさらに早く採掘作業出来そうだな。


 青、か。綺麗な色だ。

 濃い青色は滅多に見られない。僕が最近見たのはスライムだったかな。稀に見かけるんだよね、青くて弱いスライム。稀にしか見かけないのはおそらく弱すぎて生存競争に負けているからだろう。


 正直食べるのは勿体ないと思うが味は気になる。

 色の興味より味の興味だ。思い切って青の七色魔石を齧る。

 おお、これも赤と同じで爽やかな野菜の味。ほんのり塩気があるから赤よりも食べやすい。まあもう1度食べたいかと聞かれたら食べないがな。これより美味しい物なんて世界に多く存在しているし。


 青を食べ切ってから探索再開。そして4時間が経過した。

 4時間という長い時間で虹以外の七色魔石を見つけ、食すことが出来た。藍や紫は見つかりづらいらしいが僕は運が良かったな。それとも4時間もあれば誰でも見つけられるのだろうか。


 虹以外の七色魔石の味を纏めてみよう。

 赤。胡瓜の味。

 橙。見た目の色通り人参。

 黄。ジャガイモっぽいから美味い。

 緑。苦い雑草のような味。

 青。塩味のある胡瓜。

 藍。塩味が強すぎる胡瓜。

 紫。不味くて咀嚼も出来ない。


 あと食べていないのは虹だけだが……見つけるの無理だよなあ。

 最後に見つかったのが1000年以上前って話だし、虹の七色魔石は現在じゃ生まれないと考えられる。好奇心が強い僕でも無理だと分かれば諦める。今回は諦めた方がいいだろう。


「……帰り道、分からないな」


 入口近くは1本道だったが途中からは複雑な迷路。

 受付で会ったあの名前も知らない男の言葉を思い出す。

 素人じゃなければパーティーを組む、だったか。

 誰か1人くらい通った道を記録する奴が居ると助かるよな。

 まあ、ないものねだりしても無意味だ。

 迷子状態から脱却するためにとりあえず歩くか。


「何だ、これは」


 進んだ先は行き止まりだったが奇妙な物体を見つけた。

 壁に半分埋まった錠だ。見たところ、パスワードとなる4桁の数字を揃えることでロックが外れるタイプだな。しかし……なぜ鉱山に錠があって、しかも壁に埋まっている? 誰かが遊びで埋めたのか。それとも、この壁の向こうに道が存在するのか。どちらにせよ気になる。見てしまったからには真実が気になるぞ。


 数字を揃えるタイプの錠で良かった。もし専用の鍵が必要なタイプだったら鍵を探さなくちゃいけないからな。数字を揃えるタイプなら、時間は掛かるが数字の組み合わせを1パターンずつ試せばいい。


 0001、違う。

 0002、違う。

 0003、違う。

 0004、違う。


 ひたすら数字の組み合わせを試し続けて2時間以上経過。

 腹は空いたし喉は渇いたが気にせず続けて、ついに待ちに待った瞬間が訪れる。


 7210、正解。


 ガチャッという音がして錠が……落ちた。

 一瞬劣化で壊れたかと思ったが心配は杞憂に終わる。

 目の前の壁が上がっていき、壁があった場所には階段が現れる。


 壁の向こうには下へ続く階段が隠されていたのか。

 わざわざ奇妙な錠まで付けて隠していたんだ、お宝があるに違いない。ふっ、ただ鉱石を食べて終わりじゃ味気ない日だと思っていたんだ。階段の先に何があるか確かめさせてもらおうじゃないか。


 長い階段を下りてみると岩の扉が存在した。

 かなり重い扉だな。普通の人間が動かすのは苦労しそうだ。

 重みのある扉を力任せに開け放って部屋に足を踏み入れる。


「なっ、あれは! あれはまさか!」


 部屋の中心に岩があり、その奥には山積みになった虹色の石がある。

 虹色の七色魔石だ! あの色は間違いない!

 1000年以上誰も見つけていない石が僕の前にある!


「――侵入者を検知。デリートシステム、実行」


「な、何いい!? 岩が動いている!?」


 部屋の中心にある岩、ただの岩じゃないぞ。

 人間のような形になって喋る岩。どこかで見た気がする。そうだ絵本、子供の頃に読んだ絵本に登場したゴーレムという存在。目の前の動く岩はまさにゴーレムだ。


 そんなバカなっ、空想上の存在だろう!?

 誰かが作り出したとでもいうのか!


「侵入者、排除」


 ゴーレムが殴りかかって来たので余裕を持って躱す。


「さっきから侵入者と言っているな、僕のことか」


 徐々に状況が理解出来てきたぞ。

 この部屋は何者かが虹の七色魔石を保管していた金庫のようなもの。錠を付けても安心出来ず、何者かはゴーレムを用意した。虹の七色魔石を盗まれないための防御策だ。誰がどうやってゴーレムを作ったのかは分からないが、この場所に居る限り僕は襲われ続ける。


 撤退するか? 虹の七色魔石を諦めて?

 バカな考えだ。笑っちまうよ。


「僕の邪魔をするなら破壊させてもらおう!」


 ゴーレムだろうが僕の敵じゃない。1撃で頭部を破壊した。


「排除」


 おっと、頭部を破壊してもダメージなしか。

 確か絵本では胸部に核が、人間で例えると心臓部があると書いてあったっけ。昔の記憶だから引っ張り出すのに苦労するな。核を破壊しなければ止まらないのなら破壊するだけだ。


「排――」

「遅い」


 蹴りで胸部を砕いて風穴を空けてやった。

 絵本に書いてあったのが事実だったのか、ゴーレムは胸部が壊れると動かなくなった。こいつ、どうやって喋ったり動いたりしていたんだろう。外見も中身も岩にしか見えない。核に秘密があったのだろうか。うーん、破壊せずに取り出せばよかったな。


 終わったものは仕方ない。気持ちを切り替えよう。虹の七色魔石がそこにあるんだから。


「早速食べるか」


 虹の七色魔石を1個手に取って齧る。


「こ、これは……」


 何の味もしない。無だ。

 予想外だな、まさか無味とは……素晴らしい!


 今まで食べた物には全て味が存在した。

 甘味、酸味、塩味、苦味、旨味。五味と呼ばれる内の何かはあった。刺激である辛味もな。しかし虹の七色魔石からは何も感じない。色が混じっているから味も混じり合い、相殺されたとでもいうのか。まさに奇跡。僕は奇跡の食べ物に出会ってしまったようだ。……いや、厳密には食べ物じゃないが。


「この部屋を作ったのが誰かは知らないが、あなたが集めた物を1個だけ貰っていくよ。ゴーレムに襲われたから迷惑料としてね」


 山積みの虹の七色魔石から1個だけ袋に入れる。

 残りは放置だ。もしかすれば、この部屋の存在に気付いた誰かが来るかもしれない。来た時に宝が1個もなかったら悲しいだろう。宝があれば冒険っぽくて楽しいよな。


 僕は部屋を出て鉱山入口へと戻る。

 迷子状態だったから苦労したが、やったことはさっきの錠と同じだ。道を1本ずつ確かめればいずれは入口に辿り着く。


 外へ出ると既に空は暗く、換金を終えた者達が家へと帰って行く。僕も七色魔石を換金して宿屋へ帰るとしよう。10時間以上も鉱山に居たから疲れた。


 ん? あの男は……。


「換金してくれないかーな」

「はい、承りました」

「あれ君は! 遅い時間までご苦労だねえ」


 入口前で最初に会った奴隷持ちの金髪男か。

 彼の後ろに居る女5人は奴隷兼妻だったっけ。他人に紹介する時は妻だけでいいよな。奴隷だと言う必要はないと思うんだが。それにしても奴隷と妻って両立するものなんだろうか。


 6人パーティーともなると、1度に持ち運べる量が多いようだ。

 こりゃ僕が換金出来るのは数十分後かな。


 パーティー、か。

 旅を続けると荷物が増えていく。収納スペースが広い鞄を持ってはいるが、いずれ限界が来る。僕1人では持ち運べる量が少ないと思ってしまう。


 必要かもしれないな。荷物持ちの旅仲間が。


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